魔女は快眠を望む
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ノルンへ来てから数日が経った。
日々注意されていたが、徐々に能力の加減もわかってきた。
私ばかりに仕事がしわ寄せされないように、みんな頑張ってくれた。
以前の記憶はあんまりないけど、私は能力を使うことによる体力の消耗がほぼないから、ほとんどの業務は私が行っていた気がする。
「明日、街へ降りることになった」
「街に?」
「あなたが乗ってくる前にも何度か街へ買い出しに行ったわ」
「さすがに船の中で育てている食糧だけでは限界があるからね」
「それに。お酒は買いにいかないとないからね〜」
「ちょっと、お金使いすぎないでよ?」
全然地上に降りる気配がないから、戦場に降りる時だけしか地上に向かわないのかと思った。
「それじゃあ、今回の買い出しは誰が行く?」
駆くんが話を進める。
「みんなで行かないの?」
「降りたい人はみんな降りるわよ。その中で必要な物を買ってくる役は誰がするかってこと」
「なるほど」
買い出し組も、必要な物が買えればあとは自由行動らしい。
見たところ、千里くんと七海ちゃん、ロンくんは降りないつもりらしい。
「ちなみに今回はどのあたりに降りるの?」
「ん?ああ、ここだ」
正宗くんが地図を広げて示してくれる。
「……そうなんだ」
この場所。
確か前に暮らしていた気がする。
ここの人たちとはどうやって別れたんだっけ。
というか、何年前だっけ……?
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
それから降りる人たちでジャンケンをして、暁人くん、一月くん、平士くんが買い出し組になった。
解散した後、湖の横のベンチでボーッとしていた私に、平士くんが声をかけてくる。
「光希は行かねーの?」
不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「うーん、私が行って面倒ごとになったら困るし……」
「面倒ごと?」
「うん。前に住んでたところとかだと、私喧嘩して出てきたりしてるから」
「そっか……。あんまりこういうの、口挟まない方がいいんだろうけど、仲直りできそうにねーのか?」
「難しいんじゃないかなあ」
喧嘩、というか一方的に罵られたり攻撃されただけだし。
「そうなのか……」
平士くんはうーんと考え込む。
「じゃあそういうの抜きにしてさ、光希は行きてーの?行きたくねーの?」
「私?」
どうだろう、あまり考えたことなかった。
特段降りる理由はない。
たぶん知っている土地だし、別にみんなが帰ってきてから話を聞かせてもらえればいいし。
「んー……」
平士くんは目をキラキラさせながら私の返答を待っている。
「うーん……」
行きたくないわけじゃない。
でも行かなきゃいけない理由もない。
行きたいか、と聞かれても、それほど行きたいわけでもない。
……でも、みんなと買い物とか、そういうのは楽しそう。
「行きたい……のかな」
「おお!じゃあ行こうぜ!」
「えっ?でも私、買いたい物があるわけでも、見たい物があるわけでもないし……それにさっき言ったみたいに、みんなに迷惑かけちゃうかもっ」
「いいってそれくらい!買いたいもんとかねーなら、俺たちと一緒に買い出し行こうぜ!」
平士くんの無邪気な笑顔を見ていたら、なんだか色んな考え事が吹っ飛んだ気がした。
まあ、万が一本当に迷惑かけそうになったら、みんなから離れたらいいし……。
「……うん。ありがとう」
そうして私は翌朝、買い出し組と一緒にノルンを出発した。