第十二章 由来
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その夜。
山の国の国境付近の森で一行は休む事にした。
空に火の粉を舞い上げる焚火を囲み、殺生丸を除く三人は干し肉や果物を平らげる。
殺生丸はやはり少し離れた木の下に腰を下ろしていた。
珍しく静かな晩餐である。
刀念の話を聞いてから、りんでさえもその口を閉ざし気味だった。
彼女なりに空気を読んでいるのだろうか。
そんなりんがいじらしくなって、桜は口を開いた。
「小鈴に話を聞いた時はもっと怖くて強ーい妖怪だと思ったのに、なんだか拍子抜けしちゃったね」
茶化すような物言いに一瞬目を丸くしたりんだが、すぐに表情を緩める。
「うん。悪い人じゃなかったもんね」
「失恋が闇桜に由来していたなんて思わなかったよ」
「ふん、妖怪のくせに人間みたいな心の弱い奴じゃ」
「ちょっと邪見、人間馬鹿にしないでよね。
邪見は恋愛経験無いからそんな事が言えるんだよ」
「なっ、わしにだってそれくらい…っ」
「邪見さまの恋のお話聞きたーい!」
「誰が話すか!馬鹿もん!!」
「邪見は心が強いから失恋くらい余裕なんでしょ?」
「貴様に話す道理はないわ!」
「でも、人を好きになるってすごいね!」
「え?」
「刀念さまは悪い事に使っちゃったけど…でも、それだけ大きな力があるってことでしょ?
それって素敵だなって思って!」
りんの一言に桜も邪見も言葉を失った。
---------確かに、りんちゃんの言う通りだ。
少女の無邪気な発想に驚きつつ、桜は微笑んだ。
「そうだね。誰かを好きになると、それだけ大きな力が生まれて…それを良い事に使えたら、もっと幸せになれるよね」
「単純じゃのー」
「ふふっ」
柔らかな空気が満ちた。
----------誰かを好きになる、か。
白銀を纏う彼が脳裏に浮かぶ。
慌てて、頭を左右に振った。
--------そりゃ、殺生丸さまには沢山お世話になっているし、強くて優しくて、頼りにしているけれど。
でも私は殺生丸さまの刀で、殺生丸さまもそれを私に望んでいるんだから、浮ついた心でいちゃ駄目だよ……ね?
急に黙り込んだ桜を、邪見とりんはきょとんとして見つめていた。
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