終わりから始まった恋
私の彼氏のイッキは、とんでもないモテ男だ。
初めて友達と入ったメイド執事喫茶で出会って、一目惚れして、足繁く冥土の羊に通った。
そうして「いつものセットですよね」なんて言われるくらいに認知されたある日、私は勢いで告白した。
「えっ」
「だから、私あなたのことが好きなの!」
「あ〜……」
私が告白した時、イッキはすごく気まずそうな顔をした。
あ、これはダメかも。
そう思ったけど、もう取り返しはつかなかった。
「もし今恋人がいないなら、私と付き合うこと、考えてみてほしい」
私の真剣な眼差しに根負けして、イッキは少し時間が欲しいと言ってくれた。
私は頷いて、それからいつ返事をされてもいいように毎日冥土の羊に通った。
「君、メンタル強いね……」
告白した次の日に来店した私に、イッキは少し呆れ顔でそう言った。
「まだ振られてないし、あなたは私の連絡先を知らないでしょ?だから気持ちが定まった時いつでも返事が聞けるように、ここに来なくちゃ」
告白から3日ほど経った日、イッキはバイト終わりにOKの返事をしてくれた。
あの時、イッキが私のテーブルに来て「もうすぐ上がりだから、裏口で待ってて」と内緒話をしてくれたことを、たぶん私はずっと忘れないだろう。
告白してから通った3日間、確かな手応えはもちろん感じていたけれど、それと同時にイッキを取り巻く人間関係を理解した。
FCの存在。
「君は、僕の噂を聞いたことないの?」
「あー、ないね。何かあるの?」
「僕は3ヶ月経ったら恋人とは別れるんだ」
「どうして3ヶ月なの?」
「特に理由はないよ」
そう言ったイッキの顔は、いつもより少し仄暗い表情だった。
そしてそれから、私とイッキの、3ヶ月限定のお付き合いが始まった。
「名前はなんて呼んだらいい?」
「僕?僕はイッキって呼んでほしいかな」
「わかった、イッキね」
「君は?」
「私は#名前#って呼んで」
「わかった。よろしくね、#名前#」
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