第三章:戦地へ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから数日。
襲撃などなかったかのように平穏な時が流れた。
だが、それもそう長くは続かない。
「……は?正宗、今、なんて……?」
「……みんなには、これから戦地へ赴いてもらうことになった」
それは、突然の『世界』からの通達だった。
奴らの魂胆は見え透いている。
悲惨な戦地の様子を見せ、能力者達の選択をリセットへ導く。
そういうことだろう。
「とはいえ、全員で行くわけじゃない。戦闘向きの能力でない場合は、この船に残ってもらう」
それから誰が戦地へ行くか、話し合った。
結局、久我、二条、結賀、こはる、正宗、私、宿吏が行くことになった。
「こはる、やっぱり君は残った方が……」
「い、いえ!大丈夫です。私と駆くんは、ペアじゃないですか!」
「それは今気にしなくていいと思うんだけど……」
結賀はこはるを連れて行くことに乗り気ではなかった。
しかし、こはるも譲らない。
こはるの能力は皆知らないが、戦闘向きでないなら、戦地へ行くことはオススメできない。
二条も、久我が心配でついていくようだが、久我もそれをよく思っていなかった。
「朔也、あなたは戦闘向きじゃないんだから残りなさいよ」
「それはできない。深琴だけを危ないところへ行かせるなんて、」
「私は大丈夫よ!」
「……お願いだから、君のそばにいさせてほしい。僕はもう、ただ見ているだけなのは嫌だから」
「……」
二条に押し切られ、同行は許可された。
そして、まだ意見のある人が1人。
「アリサ」
「……なんだよ、正宗」
「俺は、お前が行くことには反対だ」
「理由は?」
「……わかるだろ」
「まあ、言いたいことはわかる。だが、私もバカじゃないんだ。自分の身を守れるように対策はしてある」
「……」
「あんたも大概だぞ、正宗。いくら『世界』との連絡役とはいえ、危険すぎる」
「俺のことなら心配いらない。身の程はわきまえてるつもりだ。前線には出ないよ」
「当たり前だ」
正宗の口ぶりからすると、『世界』は能力者達を戦争に加担させようとしているのか?
私は、皆の前に出る。
「皆、戦地へ行く奴も、行かない奴も、聞いてくれ」
手を挙げ、注目を促すと、皆の視線が私に集まる。
「これから戦地へこの船が着陸することになったわけだが、誰が何と言おうと、『世界』から頼まれようと、絶対に争いに加担はするな」
「どういうこと?」
「様子を眺めるだけにしろということだ。近くにある巻き込まれそうな村を保護したりする分にはいい。だが、争いには絶対に関わるな。武器を直してやったりするのもダメだ」
「でも、私達は『世界』側の人間として行くのではないの?」
「そうだろうな。だが、私達は戦争が起こった原因を知っているわけではない。どちらが正しいのか、その判断を下す立場にあるわけでもない。喧嘩と一緒だ。事の顛末を知らない第三者が介入すると、こじれるだろ」
それもそうか、と納得する人もいれば、介入する事で早急に戦争を終わらせた方がいいのでは、と考える人もいるように見受けられる。
「いいか、どうしても介入するなら、相応の覚悟をもて。誰かの味方になるということは、誰かの敵になるということだ。そのつもりがなくても、憎悪の対象には十分なり得る。そして、戦争において、どちらかに味方するということは、自分が手を下していなくても、人殺しに加担しているのと同義だからな」
能力者の意見は、介入しない側へ傾き始めている。
「少し厳しいことを言うようだが、戦争へ介入することの重みをわかってくれ。……そして、久我、」
「何?」
「戦地の真ん中に結界を張って、無理に争いを終わらせるのも無しだ」
「……」
「身近な喧嘩に例えて考えれば、わかるだろ。何か腹が立って殴り合っているのを突然強制終了されれば、不完全燃焼になる。モヤモヤが残って、結局根本的な解決にはならない」
「……ええ」
「あんたの体力的にも、あまり無茶はするな」
「わかっているわ」
久我は、妙に強がるところがある。
守る側の人間として、責任感が強いのだろう。
だからこそ、久我には介入する側ではなく、誰かを守る側で居続けてほしいと思った。