螢
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静かな水無月の夜。
何処かで鳴く蛙の音を聞きながら、桜は床に伏せていた。
殺生丸の元へ嫁いで数十年が経つ。
いつからか体は言うことを聞かなくなり、今や食事も満足に喉を通らなくなった。
最近は一日のほとんどを寝たきりで過ごしているが、自分でも寝ているのか起きているのか曖昧な時も多く、その命の灯が静かに消えようとしているのを日々痛感させられる。
------------殺生丸さまにたくさんの愛情を頂いて、これ以上望むものなんてないけれど…
その殺生丸さまのお側にずっとお仕えできない事は心苦しいなぁ……
その時、不意に一つの光が部屋に迷い込んできた。
ちかちかとその光を点滅させながら、不規則に宙を漂っている。
「螢…」
小さな白い光が呼び起こすのは遠い日の記憶。
-----------ねぇ、殺生丸さまも覚えてる…?
桜はゆっくりと目を閉じた。
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