継ぐ者
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昨晩、奴が倒された後、ずっと気を張っていたからか、私はほぼ気絶するように眠りに落ちた。
布団まで自分でたどり着けたのだったか、もはやそれすらも定かではない。
「んん……」
外の明るさに目が覚める。
今いったい何時なのか、全く感覚がない。
だが、昨晩までずっとあった緊張はすっかり解れ、体の疲れもスッキリしたような気がする。
「あ、さな起きた?」
「加州……」
「へへ、みんなで相談して、あんたのこと名前で呼ぶことにした」
「そっか。反応しやすくていいね」
主、と呼ばれるのは正直ぎこちなかったから、むしろよかった。
「さなさま、ちょうしはどうですか?」
「ありがとう、今剣。おかげで気分もスッキリしてるよ」
二振りはずっと私の横についていてくれたらしい。
今剣の頭を撫でながら礼を言う。
「長谷部がご飯できたって呼んでたから、準備できたら広間においでよ。俺たち先に行ってるから」
「わかった」
二振りを見送って洗面所へ向かう。
どこにも時計がなく、結局今何時なのかわからなかった。
「ああ、さな。おはよう。昨日より顔色が良いみたいで安心したよ」
「蜂須賀」
おはよう、と挨拶を返す。
昨日全振りと話せたわけじゃなかったが、皆気にかけてくれていたらしい。
「初日から心配かけてごめんね」
「構わないよ。……大丈夫でなくても大丈夫と言ってしまうのは、主と変わらないね」
蜂須賀は私を見て目を細める。
数ヶ月前に、本丸襲撃によって死んでしまったあの人。
彼らが守れなくて、悔しくて、どれだけの悲しみを背負っているかはわからない。
だが、こうしてあの人の話をできるようになるまでに、どれだけ苦しみ、どれだけ泣いたんだろうと、ふと思った。
蜂須賀は髪を整え終えると、どうぞ、と私に洗面台を譲って出て行った。
「……ふぅ」
顔を洗って鏡を見ると、背後に五月雨江が立っていた。
「うゎ、」
「あ、すみません、つい気配を消して近づいてしまいました。さなさん、広間までお供いたします」
「え、あ、ありがとう」
なぜかはわからないけど、五月雨江は護衛のように私を先導する。
「あれ、雨さんじゃん」
「雲さん。おはようございます」
「おはよう。どこ行くの?」
「広間です。さなさんが起きられましたので」
村雲江は五月雨江の後ろにいる私を、五月雨江越しにひょこっと顔を覗かせて見る。
「おはよう、さな」
「おはよう」
「今からご飯ってこと?」
てっきり皆そうなのかと思っていたが、村雲江の口ぶり的に違うようだ。
「昨日大変だったみたいだね、清光たちから聞いたよ」
「ああ、うん。でも加州たちが守ってくれたから、大丈夫だったよ」
「……怖かったなら怖かったって、言えばいいのに」
「え?」
「なんでもない。ねえ、俺も一緒に行っていい?」
断る理由もなく頷く。
「そういえば、今って何時かわかる?時計見つけられなくて」
「ああ、本丸の時計は広間と厨房にしかありませんからね。今は確か……14時くらいだったと思います」
「……え!?」
まだ午前かと思っていた。
どうやらかなり深く長く眠ってしまっていたらしい。
「お疲れだったのでしょう。よく眠れたようでよかったです」
これまで生きてきた中で、こんなにもよく眠れたのは初めてだ。
夢も見ず、正午を回っても眠っていられたなんて信じられない。
いつもは必ず、何かの気配や視線を感じて起きてしまうのに。
「……ありがとう」
広間に着くと、そこにはさっき別れた加州と今剣、そしてへし切長谷部がいた。
「おはようございます、さな様。よくお休みになられたようで何よりです」
「長谷部、おはよう」
「あぁ、俺の名を覚えてくださっているのですね!」
「あ、うん。ここにいる男士の名前はみんな覚えてきたから」
長谷部は、ありがたき幸せ!と胸に手を当ててお辞儀する。
「朝食をお持ちしますね」
他の男士たちは、食事も終わっているだろうに、ずっと私の傍にいる。
「あの……別にずっとここにいなくていいよ?やることあるだろうし」
「なにいってるんですか、さなさま!ごはんはみんなでたべたほうがおいしいんですよ」
「まあ……確かにそういうこともあるだろうけど、1人で食べるの慣れてるし、皆の時間を使わせるほどじゃないよ」
雨と雲が顔を見合わせてキョトンとする。
加州が私の肩にトン、と手を置いた。
「まあまあさな、俺たちはあんたと一緒にいたいんだよ。気にしなくていいから、ゆっくり食べて」
「お待たせいたしました、さな様!」
長谷部がお盆に乗せて持ってきたのは、The和食なメニューだった。
焼き魚にご飯、味噌汁、納豆、お漬物。
別皿に海苔も置いてある。
「和食、久しぶりかも」
「めしあがれ〜」
「貴様が作ったわけではないだろう、加州清光!どうぞ、ごゆっくりお召し上がりくださいさな様」
「ありがとう。いただきます」
ここは随分と賑やかだ。
誰かが歩く音、笑い声、戯れている楽しそうな声。
思わず、戦時中だということを忘れそうになる。
この穏やかな本丸での日々と、戦場での日々とのギャップに、あの人はどうやって耐えていたんだろう。
ふと、そんなことを思った。
布団まで自分でたどり着けたのだったか、もはやそれすらも定かではない。
「んん……」
外の明るさに目が覚める。
今いったい何時なのか、全く感覚がない。
だが、昨晩までずっとあった緊張はすっかり解れ、体の疲れもスッキリしたような気がする。
「あ、さな起きた?」
「加州……」
「へへ、みんなで相談して、あんたのこと名前で呼ぶことにした」
「そっか。反応しやすくていいね」
主、と呼ばれるのは正直ぎこちなかったから、むしろよかった。
「さなさま、ちょうしはどうですか?」
「ありがとう、今剣。おかげで気分もスッキリしてるよ」
二振りはずっと私の横についていてくれたらしい。
今剣の頭を撫でながら礼を言う。
「長谷部がご飯できたって呼んでたから、準備できたら広間においでよ。俺たち先に行ってるから」
「わかった」
二振りを見送って洗面所へ向かう。
どこにも時計がなく、結局今何時なのかわからなかった。
「ああ、さな。おはよう。昨日より顔色が良いみたいで安心したよ」
「蜂須賀」
おはよう、と挨拶を返す。
昨日全振りと話せたわけじゃなかったが、皆気にかけてくれていたらしい。
「初日から心配かけてごめんね」
「構わないよ。……大丈夫でなくても大丈夫と言ってしまうのは、主と変わらないね」
蜂須賀は私を見て目を細める。
数ヶ月前に、本丸襲撃によって死んでしまったあの人。
彼らが守れなくて、悔しくて、どれだけの悲しみを背負っているかはわからない。
だが、こうしてあの人の話をできるようになるまでに、どれだけ苦しみ、どれだけ泣いたんだろうと、ふと思った。
蜂須賀は髪を整え終えると、どうぞ、と私に洗面台を譲って出て行った。
「……ふぅ」
顔を洗って鏡を見ると、背後に五月雨江が立っていた。
「うゎ、」
「あ、すみません、つい気配を消して近づいてしまいました。さなさん、広間までお供いたします」
「え、あ、ありがとう」
なぜかはわからないけど、五月雨江は護衛のように私を先導する。
「あれ、雨さんじゃん」
「雲さん。おはようございます」
「おはよう。どこ行くの?」
「広間です。さなさんが起きられましたので」
村雲江は五月雨江の後ろにいる私を、五月雨江越しにひょこっと顔を覗かせて見る。
「おはよう、さな」
「おはよう」
「今からご飯ってこと?」
てっきり皆そうなのかと思っていたが、村雲江の口ぶり的に違うようだ。
「昨日大変だったみたいだね、清光たちから聞いたよ」
「ああ、うん。でも加州たちが守ってくれたから、大丈夫だったよ」
「……怖かったなら怖かったって、言えばいいのに」
「え?」
「なんでもない。ねえ、俺も一緒に行っていい?」
断る理由もなく頷く。
「そういえば、今って何時かわかる?時計見つけられなくて」
「ああ、本丸の時計は広間と厨房にしかありませんからね。今は確か……14時くらいだったと思います」
「……え!?」
まだ午前かと思っていた。
どうやらかなり深く長く眠ってしまっていたらしい。
「お疲れだったのでしょう。よく眠れたようでよかったです」
これまで生きてきた中で、こんなにもよく眠れたのは初めてだ。
夢も見ず、正午を回っても眠っていられたなんて信じられない。
いつもは必ず、何かの気配や視線を感じて起きてしまうのに。
「……ありがとう」
広間に着くと、そこにはさっき別れた加州と今剣、そしてへし切長谷部がいた。
「おはようございます、さな様。よくお休みになられたようで何よりです」
「長谷部、おはよう」
「あぁ、俺の名を覚えてくださっているのですね!」
「あ、うん。ここにいる男士の名前はみんな覚えてきたから」
長谷部は、ありがたき幸せ!と胸に手を当ててお辞儀する。
「朝食をお持ちしますね」
他の男士たちは、食事も終わっているだろうに、ずっと私の傍にいる。
「あの……別にずっとここにいなくていいよ?やることあるだろうし」
「なにいってるんですか、さなさま!ごはんはみんなでたべたほうがおいしいんですよ」
「まあ……確かにそういうこともあるだろうけど、1人で食べるの慣れてるし、皆の時間を使わせるほどじゃないよ」
雨と雲が顔を見合わせてキョトンとする。
加州が私の肩にトン、と手を置いた。
「まあまあさな、俺たちはあんたと一緒にいたいんだよ。気にしなくていいから、ゆっくり食べて」
「お待たせいたしました、さな様!」
長谷部がお盆に乗せて持ってきたのは、The和食なメニューだった。
焼き魚にご飯、味噌汁、納豆、お漬物。
別皿に海苔も置いてある。
「和食、久しぶりかも」
「めしあがれ〜」
「貴様が作ったわけではないだろう、加州清光!どうぞ、ごゆっくりお召し上がりくださいさな様」
「ありがとう。いただきます」
ここは随分と賑やかだ。
誰かが歩く音、笑い声、戯れている楽しそうな声。
思わず、戦時中だということを忘れそうになる。
この穏やかな本丸での日々と、戦場での日々とのギャップに、あの人はどうやって耐えていたんだろう。
ふと、そんなことを思った。