第閑話 随従
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「今日もお留守番か~つまんないね~」
花畑に腰を下ろし、りんは口を尖らせた。
甘い匂いが辺り一面に漂っている。
「本っ当につまらん」
邪見は深いため息と共に、何処へ行くとも告げず飛び立った主人を思った。
「仕方ないよ。ほら、お花で遊ぼ?」
桜が二人をなだめるように言うと、りんは喜んで花を摘み始め、邪見はもう一度ため息を吐くとそっぽを向く。
----------こいつらのお守りさえなければ、殺生丸さまにお供できるものを...
第一、桜が戦えるんじゃから、わしがいなくても…
最近の桜はわしより強いやもしれんのに────
そこまで考えて、邪見は急いで首を横に振った。
----------いや!所詮は人間の女じゃ!
やはり最も殺生丸さまのお役に立てるのはこの邪見ということ...だからわしも置いていかれたのじゃな!
うんうん、と頷く。
その時。
ゴッ……と突風が吹き抜け、邪見の体が宙に浮いた。
「きゃあっ」
「りんちゃん!」
桜が体勢を崩しつつもりんを抱きかかえる。
「一体何が…?!」
悪い予感に身を固くする。
同じような事が起きた、いつかの記憶を手繰り寄せるのも束の間。
「あ!」
りんがいち早く声を上げた。
すぐに邪見と桜もその理由に気付き、息を飲む。
そこには奈落の手下、神楽が立っていた。
「かっ、神楽、きさまっ!またしてもりん達を攫いに来おったのか?!」
「邪見、下がって!」
「こ、こりゃ、桜!」
自分とりんを庇うように敵と対峙する桜の背中を見て、邪見は驚きと少しの安堵を覚える。
----------って、桜に怪我でもされたら、殺生丸さまにどやされるではないか!
緊迫する一行とは対照的に、神楽はどこか気怠げな面持ちをしていた。
「ああ?攫う?…そんな事もあったっけ」
「きっきさま、いけしゃあしゃあとっ」
「何の用、ですか」
金切り声で噛み付く邪見を手で制しつつ、桜は低く抑えた声で尋ねる。
「殺生丸はいねえのか?」
「…はい」
「たわけっ、殺生丸さまがこの場にいたら、今頃きさまの首は吹っ飛んどるわっ!」
「邪見、黙って!」
「邪見さま、あの人怒らせちゃったら桜ちゃんが危ないよ!」
「なっ」
---------わしの立場が無い?!桜の方が頼りになるというのか?!
しかし、この状況…桜がわしらを守っているという構図は明らか…ぬぐぅ……!
葛藤する邪見を他所に、神楽は何やら思案し、それを桜は注意深く見つめる。
だが次の瞬間、神楽は「それもそうか」と呟くと、踵を返した。
あまりの呆気なさに、三人は目を丸くして空高く飛び立つ神楽を見上げる。
突風に乗って、花びらが舞い上がった。
「行っちゃった…」
「あいつ、何しに来たんだ?」
拍子抜けした邪見とりんは顔を見合わせる。
と同時に、桜の身体が膝から崩れ落ちた。
「桜ちゃん!」
「桜!?」
--------まさか、神楽が何かしよったか!?
「りんちゃん…邪見…」
「桜ちゃん、大丈夫!?」
「どうしたんじゃ!?」
慌てて駆け寄ると、桜は潤んだ瞳で二人を見上げる。
「こ…腰が抜けた…」
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