第一章 出会い
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「そのまんまの意味だよ。
そうだな…その刀を左の手のひらにでも突き刺してみろ」
「えっ!?」
刀々斎はあまり殺生丸と目を合わさず、しかも一定の距離を取って、桜に淡々と言った。
しかし、桜の方は余計混乱する。
---------左手に刺すってどういうこと?
普通に痛いじゃん!!
冗談なのかと刀々斎を見つめるが、刀々斎は顔色も変えない。
「早くしろ」
殺生丸の声が響く。
---------そんな睨むような顔で言われたら、やるしかないじゃない…
半ば泣きそうになりながら、しぶしぶと刀を手のひらに突き立てる。
固く目を瞑り、歯を食い縛ると、ぐっと力を入れた。
「───…え?」
ふ、と右手で握ってた感覚が消えた。
痛みも感じない。
恐る恐る目を開けると、自分の右手の中には何もなかった。
「嘘………」
「まさか、この世界に再び現れるとはな…」
独り言のように、刀々斎が呟く。
殺生丸はというと、暫し納得出来ないような顔をしていたが、くるりと背を向けた。
ただ、よほど不機嫌らしく、ピリピリとしたオーラが漂っている。
---------私、今何したの…?
唖然として両手を見つめる桜を置いて、彼が歩を進めようとした時。
「待てよ、殺生丸。興味ねーのか?親父の妖刀、闇桜に」
と、刀々斎が呼び止めた。
「その刀はその女と同化している。
奪えぬ物を奪おうとする程、この殺生丸は愚かでないわ」
殺生丸は足を止めると、振り返らずにそう吐き捨てる。
「じゃあ、容れ物ごと奪えば良い」
刀々斎の言葉に彼の体がピクリと反応した。
「こいつはただの娘ではない。利用価値もあるだろう」
刀々斎は尚も言葉を続けた。
----------刀々斎さんは何を言おうと…………って、
「ちょっと待って下さい!
私は一緒に行きたいなんて……
「おまえもどうせ、この世界の人間ではないんだろ?行く宛もない、違うか?」
う、と桜の勢いは引っ込む。
「な、なら、刀々斎さんと一緒に…!」
---------こんな怖そうな人といるなんて、寿命が縮みまくりだよ!
「わしは人間と暮らせる生活をしとらん。
なに、心配はいらん。命の危険はないだろ………、多分」
「多分って、そんな…」
ふと殺生丸の方を見ると、相変わらず鋭い目付きで私を見ている。
----------やだ…怖い……
でも、行く宛がないのも事実だし……
「一理あるな…こやつには鉄砕牙相応、否、それ以上の威力がある」
ふいに殺生丸が呟いた。
「えっ?」
「女、名は何という」
「……蒼井桜、です」
「着いて来い」
ざあっと風が音を立てる。
目の前で銀色の髪がたなびいている。
そして、自分を射抜く、金色の瞳。
----------綺麗
さっきまでの恐怖を圧倒する、その美しさに思わず見入ってしまう。
------------この人、姿形は人間じゃないけど、よく見たら美形なんだ…
それに、慣れたら、怖くない……?
惚ける頭でそんな事を思ううちに、自然と口が開いた。
「……刀々斎さん、この人に付いていけば生きられるんですよね?」
「死にゃーせんだろ」
「……分かりました」
サク、と殺生丸の方へ歩み寄る。
魅せられた、と言っても良いかもしれない。
でも自分を見つめる鋭い瞳に敵意や悪意は感じなくて。
大丈夫だ、と。
むしろ、着いていけ、と心が囁いたような気がした。
----------私って面食いってやつだったのかな
なんて思いながら。
「よろしくお願いします」
桜は殺生丸の前に立つと、ペコリと頭を下げたのだった。
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