夜道の先
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
気がつくと、私は暗い夜に、道の真ん中に佇んでいた。
いつからここにいるのか、なぜここにいるのか。
どこから来たのかすら、私の頭には残っていなかった。
「……」
ただ、事実としてわかるのは。
「白い……」
自身の髪が、本来と違う色に染まっていること。
「……っ」
そして、妙な喉の渇き。
早く潤さなければ、と本能が言っている。
私は水を求めて歩き出し、川の水を口に含んだ。
「……これじゃないわ」
どれだけ水を飲んでも、渇きは消えない。
私は途方に暮れながら辺りを徘徊した。
「痛っ」
少し遠くで、誰かの声が聞こえた。
その途端、遠いはずのどこかから、吐き気がするほど血の匂いが漂ってくる。
思わず鼻を押さえるが、匂いは消えない。
ゴクリ、と私の喉が無意識に音を立てる。
「?」
驚いて口を押さえるが、口内にはどんどん唾液が分泌されてくる。
まるで、血を欲しているかのように。
「……」
私は不審に思いながらも、血の匂いがする方へと足を向けた。
ジャリ、という私の足音に、そこにいた女性が振り返る。
「どちら様ですか……?」
「……怪我をされたような、お声が聞こえたので」
なんとか声を絞り出す。
「まあ、心配して見に来てくださったのですか?お優しいお婆さま。大したことありません、少し、木で指を切ってしまっただけです」
暗い夜には、白髪である私は老人に見えるようだ。
「……血が、出ています」
「これくらいすぐ止まりますわ」
「少し、お手を拝借しても?」
「?……はい」
女性は私に警戒心も抱かず、手を差し出す。
その手を取り、指から出ている血を私はおもむろに舐めとった。
「ひゃっ、な、何を!?」
驚いた彼女は私の手を振り払う。
血を舐めたとき、私は確かな満足感を覚えた。
「傷は舐めると早く治ると言います。大した怪我でなくてよかった」
私はその満足感と共に、その場を去った。