第十二章 由来
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山の国は、その呼び名の通り、天まで届きそうな山々の連なりが土地のほとんどを占めている。
しかし上空から見ると、どこまでも深い峡谷もまた連なっていた。
「これだけたくさん谷があったら、何処にいるか分からないよね…」
「大丈夫だよ、桜ちゃん!殺生丸さまはとてもお鼻が良いんだから!」
「そっか!!」
「馬鹿もん、匂いを知らぬ輩をどうやって嗅ぎ当てるんじゃ」
「あ……」
三人はそっと前方を飛ぶ殺生丸を伺う。
すると、彼らの心配は杞憂だったというように、殺生丸は高度を下げていった。
「殺生丸さま、見つけたのかな?」
「きっとそうだよ!」
「さすが殺生丸さまじゃ!!!」
「邪見はあんまり信用してなかったくせに」
キーーッと邪見の金切り声が響く。
桜とりんは耳を塞いだ。
---------刀念さん、だっけ…
一体どんな人なんだろう。
峡谷を下るにつれ、霧が立ち込めてくる。
視界が段々と不確かになり、ぎゅ、と目を瞑った。
「ぅ…うわぁ!」
りんの歓声に桜はそっと目を開ける。
そして。
「わぁぁ!」
自身もまた、歓声をあげた。
そこには峡谷の底と思えぬくらい桜の花が咲き乱れていた。
日の光はほとんど差し込まず、薄暗い岩肌に植わった沢山の桜の木が季節外れの花を咲かせている。
---------桜花の郷みたい。
その異世界のような不思議な感覚に圧倒される桜達とは逆に、殺生丸は迷わず何処かを目指して進んでいく。
「ねぇ邪見さま、なんでこの桜は咲いてるのかな?桜花の郷と一緒の桜なのかな?」
「うむぅ…その刀鍛冶とやらが本当に此処に住んでおるのなら、その可能性はあるじゃろうな」
りん達の会話を聞きながら、桜は違和感を抱えた。
----------もっと殺伐とした所に隠れていると思ったのに、闇桜を思い出させる桜がこんなに咲いているなんて…
ふいに殺生丸は歩を止めた。
岩壁の一箇所を見つめ、刀に手をかけている。
桜は慌てて側へ駆け寄った。
「殺生丸さまっ」
「何だ」
「あの、もしかして、この中に…?」
少し声を潜めて尋ねると、殺生丸は小さく頷く。
---------殺生丸さまなら簡単に岩の壁なんて壊しちゃえるのかもしれないけど。
「私が先に行っても良いですか?」
「…好きにしろ」
桜は殺生丸の前に出て岩肌に触れた。
りん、邪見が不思議そうに桜を見つめている。
桜は少し躊躇いを覚えながらも、ゆっくりと口を開いた。
「刀念さん……?私、蒼井桜といいます。
闇桜を持つ者です」
ザワ…と桜の木々が音を立てる。
その不気味さに思わず気が引けそうになるのを堪え、桜は慎重に言葉を紡いでいく。
「刀念さんを責めるつもりは毛頭ありません。
ただ、闇桜について教えて頂けませんか?」
木々の騒めく音が次第に鎮まっていった。
やがて辺りに再び静寂が戻る。
----------力ずくじゃなくても、話せば分かってもらえると思ったんだけど…
やっぱり無理なのかなぁ……
そう諦めかけた時。
『我は生涯人前に現れまいと誓った身……それをご容赦頂きたい。』
くぐもった声が響いた。
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