第十二章 由来
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『後は察しがついておろう。
我が気が付いた時には、目の前で闘牙王殿の遣いが血を流して倒れていた。
我の右手に握られた刀は禍々しい光を宿しながら赤く濡れており、我は途方も無いものを生み出してしまったのだと気付き、恐怖に駆られて逃げ出した。
その後は風の噂で、闇桜がもたらした災いと闘牙王殿が滅したという話を聞いただけで、何も知らぬのだ。
……すまない』
桜は息を呑んだ。
--------そんな切ない過去があったなんて…
闇桜は、この人の失恋の哀しさから生まれたんだ……
予想外の話に加え、四魂の玉が闇桜の出生に関係していた事も驚きだった。
----------それもきっと、額の四魂のかけらが外れない理由の一つ。
でもその後四魂の玉は……
「四魂の玉はどうなったんじゃ?」
桜と同じ事を思ったのか、邪見が沈黙を破った。
『我は四魂の玉を使ったわけではなく、邪念の気に当てられただけのようだった。
だが…我が逃げ出した後は分からぬ』
「じゃあ、ここに咲いている桜は?」
桜も続いて、もう一つの疑問を投げかける。
『唯一懐に入れて持ってきていた大桜の一枝を我が妖力で根付かせたのだ。
十六夜の好きだった花だ。
ふ…このような事になっても尚、我は──』
自嘲を含んだ言葉は、最後は小さく萎んで消えた。
再び、重い沈黙が訪れる。
--------でも、やっぱり刀念さんは悪い人じゃなかった。
哀しさが暴走してしまっただけ…
桜は唇を噛み締め、俯く。
その時、殺生丸が踵を返した。
もうこれ以上、この場に用は無いというように。
「あ…」
邪見は慌てて殺生丸の後を追うが、りんと桜は困ったように顔を見合わせる。
『行かれるのか』
「…はい、話して下さって、ありがとうございました」
『娘、桜と言ったか。
我がこの様な事を言うのが道理外れなのは承知だが、どうか、闇桜の闇に呑まれるな。
我が負けてしまった負の心を、乗り越えてほしい』
「……はい」
桜は意を決したように岩壁に向き直り、頭を下げた。
-------闇桜は、望まれて生み出された訳じゃない。
私は負けたくない……この人のためにも。
そして短く別れを告げ、桜とりんも殺生丸の後を追った。
一行を見送る岩壁に揺れる桜の花が穏やかに揺れていた。
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