或る夏の日のこと
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「ふぅ・・・りんちゃんはやっぱり元気だなぁ」
苦笑しつつ、桜は邪見と追いかけっこを繰り広げているりんを眺めた。
追いかけっこといっても、殆どりんが一方的に追いかけているようなもので。
時折水のかけ合いに発展する二人の光景は微笑ましいものだった。
そして、桜の顔にも笑みが溢れた時。
サク……
背後から、もう聞き慣れた足音が耳に入る。
桜は再び微笑んで、振り返った。
「殺生丸さま」
その名前を口にすると、ちらと桜を見やる彼。
波打ち際で足を少し水に浸しながら、遠くで戯れているりん達に視線を移す。
その佇まいは普段通り凛としていて。
銀色の髪を潮風に弄ばせていた。
桜はパシャパシャと水音を立てながら殺生丸に歩み寄っていく。
そして殺生丸の横に並んだ。
「もう、出発ですか?」
「…構わん」
短いやり取りの後、再びりん達を眺める。
波の音とはしゃぎ声、蝉と遠くの海鳥が奏でる歌を聴いていると、幻想世界にいる様な錯覚を起こしてしまいそうだ。
「何だか、心地いいですね」
少しまどろんだ調子で殺生丸の方を向く。
殺生丸も桜を見つめる。
桜も柔らかい表情で見つめ返す。
以前は少し恐れていた殺生丸の視線も、月日が経ち、共に闘ううちにちゃんと受け入れられるようになった。
「…あっ」
ふと、自分の足元に目をやった桜が声をあげた。
太陽の光を浴びて光るものが水面の下に見えたのだ。
桜はしゃがみこむと、それを手に取る。
「綺麗~っ」
それは真っ白の貝殻。
形も整っていて、光沢も良い。
桜はそれを上に掲げ、きらきらと輝く様を眺めた。
その様子を静かに見下ろす殺生丸。
その瞳はどこか優しげだった。
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