第十章 白霊山
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森の中、草を掻き分けながら進む琥珀と桜。
寺を出てから、どれくらい経ったのだろう。
----------やっぱり、少し引っかかるなぁ
桜は足元に気を配りながらも、琥珀に感じた違和感について考えていた。
-----------前に殺生丸さまと対峙していた時はもっと…無気力な目をしていた気がするのに………
不思議と今、この少年自身には恐怖が感じられない。
それどころか。
--------あ、また……
ふいに琥珀が桜の方へ手を差し出している。
「滑りやすくなってるから、気を付けて」
「うん…」
こういう風に歩きにくい所は気遣ってくれているのだった。
-----------もしかして奈落に強く操られてる時とそうじゃない時がある……?
「こ、琥珀くん!」
思い切って声をかける。
振り向いたその顔は、あどけなく。
その眼差しはやはり操られているそれでも、敵意や殺意を持ったそれでもない。
--------って、何話したら良いんだろう…
桜はたじろぎながらも、慌てて口を開いた。
「ねえ、何で奈落に従ってるの?」
------------………なんて…
操られてる本人に聞いたって意味ないじゃん………
後悔。
琥珀は一瞬目を見開いたが、再び無表情に戻ると桜から目を逸らすように前を向いた。
「ご、ごめん、変な質問しちゃっ…
「分かんないんだ」
「え?」
もう一度、琥珀は桜へ視線を戻す。
どこか哀しげで切なそうな表情。
「俺にも、分かんないんだ」
桜は、ふと平成の時代にいた頃を思い出した。
親の言うように生きていたあの頃。
自分の意志はなく、ただ敷かれたレールを歩いていた。
------------琥珀くんも、そんな感じなのかな。
奈落に歯向ったら殺されちゃうかもしれないもんね。
「そっか…」
上手い言葉をかけられない自分を恨みながら、桜は口をつぐんだ。
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