永遠に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
西国を支配する犬妖怪の一族。
その現当主と祝言を挙げたのは、人間の娘だった。
「奥方様ぁ、そんなに働かれてしまっては我々の立つ瀬がございませぬ!」
「あはは、みんなでやった方が楽しいじゃない。
それより、これはどうするの?」
「それはーーー」
桜が殺生丸の元へ嫁いで数ヶ月が経つ。
最初は人間を疎んでいた者もいたのだが、桜の人柄のせいか徐々に打ち解けていった。
今では誰からも愛される奥方様である。
そして今日は朝から屋敷が慌ただしい。
「すごーい!ご馳走がいっぱい!!」
初めてこの屋敷の正月を迎える桜は用意を手伝いながら、子どものようにきゃっきゃとはしゃいでいる。
「それはそうです!国中の妖怪が親方様に新年の挨拶にお見えになるのですもの。
毎年、お見えになった方と酒宴を催すのが恒例なのです」
「へぇ~、門松もすごく大きかったし本当に殺生丸さまってすごいんだなぁ…」
人間界とは少し違うものの、華やかな装飾やご馳走の数々に桜は感嘆の溜息を吐く。
そんな彼女を女中は微笑ましそうに眺める。
人間の身にして、かつて冷酷無慈悲だった殺生丸の心を奪い、屋敷の者からも愛される桜だって大したものだと、心からそう思った。
「桜」
低く、凛とした声が部屋に響く。
女中や家臣らは一斉に頭を垂れ、桜は嬉しそうに振り返った。
部屋の入り口に佇む彼は琥珀色の瞳で桜をじっと見つめている。
濃藍の直垂に白銀の長く艶やかな髪がよく映えていて、いつになってもその美しさに慣れることはない。
桜は主人である彼の元へ駆け寄ると、ふわりと笑う。
「今日のお着物もよくお似合いですね、殺生丸さま」
殺生丸は鼻を鳴らし、言葉を続ける。
「今日一日、私の隣にいろ」
「え…?でも、今日は沢山の方がご挨拶に見えるんじゃ…」
「だから、だ」
「わ、分かりました」
殺生丸は女中に桜の身支度を言いつけると去っていった。
「では奥方様、ご支度をしましょうか」
「き、緊張する……」
先程とまではうって違う、ぎこちない笑みを浮かべた桜を見て、一同に笑いが起きた。
「ちょっとみんな!他人事だと思ってー!!」
「はは、奥方様なら大丈夫じゃ!」
「そうですわよ、立派な奥方様でいらっしゃいますもの」
「そうですわ!そうでなければ、お側になんて申し付けられませんわよ」
「しかし親方様も桜さまをとても愛してらっしゃるなぁ」
「もーー!!」
桜は顔を真っ赤にしながら頬を膨らませる。
だが、和やかな雰囲気に包まれ、決して悪い気はしない。
----------殺生丸さまの恥にならないように頑張ろう
そう決意して、女中と共に支度に向かうのだった。
.
1/5ページ