【長編/フラウ】
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“貴女が、これからは守るのよ”
女性のひんやりとした手が少女の両手を包む。薬指に光る輪は少女の指にあることに馴染まず、どこか反発しているかのような輝きを見せていた。
“貴女の愛だけは、決して失わないで…”
女性の顔が次第に霞む。
何か言葉を発しようとして少女は口を開くも、零れたのは掠れた息だけ。
ついには少女の手からも懐かしい感触が離れていって、全てが光に溶けて消えた瞬間、優しい彼女の声が響いた。
“貴女に、そして彼に、神の御加護を”
**
見慣れた天井が映る。
視界の端に見慣れたシスターの服を認識して、漸く今までの景色が夢であったことを[#dn=1#]は認識した。
窓の外は微かに光が闇に混ざり始めた頃で、起きるには丁度いい。少しだるい体をゆっくりとベッドから起こして窓辺に立つと、深く息を吸った。
「………よし」
今日もまた1日が始まるのだと、己に言い聞かせるように。
やがて服を着替えた[#dn=1#]は自室を出て、仕事に入る前の日課に移る。
「おはようございます、[#dn=1#]さん」
「おはよう、カストル」
道すがらに出会った眼鏡をかけた司教、カストルに声をかけられると彼女は長い髪を揺らしながら答えた。
「今日もこれから?」
「えぇ。私に任せておいて」
「…全く、彼も貴女無しで生きていけたらいいのですが」
[#dn=1#]がこれから何をするか知っているカストルはため息をついて零す。それに乾いた笑いを返しながら[#dn=1#]はひらりと彼に手を振った。
「そうなってしまったら困るわ。私が生きていけなくなってしまうもの」
小さく呟いた言葉が、カストルの耳に届くことは無かった。
やがて辿り着いた一室。
鍵がかかったその部屋を躊躇うことなく合鍵で開けた彼女はつかつかと部屋の中へ歩みを進める。人の部屋の割にはあまりにも簡素な部屋、その中心を陣取る数少ないながらも不似合いなこの部屋の家具である棺桶。
その蓋をそうっと開き中の存在が静かに眠っていることを確認した[#dn=1#]は満足そうに笑い、そして。
一閃。
「いって!!」
「おはよう、司教サマ?今日も1日が始まるわよ」
「てめ…[#dn=1#]、もう少し優しい起こし方つつーもんが」
「あら、まだ寝ぼけているのかしら?それならもう1発」
「起きますとも麗しのシスター?だから聖書を持つ手を下ろしてくれるか?」
悪趣味にも棺桶で眠るこの不良司教、フラウを朝起こす役割は[#dn=1#]に一任されていた。それは彼女にフラウは頭が上がらないということもあるし、彼女が最も彼の扱いが上手いからでもある。
女性のひんやりとした手が少女の両手を包む。薬指に光る輪は少女の指にあることに馴染まず、どこか反発しているかのような輝きを見せていた。
“貴女の愛だけは、決して失わないで…”
女性の顔が次第に霞む。
何か言葉を発しようとして少女は口を開くも、零れたのは掠れた息だけ。
ついには少女の手からも懐かしい感触が離れていって、全てが光に溶けて消えた瞬間、優しい彼女の声が響いた。
“貴女に、そして彼に、神の御加護を”
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見慣れた天井が映る。
視界の端に見慣れたシスターの服を認識して、漸く今までの景色が夢であったことを[#dn=1#]は認識した。
窓の外は微かに光が闇に混ざり始めた頃で、起きるには丁度いい。少しだるい体をゆっくりとベッドから起こして窓辺に立つと、深く息を吸った。
「………よし」
今日もまた1日が始まるのだと、己に言い聞かせるように。
やがて服を着替えた[#dn=1#]は自室を出て、仕事に入る前の日課に移る。
「おはようございます、[#dn=1#]さん」
「おはよう、カストル」
道すがらに出会った眼鏡をかけた司教、カストルに声をかけられると彼女は長い髪を揺らしながら答えた。
「今日もこれから?」
「えぇ。私に任せておいて」
「…全く、彼も貴女無しで生きていけたらいいのですが」
[#dn=1#]がこれから何をするか知っているカストルはため息をついて零す。それに乾いた笑いを返しながら[#dn=1#]はひらりと彼に手を振った。
「そうなってしまったら困るわ。私が生きていけなくなってしまうもの」
小さく呟いた言葉が、カストルの耳に届くことは無かった。
やがて辿り着いた一室。
鍵がかかったその部屋を躊躇うことなく合鍵で開けた彼女はつかつかと部屋の中へ歩みを進める。人の部屋の割にはあまりにも簡素な部屋、その中心を陣取る数少ないながらも不似合いなこの部屋の家具である棺桶。
その蓋をそうっと開き中の存在が静かに眠っていることを確認した[#dn=1#]は満足そうに笑い、そして。
一閃。
「いって!!」
「おはよう、司教サマ?今日も1日が始まるわよ」
「てめ…[#dn=1#]、もう少し優しい起こし方つつーもんが」
「あら、まだ寝ぼけているのかしら?それならもう1発」
「起きますとも麗しのシスター?だから聖書を持つ手を下ろしてくれるか?」
悪趣味にも棺桶で眠るこの不良司教、フラウを朝起こす役割は[#dn=1#]に一任されていた。それは彼女にフラウは頭が上がらないということもあるし、彼女が最も彼の扱いが上手いからでもある。
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