永遠に
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「失礼致します」
殺生丸が待つ部屋の障子が開く。
殺生丸はゆったりと腰掛けながら、視線をそちらへやった。
刹那、僅かにその目が見開かれる。
そこには、薄桃色の間着に小花柄が入った緋色の打ち掛けを纏っている桜。
年末に新調しておいた着物が元から備わる彼女の愛らしさを一層引き立てていた。
「せ、殺生丸さま…?」
「…何でもない」
きょとんと首を傾げる桜から目をそらす。
桜は不思議そうな顔をしながら殺生丸の隣に座った。
「どこかおかしいですか?」
「いや…」
「うーん…?」
間。
「………よく似合っている」
「!!」
そっぽを向いている殺生丸の耳がほんの少し赤いような。
桜は目を丸くし、蒸気した顔を両手で覆う。
「ありがとうございます」の言葉は、言葉にならずに消えていった。
「殺生丸さま、蛇斎様がお見えになられました」
暫くして女中が障子の外から声をかけた。
殺生丸の短い返事の後に障子が静かに開く。
桜はごくりと唾を飲んだ。
最初の客人として現れたのは、顔の半分までも鱗で覆われ、どこか艶かしい男。
紫色の唇と毒々しい赤い瞳が印象的な蛇の妖怪だ。
-----------こ、こんなことで動揺してたら駄目…!
桜は妖気に気圧されぬよう姿勢を正し、微笑みが引きつらぬよう注意を払った。
蛇斎と呼ばれたその男は丁寧に新年の挨拶を述べ、殺生丸は淡々と応えていく。
そして話も終盤かと思われた頃、蛇斎はふいに桜の方を見た。
「いやぁしかし、話には聞いておりましたが、何とも可愛らしい奥方様ですなぁ」
「い、いえっそんな…」
突然の褒め言葉に桜はうろたえながら顔を真っ赤にする。
蛇斎は柔らかな表情で殺生丸を見やると
「人間の奥方を娶られたと聞いて心配する輩もいたものですが、取り越し苦労も甚だしかったようですな」
と笑った、が。
「当たり前だ」
目を閉じて、きっぱりと言い切る殺生丸に蛇斎も桜も虚を突かれる。
しかし、すぐに蛇斎は笑い出し、桜は耳まで赤らめた。
「いやぁ噂通りの御寵愛で何より!」
「恐縮ですっ」
つゆ知らぬ顔の殺生丸と今にも顔から火が出そうな桜。
外で控える者達も陰ながら仲睦まじい新婚夫婦に微笑んでいた。
----------------すごく恥ずかしいけど、何だか嬉しいな…
桜は観念したように殺生丸を見上げる。
愛しいこの人の隣で、妻として座っていられる。
これ以上の幸せってあるのかなーーー………
満ち足りた気分で、部屋を去る蛇斎を見送るのだった。
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