短編
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「フラウ、フラウってば!」
「あー…あとごふん」
「それ1時間前にも言ってたでしょう!?いい加減に起きなさいったら!」
棺桶の中で眠る大柄の男に仁王立ちで立つシスター。なんともいえぬ構図のとある部屋で繰り広げられる会話は平和な一般家庭のワンシーンのように穏やかで。
2人の風貌さえ特徴的でなければ幸せな新婚生活にさえ見えたが、残念ながらこの2人はそこまで平和な世界を生きてはいなかった。
「いい加減に、しなさいっ!」
「ぐはぁっ!!……てめ、本の角で殴りやがったな…!」
問答無用と棺桶の蓋を開き、3度目の眠りにつこうとしているフラウに容赦なく聖書を振り下ろす[#dn=1#]。
あまりの痛みに悶絶しつつ何とか起き上がった彼を見て[#dn=1#]は満足そうに微笑んだ。
「おはよう、フラウ。気分はどう?」
「…誰かさんのせいで最悪だぜ…」
「え?」
「いや、すこぶるいい調子だ」
「そう、なら良かった」
もうすぐ朝食だから、そう言い残して部屋を出ようとする[#dn=1#]だが、突然後ろに腕を引かれてバランスを崩す。
体勢を直せず後ろに倒れ込む[#dn=1#]だったが、固い床に打ち付けられる前に人間の身体にふわりと守られたため痛みはなかった。
「ちょっと…どういうつもり?」
「別にー?頭が痛いから俺の可愛い恋人に癒してもらおうと思っただけだ」
その痛みも恋人によるものなのだが、そんなことを言えば同じ痛みが襲ってくることを知っているフラウはただ彼女を抱きしめる。
対する[#dn=1#]も文句は山ほどあったものの、何も言わずに彼に身を任せた。
「……ね、フラウ?」
「あ?なんだよ」
「………もし、もしもよ?私と貴方が一緒にいられなくなってしまったら、どうする?」
本来、聖職者は恋愛禁止である。
それに加えてフラウは普通の司教ともまた違う、特異な存在。フラウの仲間や彼の親同然の人たちから、自分たちの関係が危ういものだと危険視されていることを彼女は知っていた。
そして、それはもちろん、フラウも。
「……ねぇよ」
「え?」
「俺らが離れるなんてこと、ねぇよ」
回されている腕の力が強くなる。
離さないとでも言いたげなその強さに[#dn=1#]は自分の手を重ねる。
「…そうよね、離れたら使い物にならないものね、あなたが」
「うるせぇよ、それはお前もだろうが」
冗談交じりのその言葉に小さく笑うとフラウは彼女を抱きしめながら再び棺桶の中で横になる。
今度は[#dn=1#]から文句の言葉も行動もなかった。
「絶対離さねぇ。お前だけは、奪わせねぇ。もし俺からお前を奪おうとする奴がいたらその時は、」
「……その時は?」
「………どうするかな。一緒に逝くか?」
「なにそれ、素敵ね」
2人は笑っていなかった。
もしそのような状況が来たら、躊躇いなく共に命を断ちそうな程に、真剣な瞳。
たとえ魂がこの身を離れても、離れることがないように強く繋がれた手。
決して揺るがない互いへの想いだけを抱えて、2人は静かに瞳を閉じた。
__________その後、食事の時間になっても来なかった2人を探しに来たカストルにこってり怒られたのは、また別の話。
「あー…あとごふん」
「それ1時間前にも言ってたでしょう!?いい加減に起きなさいったら!」
棺桶の中で眠る大柄の男に仁王立ちで立つシスター。なんともいえぬ構図のとある部屋で繰り広げられる会話は平和な一般家庭のワンシーンのように穏やかで。
2人の風貌さえ特徴的でなければ幸せな新婚生活にさえ見えたが、残念ながらこの2人はそこまで平和な世界を生きてはいなかった。
「いい加減に、しなさいっ!」
「ぐはぁっ!!……てめ、本の角で殴りやがったな…!」
問答無用と棺桶の蓋を開き、3度目の眠りにつこうとしているフラウに容赦なく聖書を振り下ろす[#dn=1#]。
あまりの痛みに悶絶しつつ何とか起き上がった彼を見て[#dn=1#]は満足そうに微笑んだ。
「おはよう、フラウ。気分はどう?」
「…誰かさんのせいで最悪だぜ…」
「え?」
「いや、すこぶるいい調子だ」
「そう、なら良かった」
もうすぐ朝食だから、そう言い残して部屋を出ようとする[#dn=1#]だが、突然後ろに腕を引かれてバランスを崩す。
体勢を直せず後ろに倒れ込む[#dn=1#]だったが、固い床に打ち付けられる前に人間の身体にふわりと守られたため痛みはなかった。
「ちょっと…どういうつもり?」
「別にー?頭が痛いから俺の可愛い恋人に癒してもらおうと思っただけだ」
その痛みも恋人によるものなのだが、そんなことを言えば同じ痛みが襲ってくることを知っているフラウはただ彼女を抱きしめる。
対する[#dn=1#]も文句は山ほどあったものの、何も言わずに彼に身を任せた。
「……ね、フラウ?」
「あ?なんだよ」
「………もし、もしもよ?私と貴方が一緒にいられなくなってしまったら、どうする?」
本来、聖職者は恋愛禁止である。
それに加えてフラウは普通の司教ともまた違う、特異な存在。フラウの仲間や彼の親同然の人たちから、自分たちの関係が危ういものだと危険視されていることを彼女は知っていた。
そして、それはもちろん、フラウも。
「……ねぇよ」
「え?」
「俺らが離れるなんてこと、ねぇよ」
回されている腕の力が強くなる。
離さないとでも言いたげなその強さに[#dn=1#]は自分の手を重ねる。
「…そうよね、離れたら使い物にならないものね、あなたが」
「うるせぇよ、それはお前もだろうが」
冗談交じりのその言葉に小さく笑うとフラウは彼女を抱きしめながら再び棺桶の中で横になる。
今度は[#dn=1#]から文句の言葉も行動もなかった。
「絶対離さねぇ。お前だけは、奪わせねぇ。もし俺からお前を奪おうとする奴がいたらその時は、」
「……その時は?」
「………どうするかな。一緒に逝くか?」
「なにそれ、素敵ね」
2人は笑っていなかった。
もしそのような状況が来たら、躊躇いなく共に命を断ちそうな程に、真剣な瞳。
たとえ魂がこの身を離れても、離れることがないように強く繋がれた手。
決して揺るがない互いへの想いだけを抱えて、2人は静かに瞳を閉じた。
__________その後、食事の時間になっても来なかった2人を探しに来たカストルにこってり怒られたのは、また別の話。
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