或る夏の日のこと
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その時だった。
ザーンと音を立てて、特別大きい波が流れてきたのは。
桜は思わず大きく体勢を崩す。
その勢いで殺生丸の足に強くぶつかってしまった。
普段なら殺生丸も堪えられただろう。
しかし、一瞬の出来事で、しかも突然のことだったからか。
バシャーンッ
水しぶきが弾ける。
その場にあったのは、殺生丸は座り込み、その上に桜が覆いかぶさっている光景。
「「………」」
長いのか短いのか分からない沈黙がやってくる。
沈黙を破るように、桜は我に返った。
「あぁぁぁあっっすすすっ、すいませんっ!!」
慌てふためき、殺生丸からどこうとする。
が、足がもつれてしまい。
ドシャッ
再び殺生丸に抱きつくように倒れてしまう。
桜が顔を上げると、間近にある殺生丸の顔。
その顔色は普段とあまり変わらない。
だが、桜の顔がみるみる赤く染まっていく。
「え、えとっ…」
殺生丸の視線に絡めとられ、身動きが出来なくなってしまった桜の心臓は早鐘をうっていた。
水に濡れて冷たさを感じるはずなのに、体温が急上昇しているようで。
-----------ど、どうしよう…そんな見つめられたら…
心の中では焦っているものの、体は上手く動かない。
そんな状態で、どのくらいの時が経ったのだろう。
ふわり、と桜の体が宙に浮いた。
「えっ?!」
思考が一瞬停止する。
すぐに、自分が殺生丸に抱えられているのだと知った。
殺生丸は桜を抱えて立ち上がると、ストンと桜を立たせる。
--------------今、何が起こったの?
呆然とする桜。
殺生丸は何食わぬ顔で、服の砂を払っている。
殺生丸は桜の方を見ると、その顔は未だ唖然としていて、頬は紅潮している。
「桜」
「……はっ、はい!」
ハッとして、わたわたと反応する桜に殺生丸は少し目を細めた。
「…私を押し倒すとは、良い度胸をしているな」
「……えぇっ?!す、すいませんっ!わざとじゃないんです!!」
---------やっぱり…怒っているのかなぁ……
桜は恐る恐る殺生丸を見上げる。
しかし、そこには穏やかな表情の殺生丸。
笑顔など見たことがないが、それでもその顔は笑っているようだった。
-------------なんか、からかわれた…?
そう思うと、可笑しくなってきて。
ふふっと笑う。
「私たち、びしょ濡れになっちゃいましたね~」
「………誰のせいだ」
「ごめんなさいっ」
穏やかな夏の昼下がり。
太陽は煌めく海と、波打ち際で微笑む二人を照らしていて。
真っ白に光る貝が二人の足下で揺れていた。
Fin.
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