第3章
夢小説設定
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「イッキ先輩!」
デート当日。
私が映画館に、待ち合わせの15分前に着くと、イッキ先輩はもうチケットを買って待っていた。
「お待たせしました。先輩、早いですね……?もしかして私、待ち合わせ時間を間違えていましたか?」
「ううん、時間より早いよ。これ、チケット」
「あっ、ありがとうございます。1,500円ですよね。こちらです」
前日にチケット代金を調べ、1,500円は封筒に入れておいた。
それを差し出すと、イッキ先輩は笑って押し返してくる。
「あはは、用意周到だね。でもいいよ。僕が見たい作品に付き合ってもらうんだし、デートなんだからこれくらいさせて」
「ですが……」
「うーん、じゃあ、映画終わったらご飯食べに行こう。そこで何か奢って。それでどう?」
イッキ先輩は、私が対等な立場でありたいことを理解してきているようで、そんな提案をされてここで食い下がれば、空気が悪くなりそうだ。
「わかりました。絶対奢らせてくださいね!チケット、ありがとうございます」
そうして私達は映画を見て、約束通りご飯は私が奢った。
金額は対等にはならなかったけれど、奢られっぱなしにはならないので、妥協した。
「そろそろ帰りましょうか」
「うん、そうだね。日も落ちてきたし」
歩き出して数分。
不意に、前を歩いていたイッキ先輩が振り返る。
「ねえ、手、繋いでもいい?」
「!」
少し頬が熱くなるのを感じる。
びっくりして、思ったように声が出なくて、もちろんです、と返した声は、今にも消えそうな声量だった。
好きな人と手を繋ぐ、なんて初めてで緊張する。
手汗とか、握り具合とか、いろんなことが気になって、緊張がどんどん膨れ上がる。
「……」
「緊張してる?」
「えっ?」
驚いて、思わず上ずった声が出る。
「ふふ、顔に書いてあるよ。意外だな、マコちゃんってもっとクールな子なイメージだったから」
「そう、ですね。どのような事態でも、できる限り冷静でいられるように努めていますから」
イッキ先輩の声が、いつもより鮮明に聞こえる気がする。
手を繋いだところから、イッキ先輩の気配を、いつもより強く感じて、落ち着かない。
「今は?」
「……冷静になんてなれるはずがありません。好きな人と、手を繋いでいるのですから」
「好きな、人?」
ハッとしてイッキ先輩を見ると、目をキラキラさせながらこちらを見ていた。
「付き合ってから二週間くらい経つけど、初めて君の口から好きって言われた気がする」
「えっ、そうでしたか……?」
「そうだよ。いつも「嫌いじゃない」とか、そういう感じだったから。……ふふ、よかった。少しは打ち解けられたかな?」
「初めから打ち解けていますよ」
「ううん、初めの頃の君は、僕に対して少し壁があったでしょう」
私の「冷静にならなければ」という態度が、イッキ先輩に壁を感じさせてしまっていたのだろうか。
そうだとすれば、私は未熟者だなと思った。