第4章
夢小説設定
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イッキ先輩と付き合い始めて3週間。
バイト先で、裏口から帰っても、表から帰っても、FCの子たちが刺すような視線を送ってくるようになった。
さすがにもう私たちが付き合っていることに気づいたようだ。
「っ!」
人手が足りなくて、仕方なく一時的にホールに出た日。
足を引っ掛けられる。
初めはこんなものね。
この程度で倒れるような鍛え方はしていないし。
「……チッ」
「大変失礼致しました、お嬢様。お怪我はございませんか?」
「え?はい……」
「少々お待ちくださいませ」
わざと引っ掛けられたとも思わない鈍い女だと思わせた方が、今後大事にはならない、かな……?
「こちら、お詫びのミルクティーでございます。よろしければ、お召し上がりくださいませ。失礼致します」
丁寧にお辞儀をしてその場を去る。
わざとお詫びの品を出したとも知らずに、「バカじゃないのあの子」と言ってクスクスと笑っている。
馬鹿なのは、どちらなのかしらね。
「申し訳ありません店長、勝手なことをしてしまって。私のお給料から引いてください」
「いいえ、大丈夫ですよ。……それにマコさんは、わざと引っ掛けられたとわかっていて、あえてあのようなことをしたのでしょう?」
「!店長、お気づきでしたか」
「イッキ君と付き合い始めたと聞いて、少し心配していただけですよ。今日はホールに出してしまって、私こそすみませんでした。……あなたは、全てを承知の上でイッキ君と一緒にいることを選んだのですね」
イッキ先輩のバイト先であるだけあって、やはりこれまでの事情をわかっている様子だった。
「……そうですね。全てわかっているからこそ、どうにかしなくてはと、思っています」
「あまり、無理はしないでくださいね。できることがあれば、私も、ケント君も、力になりますよ。ねえ、ケント君?」
傍で作業をしていたケントさんに突然話を振る。
「?……ああ、君にはイベントの際に世話になったからな。イッキュウは私の宿敵でもある」
「宿敵……ですか?」
「ああ。何か協力してほしいことがあれば、いつでも言いたまえ」
「はい。ありがとうございます」
やっぱりここの人達はいい人ばかりだ。
「何の話?」
「あ、イッキ先輩。大した話ではありませんよ」
「僕は混ぜてくれないの?」
「イッキュウ、君はホールでの仕事があるだろう」
「マコちゃんもでしょ」
「すみません、私は先ほどの配膳が最後なのです。後はキッチンですから……」
あはは、と言うと、イッキ先輩は少し拗ねた顔をしてホールに戻っていった。
「すみません、お二人とも。イッキ先輩には、私とFCとのことは言わないでいただけますか?」
「いいのか?本人からFCに言わせた方が、向こうも諦めがつくだろう」
「いいえ、FCの方々はそんなに甘くありません。イッキ先輩をそんな悪役にさせるのも嫌ですし、何よりイッキ先輩ご本人が、FCの方々には強く出られないと思います」
「……そうですね」
店長は、何かそのような場面を実際に見たことがあるのか、実感を以て頷いていた。
ケントさんは、そうだろうと思いつつも、理解できない様子だった。
「私が被害を被る分には構いません。ですが、イッキ先輩が嫌な思いをするのは、嫌なんです」
「マコさんは、本当にイッキ君のことが好きなのですね」
「ふふ、はい。あまりこのようなことを言うのは、恥ずかしいのですけれど」
最後は、何だか惚気話になってしまった。
でも、何かがあった時、味方になってくれる人がいる。
それは確かに、私にとって大きな支えとなった。