第1章
夢小説設定
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その日は、友人であるトーマ君に、バイト先の相談をしようと思っていたところだった。
トーマ君のバイト先は良い人たちばかりだから、一緒に働かないかと言われて、一度様子を見に来たのだ。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「え、ええ……」
出迎えてくれたのは、トーマ君。
戸惑う私に、トーマ君は少し笑った。
「こちらのお席へどうぞ、お嬢様」
「あ、りがとう……」
「てっきりこういうことされるの、慣れてると思ってたんだけど」
「さすがにここまで甲斐甲斐しくないわ」
「マコが焦ってるの、珍しいな。あと少しで休憩に入るから、また話そう」
「ええ」
それから紅茶を一杯注文して、トーマ君が戻ってくるのを待った。
ちょうど飲み終える頃には、お客さんの数も減っていた。
休憩に入ったトーマ君は、従業員とわからないように、軽く着替えてから戻ってきた。
「ごめん、待たせた」
「ううん、大丈夫よ。むしろ時間をとってくれてありがとう」
「いや。──それで、どう?」
改めて、お店全体を見渡す。
すると、ちょうど入れ替わりの時間帯なのか、新しく別の店員が──
「……え?」
「?どこかでお会いしたことがありましたか?」
見間違えるはずがない。
イッキ先輩だ。
「い、いえ、知り合いに似ていたもので……」
必死に誤魔化す私を、少し怪訝そうに横目で見つつ、そばに座るトーマ君を見つける。
「トーマの知り合い?」
「ああ、イッキさん。そうです。店長に『誰かここで働いてくれそうな友人はいないか』って言われてたところ、ちょうどバイトを探しているみたいだったので、ここを紹介したんですよ。まずは店の雰囲気を見てもらおうと思って」
「そうなんだ。それで、どう?来てもらえそう?」
「……」
「マコ?」
「えっ、あ、何かしら?」
動揺していた私を、トーマ君が心配そうに見つめている。
いけない。冷静に、冷静に……。
「大丈夫か?」
驚いてパッと顔を上げた私を見て、イッキ先輩も少し心配そうにしている。
「君、大丈夫?顔色悪いけど……」
「え、ええ。はい、大丈夫です」
「あ」
イッキ先輩は何かを察したように、私から顔を逸らした。
「ごめんね、僕ちょっと特殊で」
「えっ、いえ!イッキ先輩は何も──あっ」
「ん?」
不審に思ったイッキ先輩に顔を覗き込まれ、今度は私が顔を逸らす。
「君、やっぱりどこかで……」
「い、いえ!どうかお気になさらず。ええと、その、お店の話でしたよね。ええ。ここ、とても素敵なお店ですわね!」
「え?」
「雰囲気も落ち着いていて、トーマ君からメイド&執事喫茶と聞いたときは、どのようなお店なのか想像もつきませんでしたが、その、」
必死に話題を元に戻そうとすると、イッキ先輩は少し笑って、自慢げに言った。
「そうでしょう。よかったらうちで働いてね。それじゃあ、僕は仕事に戻るから。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ、お嬢様」
「は、はい……」
結局イッキ先輩とは目を合わせられず、トーマ君もずっと怪訝な顔をしていた。
「マコ、イッキさんと知り合いだったのか?」
「いいえ、そういった関係ではないわ。……私、ここでバイトしたいけれど、接客はやっぱり難しいかもしれない」
「ああ、それならキッチン担当の人もいるし、大丈夫。ちょうど人手も足りてないし」
「そうなの?それなら、大丈夫な気がするわ」
「よかった。じゃあ、また後日店長から面接があると思うから。連絡するよ」
「ええ、ありがとう」
そうして私は、長年恋をしているイッキ先輩と同じバイト先で働くことになった。