第4章
夢小説設定
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互いに飲み物を頼んで、少しの沈黙。
「それで、話って?」
切り出したのは、私だった。
トーマ君は少し話しづらそうにして、携帯の画面を私に見せてくる。
「これ、マコの写真だよな?」
「ええ、そうね。これは確か、お父様と一緒に雑誌の取材を受けた時のものだと思うわ。でも、どうして?」
「ここに載ってるんだ」
トーマ君が見せてくれたのは出会い系サイトのプロフィール画面。
そこには私の写真と共に、名前や連絡先、通っている学校の名前など、個人情報が載っていた。
当然私はこのサイトに登録なんてしていないし、アクセスしたこともない。
「これは……」
「同じサークルの奴が最近出会い系サイト見るのにハマってるらしくてさ。可愛い子がいたってこれ見せられたんだよ」
「この作成日、ちょうど私がイッキ先輩と映画を見に行った日だわ」
「……やっぱりこれ、FCの仕業?」
「……その線が濃厚でしょうね。お父様に個人的な恨みがある人かもしれないけれど、それならお父様がこんなに長く放っておくはずがないもの」
トーマ君から携帯を借りて、私もそのサイトにアクセスしてみる。
私の偽アカウントに対してメッセージを送ってきている人が何人かいて、まだ返事はしていないようだった。
だが、時間の問題だろう。
「教えてくれてありがとう。早急に対処するわ。何か他に気になることはあるかしら?」
「いや、今のところ、俺が気づけたのはこれだけだよ」
「そう。助かったわ」
「……マコ、大丈夫か?」
「え?ええ、もちろんよ。心配してくれてありがとう。何かあったら、またこうして教えてね、トーマ君」
「わかった。……家まで送るよ」
「大丈夫よ、ここから家までそれほど遠くないし」
「今の話の後に、1人で帰せるわけないだろ」
「……トーマ君が心配してくれている気持ちはわかるわ。とてもありがたいことよ。でも、万が一偶然イッキ先輩と会ってしまった時に、平静を装える自信がないの」
「……」
「本当に私は大丈夫だから。迎えも来るし、一人きりで帰ったりしないわ」
「わかった。……じゃあ、またな」
「ええ。今日は本当にありがとう」
それから私はトーマ君と別れて、カフェの前に車を回してもらい、無事に家に帰り着いた。
「お父様、いらっしゃいますか?」
「ああ、入れ」
帰ってすぐにお父様に今回の件を報告にした。
お父様は少し顔を顰めていたけれど「すぐに対処しよう。そこまで気が回らず、すまなかった」と申し訳なさそうにしていた。
ここのところ自分は大人しくしていて、何か恨みを買うようなこともしていなかったから、警戒レベルが下がっていたそうだ。
「いいえ、とんでもありません。『出会い系サイト』は思い付きませんでしたから、私も警戒が甘かったです」
「……お前には、警戒した方がいいサイトを教えておいた方が良さそうだな。じいや、リストを」
「かしこまりました」
お父様に言われて、じいやは一度退室し、何か書類を持って戻ってきた。
「ありがとう。……マコ、これがそのリストだ。これに載っているサイトは比較的そういう類の嫌がらせに利用されやすい。ここにないマイナーな掲示板もあるが、マイナーなところは影響力があまりないから無視していい」
「ありがとう、ございます……」
目を通すと、さっそく先程のサイトが載っていた。
「サイトの管理者には私から連絡しておこう。マコ、おそらく嫌がらせのメールが来たり、知らない男に声をかけられることがあると思うが、十分に気をつけてくれ」
「はい、お父様」
失礼致します、と退室し、私は自室に戻った。
その日の晩は、リストに目を通し、一つ一つ携帯に入力して過ごした。
ブックマークをつけておけば、いつでも確認できる。
『出会い系サイト』等とは無縁に生きてきたせいで、対処が遅れた。
せめて、イッキ先輩に悟られないように気をつけなければと肝に銘じた。