序章:合流
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外の世界を、見てみたかった。
生まれてからずっと島で生活してきた私は、外がどうなっているのか、データでしか知らない。
周りにあるのは、森と海。
そして無機質な機械、自然に隠れた冷たい建物。
外に出たくて、拘束から逃れたくて、私はアイオンに話を持ちかけた。
「なあ、アイオン」
それは、いつもの整備の後。
整備といっても、根本的な修理は施せない。
ただ、状態を見て、直せそうなところを少し直すだけ。
「?」
アイオンは、珍しく話しかけた私を不思議そうに見つめる。
「私を、ノルンに乗せてくんない?」
「……?」
「外に、出たいんだよね。……その、あんたもう壊れちゃうし、これ逃したら、しばらく仕事に追われて外に出れないかもって思って」
「……」
「ああ、うん。あんたがそう簡単にデータ書き換えらんないのは知ってる。だから、あんたを通して、ノルンに登録してるデータを弄るのを許してほしい」
「……」
「私はずっと、本物の世界を見てみたいって思ってたんだ。データじゃなくて、ちゃんと、この目で。……正直、正宗が羨ましかった。私に能力つけてくれりゃあ良かったのにって思った」
「……」
「わかってる、あいつを能力者に選んだのは結局のところ、今回は空汰が乗るからだろ。そして、私の適正値が低いから」
「……」
「なあ、その役目、私にもくれないか。空汰は守るし、ちゃんとここへ能力者達を連れてくる。あんたのことは守れないかもしんないけど、あんたが止まっちまう前までには、絶対空汰を連れてくる。正宗一人じゃあ対処しきれないこともあるかもしんないし」
アイオンは珍しく、少し困った顔をする。
研究員のおっさんたちが空汰を頼りにしてることを、こいつは知ってる。
リセットの根回しをした連中がいることも知ってる。
アイオンも、それなりに悩んでたんだろう。
唯一信用できる正宗を能力者にしたはいいものの、あいつもあいつで、身内には逆らえない。
おっさんたちに利用されない保証は、正直ない。
真面目な分、言いくるめられる可能性も否定できない。
空汰は確実にここへ来るし、能力者も連れてこられるだろう。
その後の動きはともかくとして。
「能力者達にも、ちゃんとあいつら自身で選択できるよう、どうにか力を尽くすよ。……だからアイオン、私にあんたへの干渉を許可してくれ」
「……」
「大丈夫だ。おっさん達にバレたら、私があんたのパスをこじ開けたことにすりゃあいい。あいつら、あんたのメンテにロクに関わってない上にあんたから遠ざけられてっから、気づかないだろ」
アイオンは静かに目を閉じた。
そうして少し歌を聴かせてくれた。
「……ありがとな」
私は、アイオンのデータを、改竄した。
生まれてからずっと島で生活してきた私は、外がどうなっているのか、データでしか知らない。
周りにあるのは、森と海。
そして無機質な機械、自然に隠れた冷たい建物。
外に出たくて、拘束から逃れたくて、私はアイオンに話を持ちかけた。
「なあ、アイオン」
それは、いつもの整備の後。
整備といっても、根本的な修理は施せない。
ただ、状態を見て、直せそうなところを少し直すだけ。
「?」
アイオンは、珍しく話しかけた私を不思議そうに見つめる。
「私を、ノルンに乗せてくんない?」
「……?」
「外に、出たいんだよね。……その、あんたもう壊れちゃうし、これ逃したら、しばらく仕事に追われて外に出れないかもって思って」
「……」
「ああ、うん。あんたがそう簡単にデータ書き換えらんないのは知ってる。だから、あんたを通して、ノルンに登録してるデータを弄るのを許してほしい」
「……」
「私はずっと、本物の世界を見てみたいって思ってたんだ。データじゃなくて、ちゃんと、この目で。……正直、正宗が羨ましかった。私に能力つけてくれりゃあ良かったのにって思った」
「……」
「わかってる、あいつを能力者に選んだのは結局のところ、今回は空汰が乗るからだろ。そして、私の適正値が低いから」
「……」
「なあ、その役目、私にもくれないか。空汰は守るし、ちゃんとここへ能力者達を連れてくる。あんたのことは守れないかもしんないけど、あんたが止まっちまう前までには、絶対空汰を連れてくる。正宗一人じゃあ対処しきれないこともあるかもしんないし」
アイオンは珍しく、少し困った顔をする。
研究員のおっさんたちが空汰を頼りにしてることを、こいつは知ってる。
リセットの根回しをした連中がいることも知ってる。
アイオンも、それなりに悩んでたんだろう。
唯一信用できる正宗を能力者にしたはいいものの、あいつもあいつで、身内には逆らえない。
おっさんたちに利用されない保証は、正直ない。
真面目な分、言いくるめられる可能性も否定できない。
空汰は確実にここへ来るし、能力者も連れてこられるだろう。
その後の動きはともかくとして。
「能力者達にも、ちゃんとあいつら自身で選択できるよう、どうにか力を尽くすよ。……だからアイオン、私にあんたへの干渉を許可してくれ」
「……」
「大丈夫だ。おっさん達にバレたら、私があんたのパスをこじ開けたことにすりゃあいい。あいつら、あんたのメンテにロクに関わってない上にあんたから遠ざけられてっから、気づかないだろ」
アイオンは静かに目を閉じた。
そうして少し歌を聴かせてくれた。
「……ありがとな」
私は、アイオンのデータを、改竄した。