第二章:変わりゆく関係
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あれから、船での生活のほとんどを宿吏や空汰と過ごすことになった。
たまたま早く起きた朝、外へ出ると宿吏が朝のランニングをしていて、ペアで行動しなければならない今、私もその時間に付き合うことになった。
元々朝は苦手で、一緒に走ることはさすがに無理だったが。
宿吏が走っている間、私はそのランニングコースの途中にあるベンチで本を読むことにした。
宿吏が一定のペースで走ってくれるから、定期的に前を通る姿を確認していれば、常に隣にいなくても問題はないだろう。
朝に弱い私は、時には布団を引きずりながら、時には服がはだけたまま、フラフラと毎朝外へ出ていた。
「そんなに無理して付き合わなくてもいいんだぞ?俺がしばらくランニングをやめりゃあいいし」
「大丈夫だ……。このランニングは、あんたの、ルーティンなんだろ……?なら、続けるといい……私は、本を読んでるから……」
「とかいいながら半分くらい寝てるじゃねえか」
「いいんだ……私も、周りから朝型にした方がいい、って……言われてたから……これを、機に……」
話しながらも、頭がぼーっとしている。
なかなか稼働しないこの頭、全くいい加減にしてほしい。
「ったく、じゃあ俺は走るからな」
「ああ……、頑張れよ……」
ウトウトする私を横目に、宿吏は走りだした。
宿吏が2周した頃、誰かが私の肩を叩く。
「お前、朝早く起きられるようになったのか?」
「ああ、正宗か……」
目を擦りながら振り向くと、正宗は呆れたような顔をする。
「徹夜したり昼まで寝てたり、不規則な生活をしていたアリサが、まさかこんな早くに起きるようになってたとはな」
「ん……」
私が道の向こうを指さす。
正宗は疑問に思いつつも、そちらを見ると、数秒で宿吏の姿が見えてくる。
「あー、なるほど」
やはり、先程まで、正宗は私が自主的に生活のリズムを見直そうと朝早くに起きていると思っていたらしい。
「まあそれにしても、その結果お前が健康的な生活リズムに戻るなら、いいことだけどな」
「まあな……」
元々不健康な生活をしているのだから、戻るというよりは変える、だ。
「何の本を読んでるんだ?」
「人工知能入門……」
タイトルを聞いて、正宗は苦い顔をする。
「……アリサはそれもうわかってるんじゃないのか?」
「ああ。これは……執筆する時とかの参考にしようかと思って」
「いや、待て、」
「?」
「そんなの持ってきたらダメだろ!」
「あー……」
「この時代に、まだ人工知能の技術はないんだぞ!?」
「1人の時に読もうと思ってたんだけど……間違えた……」
そこまで気が回らないほど、寝ぼけていたらしい。
ブックカバーをしていたからよかったものの、知れたらまずいだろうな。
「これは部屋に隠しとくよ……。ところで正宗、ペアの市ノ瀬は一緒じゃないの?」
「あー……それなんだが、やっぱり俺が言うだけじゃ部屋から出てきてくれなくてな」
「そうだった……その問題もあったな。もう少し眠気を冷ましてから、私が行く」
「悪いな」
市ノ瀬の誤解は、早めに解いておかないと、また新たな誤解を生んでしまうかもしれない。