第三章:戦地へ
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ノルンが戦地に到着し、いよいよ外へ出ることになった。
遠くから、銃声が聞こえる。
微かに人の声も聞こえているような気がする。
「じゃあ、行ってくる。一月、平士、千里、船のことは頼んだぞ」
「はーい」
「任せろ!」
「……」
戦闘向きでない能力者だけを残すと、何かあった時に心配だ、ということで残されたのが市ノ瀬だった。
そもそも引きこもりで体力がないため、戦地には向かず、それなら滅多に誰かが来ることもないであろう船で待機した方がいいだろうとなった。
「空汰、」
「なに?アリサさん」
「絶対に船から出ず、なるべくヒヨコの部屋からも出るなよ。何かあったら、必ずここにいる誰かを頼れ」
「わかってるよ」
空汰を残して行くことが、気がかりだった。
だが、能力者達が完全にリセットへ傾いてしまうことも、避けたい。
先日あれだけ言った手前、私がついていかないわけにもいかない。
「今日中には必ず戻るから、いい子で待ってろよ」
「うん」
空汰の頭を撫で、私達はノルンを出発した。
ノルンから1歩外に出ると、中にいた時より銃声や爆発音がより大きく聞こえてくる。
時には大地を揺らしながら、激しくぶつかっているのがひしひしと感じられた。
「まずは街へ向かおう」
どちらかの勢力に接触してから街へ行けば、敵認定される可能性もある。
まずは街へ行って、この戦争について調べる必要があるだろう。
「そうだな」
幸い反対者はおらず、皆久我の結界に守られながら、どうにか街に辿り着くことができた。
「静かだな」
街に着いたところで、人ひとりいなかった。
家の中に気配を感じるものの、やはり誰も出ようとしない。
どうしたものかと思ったその時、近くの家から小さな女の子が飛び出してくる。
こら…!という声が聞こえ、その親と思われる女性も一緒に出てきた。
「おねえさんたち、だあれ?」
「私達は、この街を守りに来たんだよ」
「ほんと?」
「ああ」
「こら!明日香!」
追いついてきた女性はその子を守るように、私達の前に立ちはだかる。
明日香と呼ばれた女の子は、お母さん、と言い、私達のことを「ここを守りに来てくれた人」と紹介してくれた。
「……」
にわかには信じ難い、と母親は私達を訝しげに睨む。
「どうか、信じていただけませんか?俺達は皆さんの力になりたいんです」
正宗や久我達もそう言うと、証拠を見せろ、と小声で言われる。
「わかりました」
真っ先に動いたのは久我だった。
少々お待ちください、と言って街の外へ走っていく。
心配した二条も、それに続く。
しばらくして戻ってきた久我は、目の前で能力を使ってみせた。
「この街の周りに、結界を張りました。これでもうここに被害が及ぶことはありません」
私達のやり取りを見ていたらしい他の住人も、何人か外に出てくる。
「本当に結界が?」
「そんなことできるわけないだろう」
「でも言われてみれば、薄い膜みたいなのがあるような……?」
「もうすぐいつもの砲撃が始まるだろう。それでわかるさ」
住人がそう言った矢先、大きな発射音と共に、先程までよりも戦いが激化した。
すると、その流れ弾が、こちらに向かってきたようで、あちこちから結界が弾を弾き返す音が聞こえる。
「おお……」
「本当に、結界が……」
「これはすごいぞ!」
「これなら、もう怯えなくても……!」
住人達が喜ぶ中、久我の顔色は悪かった。
二条が久我の肩を支えようとすると、必要ないわ、と払いのける。
「すごいね、あんた達!疑って悪かったよ」
「本当に私達を守りに来てくれたんだねえ」
「おかげでまた前のように安心して外に出られるようになるよ」
「ありがとう」
「おーいみんな!もう大丈夫だぞ!!」
1人が叫び回ると、続々と家から人が出てくる。
これだけの人が、家の中で、怯えて暮らしていたのか。
「……話を聞いても?」
「なんだい?」
「そもそも、この戦いは何故起きたんです?」
「それは───」
住人達は顔を見合わせ、頷く。
1人の女性が事の顛末を話してくれた。
どうやら、『世界』の治世に対する不満が爆発した一部の住人が武器商人と手を組み、反旗を翻したようだ。
武器商人、というのは、おそらく結賀史狼だな。
とすると、結賀は戦場に近づけるべきじゃない。
「話してくれて、ありがとう」
「いいって、これくらい。あんた達、よかったら、うちでご飯でも食べていきなよ。大したもんはないけどさ」
お言葉に甘えて、私達はそこでご飯をもらうことにした。