最終章:『世界』
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目を覚ますと、私はベッドの上にいた。
誰かが運んでくれたのか……。
そう思って身体を起こすと、傍には宿吏の姿があった。
「……宿吏?」
「ん……。!東条、目が覚めたのか!体の具合はどうだ?」
「ああ、問題ない。……どれくらい眠ってた?」
「……2日、くらいだな。今飯を作ってきてやる」
そう言って宿吏はバタバタと出ていき、入れ替わりに正宗が入ってくる。
「予定通り行けば、明日『島』に着く」
「そうか」
「それにしても、いつの間にあんな薬作ってたんだ?」
「こっそり、な。他の誰も、この薬のことは知らない。この薬はアイオンを通さずに身体に能力を宿すから、リスクが高いんだ。最大24時間宿し続けられるが、その分身体への反動も大きい」
「だろうな。……今はゆっくり休め。時期に島に着く」
その後宿吏が持ってきてくれたご飯を食べ、私はまた寝かされた。
「宿吏、私はもう大丈夫だぞ?」
「2日も寝込んでた奴が何言ってんだ」
「悪いな、心配かけて」
「別に、心配なんかしてねえよ。ペアだからここにいてやってるだけだ」
「……そうか。でも私は本当に大丈夫だから」
私は、能力者でもなく、『世界』の人間であることを隠し、ここで生活していた。
皆を騙していたことになるわけだが、それでも宿吏はペアでいてくれるらしい。
「……私のこと、疎まないのか」
「はあ?なんで疎む必要があるんだよ」
「嘘ついてたし、騙してたんだけど」
「それは……お前にも事情があったんだろ?一緒に生活してりゃわかる。東条は無闇に人を騙すような奴じゃねえ」
「……私、そんなに信用得てたのか」
「何より、あの時、お前俺のこと庇っただろ。悪意があって騙してたわけじゃねぇならいいんだよ」
「……宿吏には、胃袋掴まれてるからな」
「またそれかよ」
宿吏は笑うが、これはあながち嘘じゃない。
宿吏の料理には、本人の優しさが滲み出てる。
弟想いの良い兄だと思っていた宿吏が、意外と他者への当たりが強く、驚いたことも多かったが、料理を食べて、こうして優しさに触れて、データは間違いではなかったことを実感した。
「毎日あんたの料理が食べられたら、幸せだろうな」
何気なく呟くと、宿吏は急に動揺し始める。
「な、な、はあ!?お前それ、どういう、」
「えっ」
少し考えて、私もだんだん顔が熱くなってきた。
「いや、違うぞ!?別に変な意味じゃなくて……!」
「わ、わかってるよ!だぁーっもう!いいからお前は寝てろ!」
そう言うと、宿吏は部屋を出ていってしまう。
そうか、リセットのことばかりで将来にまで目が向いていなかったが、私も誰かと結婚したり、一人で旅をしたり、色んな人生を歩むことができるんだな。
おそらく、今回でアイオンの寿命は尽きる。
私はその後、どうしたいのだろうか。