St. Valentine's Day
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--------『りんねー、前から二人はお似合いだと思ってたの!」
------------『邪見さまだって喜んでるんだから、気にしちゃ絶対だめ!」
-----------------『りん、邪見さまとお散歩行って来るから、頑張ってねーーーっ!』
圧倒的に勢いに負けてしまった桜だった。
----若いってすばらしい…
苦笑しつつ空を仰ぐ。
満月を隠す雲は分厚く、重そうだ。
---------とりあえず、苺大福、殺生丸さまにも渡さなきゃね…
鼓動が速くなるのに気付かぬように、桜は殺生丸の元へ駆け寄った。
「殺生丸さま!」
「…なんだ」
凛とした、低い声。
流れる髪や白い衣装と鎧に包まれた体が夜に映え、妖艶とも言える。
桜は思わず息をのんだ。
「あっ、あの、今日かごめちゃんが色々材料を持って来てくれたので作ったんです。どうぞっ!」
苺大福の入った袋を両手に差し出す。
殺生丸はじっと桜を見つめ、ゆっくりと腰を上げた。
そして、袋から一つ取り出し、一口食べる。
桜は高鳴る心臓を押さえつけて、殺生丸を見つめた。
苺に少し目を見開いた殺生丸だが、顔色一つ変えず全て食べ終える。
「あ…あの…」
-----おいしくなかったかな…
おずおずと上目遣いに殺生丸を見上げる桜。
「人間の食い物は口に合わん」
「…!」
------------やっぱり……
「そう…ですよね…」
桜は視線を落とす。
こみ上げる熱いものをこらえ、ぎゅっと唇を噛んだ。
-------泣いちゃダメ…勝手に少し期待しちゃった罰だ……
---殺生丸さまが人間ごときに振り向くはずも無いのに………
くい、と顎を持ち上げられる。
「!」
視線と視線が交わった。
桜は顎に添えられた手に、鼓動まで上げられる。
相変わらず表情が読み取れない殺生丸の顔。
均整の取れた綺麗な顔。
桜の瞳は緊張と戸惑いを隠しきれずに泳ぐばかりだ。
「殺生丸さま…?」
「人間の食い物は口に合わん……が、」
刹那。
唇に柔らかな感触。
「美味かった」
そして彼は手を離し、顔を背ける。
桜は呆然と立ち尽くしていたが、徐々に己を取り戻し、みるみる顔を真っ赤に染めていく。
------------私、今…殺生丸さまに、き、キスされたよね!?!?
口をぱくぱくさせながら殺生丸を見る。
そんな桜を一瞥し、殺生丸は口を開いた。
「今日は、そういう日なのだろう?」
大好きな彼の声が低く響く。
驚きに満ちた桜の顔がやがてほころび、柔らかな笑みが広がる。
「はいっ!」
殺生丸の元へ一歩歩み寄ったその時。
ふわり、ふわりと白いものが舞い降りて来た。
「雪…」
天を見上げると、無数の白雪が舞ってくる。
「そういえば今日寒かったですもんねぇ」
桜は目を細めた。
その体が引き寄せられる。
殺生丸の腕に収められた桜は微笑んだ。
「すごく温かいです」
「…」
今夜は、ホワイトバレンタイン―――
幸せな二人に祝福を―――――――………
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