継ぐ者
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あれから何度か出陣を重ね、大体どれくらいの敵に、どれくらいの練度を当てたらよいかわかってきた。
刀装を剥がされることはあるが、軽傷にすら至らない程度の削られ方で帰還させられるようになった。
私が知らないうちに、彼らの間で「少しでも怪我を負って帰ればさなが自分を責めてしまうから、絶対に無傷で帰ってくる」という指示が出されていたらしい。
あの人が言っていたことが今ならわかる。
本当に、彼らに支えられてこの本丸は回っているのだと。
「審神者様」
ある日の朝、こんのすけが久しぶりに姿を見せた。
「出陣に随分と慣れられたご様子。そろそろ演練に出られませんか?」
「演練?」
曰く、同じくらいのレベル感の本丸同士で行う、試合のようなものらしい。
怪我は負うものの、それは直ちに手入れされ折れることもないと。
「他の本丸の様子を見るのも良さそうだね」
演練は他の審神者と会うことにもなる。
身だしなみも多少気を使った方がいいのかな……。
「あの、話は変わるんだけど」
「はい」
「審神者って、どこで服買うの……?」
こんのすけに聞いたところによると、刀剣男士の服は万屋で調達ができ、審神者は現代へ服を買いに戻ることが多いらしい。
もちろん、刀剣男士を護衛につけて。
「なるほど……。ちょっと考える。ありがとう、こんのすけ」
はい!と元気に返事をして、こんのすけはまた姿を消した。
現代へ戻ることが許されるのなら、服を買いに行きたい。
その間は出陣は一旦ストップさせて、休息日にしよう。
一泊二日の予定にしよう。旅行みたいなものだし……。
「……っと、さな、歩くときは前を見ないと危ないよ」
「あ、ごめん長義」
長義に肩を掴まれ、ハッとする。
色々と考えながら本丸内を歩いていたら、長義とぶつかりそうになってしまった。
「何か考え事かな?」
「あ、うん。現代に買い物に行こうと思っていて」
「現代に?」
それから私は考えていたことを長義に話した。
長義は元政府所属の刀だし、色々と知っていることも多いかと思ったから。
「なるほどね。ちなみに現代ではどこに泊まるつもりなんだい?」
「政府が管理してる宿泊施設があるみたいだから、そこにしようかと思って」
「ああ……」
長義の顔が少し曇る。
「あそこはまあ確かに安全ではあるけれど、施設としてはかなり古いし、人によっては寝づらいこともある。経費削減のためと言って、気が悪い施設を買い上げてお祓いしていたりもするし、あまりおすすめはしないかな」
「え、そうなんだ……」
写真で見た感じだとそうでもなかったけど、長義が言うならそうなんだろう。
「じゃあ別でどこか予約する。ありがとう、教えてくれて」
「君が少しでも快適に過ごせることを祈っているよ。……ちなみに、護衛に連れていく刀は決めたのかな?」
「ううん、まだ。ちょっと考えるよ」
「……そうか」
長義は少し安心したような、残念なような顔をしていた。
私は審神者部屋に戻ってからまず宿泊予約を取り、政府に現代へ行くための申請も出した。
「後は護衛の選抜か……」
どうしようかな。
服のセンスと、常識と、現代に溶け込める雰囲気が大事……。
「燭台切か、長義か、清光か……篭手切もいいかもな」
ただ、そんなにゾロゾロと連れていくわけにもいかない。
私は一旦4振りを呼び出した。
「お呼びかな?」
「なんだか、珍しい顔触れですね」
長義はさっき話したから、なんとなく趣旨を理解しているようだった。
「まず聞きたいんだけど、みんな他の審神者は見たことある?」
「うーん、僕はあまり回数はないけど、見たことはあるよ」
「私もあまり……」
燭台切と篭手切はあまり演練に行ったことがないらしい。
「俺は演練にも出てたから、見たことあるよ」
「俺は政府にいた時に見ているからな」
それなら、この2振りが適任だろう。
「わかった、ありがとう。ごめんね、集まってもらったのに申し訳ないんだけど、燭台切と篭手切はもう大丈夫」
「わかった。僕に何か手伝えることがあったら、いつでも言ってね」
「私も何かお役に立てることがあれば、いつでもお声掛けください!」
2振りが部屋を出て行ってから、私は改めて長義と清光に向き直る。
「2振りにお願いがあって……」
「なあに?」
「今度演練をするんだけど、そういう、外に出る時用の服を現代に調達しに行こうと思ってるの」
事前に相談していた長義は静かに聞いている。
「なるほどね。それで俺たちってわけか」
「君に選んでもらえるなんて光栄だな」
「みんなはその間に休暇をとってもらうから、ちょっと申し訳ないんだけど……」
「何言ってんの、むしろ俺たち役得じゃない?ね、長義」
「そうだな」
長義はふっと笑う。
清光も心なしか浮き足立っているような気がした。
「ありがとう。2振りは、また帰ってきてから別で休暇出すから」
それから全体に休暇の連絡を出した。
長谷部や和泉守は「なぜ連れていくのが自分ではないのか」と抗議にもきたが、長義と清光を連れていくと話すと、悔しそうに帰っていった。
「忘れ物はないかい?」
当日。
3人分の荷物が詰まったキャリーケースを長義がゴロゴロと引いて行ってくれる。
「大丈夫だと思う!」
何振りかの刀たちが見送りに来てくれた。
「ぼくもさなさまとおでかけしたかったです……」
「気をつけて行っておいで」
皆に見送られながら、私たちはゲートをくぐった。
刀装を剥がされることはあるが、軽傷にすら至らない程度の削られ方で帰還させられるようになった。
私が知らないうちに、彼らの間で「少しでも怪我を負って帰ればさなが自分を責めてしまうから、絶対に無傷で帰ってくる」という指示が出されていたらしい。
あの人が言っていたことが今ならわかる。
本当に、彼らに支えられてこの本丸は回っているのだと。
「審神者様」
ある日の朝、こんのすけが久しぶりに姿を見せた。
「出陣に随分と慣れられたご様子。そろそろ演練に出られませんか?」
「演練?」
曰く、同じくらいのレベル感の本丸同士で行う、試合のようなものらしい。
怪我は負うものの、それは直ちに手入れされ折れることもないと。
「他の本丸の様子を見るのも良さそうだね」
演練は他の審神者と会うことにもなる。
身だしなみも多少気を使った方がいいのかな……。
「あの、話は変わるんだけど」
「はい」
「審神者って、どこで服買うの……?」
こんのすけに聞いたところによると、刀剣男士の服は万屋で調達ができ、審神者は現代へ服を買いに戻ることが多いらしい。
もちろん、刀剣男士を護衛につけて。
「なるほど……。ちょっと考える。ありがとう、こんのすけ」
はい!と元気に返事をして、こんのすけはまた姿を消した。
現代へ戻ることが許されるのなら、服を買いに行きたい。
その間は出陣は一旦ストップさせて、休息日にしよう。
一泊二日の予定にしよう。旅行みたいなものだし……。
「……っと、さな、歩くときは前を見ないと危ないよ」
「あ、ごめん長義」
長義に肩を掴まれ、ハッとする。
色々と考えながら本丸内を歩いていたら、長義とぶつかりそうになってしまった。
「何か考え事かな?」
「あ、うん。現代に買い物に行こうと思っていて」
「現代に?」
それから私は考えていたことを長義に話した。
長義は元政府所属の刀だし、色々と知っていることも多いかと思ったから。
「なるほどね。ちなみに現代ではどこに泊まるつもりなんだい?」
「政府が管理してる宿泊施設があるみたいだから、そこにしようかと思って」
「ああ……」
長義の顔が少し曇る。
「あそこはまあ確かに安全ではあるけれど、施設としてはかなり古いし、人によっては寝づらいこともある。経費削減のためと言って、気が悪い施設を買い上げてお祓いしていたりもするし、あまりおすすめはしないかな」
「え、そうなんだ……」
写真で見た感じだとそうでもなかったけど、長義が言うならそうなんだろう。
「じゃあ別でどこか予約する。ありがとう、教えてくれて」
「君が少しでも快適に過ごせることを祈っているよ。……ちなみに、護衛に連れていく刀は決めたのかな?」
「ううん、まだ。ちょっと考えるよ」
「……そうか」
長義は少し安心したような、残念なような顔をしていた。
私は審神者部屋に戻ってからまず宿泊予約を取り、政府に現代へ行くための申請も出した。
「後は護衛の選抜か……」
どうしようかな。
服のセンスと、常識と、現代に溶け込める雰囲気が大事……。
「燭台切か、長義か、清光か……篭手切もいいかもな」
ただ、そんなにゾロゾロと連れていくわけにもいかない。
私は一旦4振りを呼び出した。
「お呼びかな?」
「なんだか、珍しい顔触れですね」
長義はさっき話したから、なんとなく趣旨を理解しているようだった。
「まず聞きたいんだけど、みんな他の審神者は見たことある?」
「うーん、僕はあまり回数はないけど、見たことはあるよ」
「私もあまり……」
燭台切と篭手切はあまり演練に行ったことがないらしい。
「俺は演練にも出てたから、見たことあるよ」
「俺は政府にいた時に見ているからな」
それなら、この2振りが適任だろう。
「わかった、ありがとう。ごめんね、集まってもらったのに申し訳ないんだけど、燭台切と篭手切はもう大丈夫」
「わかった。僕に何か手伝えることがあったら、いつでも言ってね」
「私も何かお役に立てることがあれば、いつでもお声掛けください!」
2振りが部屋を出て行ってから、私は改めて長義と清光に向き直る。
「2振りにお願いがあって……」
「なあに?」
「今度演練をするんだけど、そういう、外に出る時用の服を現代に調達しに行こうと思ってるの」
事前に相談していた長義は静かに聞いている。
「なるほどね。それで俺たちってわけか」
「君に選んでもらえるなんて光栄だな」
「みんなはその間に休暇をとってもらうから、ちょっと申し訳ないんだけど……」
「何言ってんの、むしろ俺たち役得じゃない?ね、長義」
「そうだな」
長義はふっと笑う。
清光も心なしか浮き足立っているような気がした。
「ありがとう。2振りは、また帰ってきてから別で休暇出すから」
それから全体に休暇の連絡を出した。
長谷部や和泉守は「なぜ連れていくのが自分ではないのか」と抗議にもきたが、長義と清光を連れていくと話すと、悔しそうに帰っていった。
「忘れ物はないかい?」
当日。
3人分の荷物が詰まったキャリーケースを長義がゴロゴロと引いて行ってくれる。
「大丈夫だと思う!」
何振りかの刀たちが見送りに来てくれた。
「ぼくもさなさまとおでかけしたかったです……」
「気をつけて行っておいで」
皆に見送られながら、私たちはゲートをくぐった。
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