第二章:変わりゆく関係
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そうして一日を終え、夕食を食べ終えた後。
私は屋上へ行った。
久しぶりに夜空が見たくなったのだ。
「───」
「───?」
誰もいないと思っていた屋上には、人影があった。
「……?宿吏?」
そこには、宿吏と、
「!」
アイオンの姿があった。
宿吏は私に気づくと、バツが悪そうにする。
「……なんで東条がここに?」
「夜空を見に来たんだ。いや、今それはどうでもいい。アイオン、何故あんたがここに?」
「!東条、こいつのこと知ってんのか?」
「ああ」
私は2人に駆け寄った。
「問題なさそうで良かった。その後異常はないか?」
「……」
「そうか、なら良い。ここにいるなら、何かあったら私に言え。解決法くらいは出してやれる」
「……」
アイオンは頷く。
宿吏は私達のやり取りを見て、唖然としていた。
「お前、こいつの言葉がわかるのか?」
「まあ、ニュアンスだけどな」
アイオンは私達の様子を見て、いつの間にかいなくなっていた。
「東条、あいつと知り合いってことは……」
「ああ。あんたと市ノ瀬のことは知ってる」
だよな、と宿吏は言う。
「アイオンとなんでここで会ってたのか知らないけど、あんまり会ってるところを見られない方がいいぞ。あの子のことを隠しつつ誤魔化すのも難しいしな」
「そうだな。……気をつける」
宿吏は、市ノ瀬に兄だということを言わない。
混乱を避けたいのだろう。
それなら、自分も市ノ瀬と同じ水の能力者であることも、隠しておきたいだろう。
「戻ろう、宿吏」
「ああ」
宿吏の目的はわからない。
アイオンと何を話していたのか、そしてアイオンは何故話し合いに応じたのか。
2人が話すことといえば市ノ瀬のことだろうが、これ以上どうなるというのか。
もし能力を全て宿吏に移したとして、宿吏の身体が耐えられるかはわからない。
逆に市ノ瀬に戻せば、また彼の苦しい生活が始まる。
今がベストだと思うが……。
「宿吏、能力は問題なく使えてるか?」
「ああ」
「……苦しくないか?」
その問いに、宿吏はすぐには答えなかった。
少し考えて、口を開く。
「そりゃあ苦しい時もあるが、あいつが苦しむくらいなら、俺が苦しんだ方がマシだ」
「……そうか。あんたは、いい兄だな」
信用できる人間が周りにいなかった市ノ瀬にとって、宿吏という存在は相当救いになっていたはず。
それは、記憶をなくしてからも、彼の中に何かぼんやりとした形で、残っていただろう。
そのせいで時には辛くなったかもしれないが、彼に「1人ではない」という意識を植え付けた宿吏は、すごい。
「あんたのその気持ちが、報われることを祈ってるよ」
それ以上、私達は口を開かなかった。