第一章:ノルンでの日々
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掃除、と言っても、ある程度は例のヒヨコがしてくれている。
少し足りないところや、まだ終わっていないところをする、という形らしい。
ヒヨコに頼りきりで堕落した生活になってはいけない、と決めたことのようだった。
今回の能力者達は、真面目な奴が多いそうだ。
畑を作ったものの、結賀の能力に頼らず収穫を待つのは、「能力に頼りすぎるのはいけない」と結賀が言ったからだという。
楽な方へ逃げるような人間は、アイオンには選ばれていないということなのか。
それとも、これが人間の本質なのか。
「これは、どう使うんだ?」
データでは見たことのある、箒とチリトリ。
島では機械が掃除をしてくれるし、こんな道具を使った掃除はしたことがなかった。
せめて掃除機くらいあるだろうと舐めていたのがよくなかった。
こんなことなら、動画を見ておくんだったな。
「えっ、箒使ったことないの?」
加賀見はぎょっとする。
「ああ。見たことはあるが」
「えぇ……じゃあ今まで掃除とかどうしてたの?」
「やってもらってた」
「……なるほどね、君もそういう口か」
おそらく、私のことを久我達と同じ公家か何かだと思ったのだろう。
色街育ちの彼にとって、公家出身の2人とのグループは少し居心地が悪いのかもしれない。
「別に金持ちってわけじゃない。私が掃除をしようと思う段階と、相手が掃除をしようと思う段階が違っただけだ」
「つまり、君が掃除しようとする前に、一緒に住んでた人がやってるってこと?」
「そういうこと」
あながち嘘でもない。
私の研究室は、他の科学者達の中でも1,2位を争う汚さだった。
誰かが資料を取りに来る度に雪崩が起きたり、足の踏み場もないほど書類が散らばっていたり、1番危なかったのは、たまたま入ってきた正宗が薬品の瓶を踏みかけたことだった。
危険度の高い薬品はさすがに床に置かないが、触っても大丈夫なものは、よくその辺に置いてしまったりする。
私自身は全ての物の位置を把握しているので一度も転んだことも滑ったことも物をなくしたこともないが、周りは違う。
そう気づいたのは最近だった。
「どれくらい散らかるの?」
「足の踏み場はないな」
「うわぁ……」
それはやばい、と加賀見は苦笑いをする。
「ちょっと2人とも、口だけじゃなくて手も動かしなさいよ」
「はーい」
久我に怒られながらも掃除を終え、私達は夕食の時間を迎えた。