第九章 七人隊
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朝の光がきらきらと眩しい。
「うーーーーーんっ」
桜は伸びをしてから起き上がる。
隣ではりんと邪見がまだ寝息を立てていた。
--------------昨晩は寝るの遅くなっちゃったけど一番早起きだ!
邪見にあとで自慢しちゃお~!
くすりと微笑み、そっと寝床を抜ける。
近くに流れていた川の水で顔を洗った。
「気持ちいー!」
まだ薄水色の空を仰ぐ。
今日も良い天気になりそうだ。
その時。
「桜さまぁぁーーーーーー!!!!!」
「…………ん?」
目を細めて、空をじっと見る。
何かがこちらへ向ってくるのだ。
「あれは………鳥?」
見る間にそれは近くまでやって来ると、ポンっと白い煙を立ててその姿を変える。
「あ、あなたは!」
「桜さま!いつになってもお呼びが無い故、自ら来てしまいました!」
茶色のおかっぱ頭に橙色の着物を纏って宙に浮く童女には確かに見覚えがあった。
「こ、小鈴ちゃん」
「ちゃんだなんて、うふふ、桜さまは私の主人なのですから、どうぞ小鈴とお呼び下さいませ!」
つい数日前、桜花の郷を訪ねた際に、桜憐が桜に仕えるようにと図らってくれた精霊である。
-----------たしか、この勾玉に念じるとやって来るとか言ってたような…。
首から下げた桜色の勾玉を見つめていると、にこにこと笑っていた小鈴は思い出したように頬を膨らませた。
「それより桜さま!
どうしてお呼びしてくれなかったのですか!?寂しかったんですよ?」
「えっ、そんなに気軽に呼んで良かったの?」
「良いに決まってます!
もう、変な遠慮はしないでくださいね」
そして、また愛嬌のある笑顔に戻る。
ころころと表情が変わる様は幼子のようだ。
--------でも、りんちゃんと同じでしっかりした子だなぁ。
可愛らしいところもそっくり。
小鈴の髪が頭のてっぺんで寝癖のように跳ねているのを見ながら、桜は目を細めた。
「わかった、これからは何かあったら呼ぶね」
「はい!
……それで、桜さま。
こちらの方面に来ているということは、もしかして白霊山の方へ向かっているのですか?」
「うん。殺生丸さまの知り合いに尋ねながら奈落を追ってるんだけど、どうもこっちの方に来たみたいで…」
-----------今日中に白霊山まで行くって昨晩殺生丸さまが言ってたっけ。
小鈴はその方角をじっと見つめると、それから腕を組んだ。
「なるほど……。
しかし、白霊山は聖なる山。
妖怪の殺生丸さまにはいささか不利ですね」
「そうみたいだね…私が何かの役に立てたら良いんだけど」
「あら、桜さまは人間ですし、闇桜さえ使えれば戦える可能性は十分ありますよ!」
「私闇桜でまともに戦った事無いんだけど…」
「ええっ!…まあ無理もありませんね。
でしたら、まずは『桜の舞』の習得が必要ですね」
「桜の、舞?」
にこりと小鈴は頷き、剣を振るう手振りを交える。
「無数の花弁が刃となって敵を切り刻むと言われています。慣れたらすぐに使いこなせますよ!」
「へぇ~…覚えておくね」
-----------今更ながら、とてもファンタジーだなぁ。
でも少し面白そう…なんて不謹慎かな。
「はい。そして、もう体験済みかとは思いますが、桜様には今のところ結界が働きますので、毒でも槍でも恐れることはないですよ」
「い、今のところ…?」
「はい…」
小鈴は一旦言葉を区切り、少し悩む素振りを見せる。
そして、また口を開いた。
「実は…桜憐さまも先日懸念しておられたのですが、桜さまの結界は闇桜が作り出しているもの。
つまり、闇桜が桜さまを傷つける意思を持っているなら、いつ結界を解かれるか分からないのです」
「でも、私が死んだりしたら闇桜にとっても不都合じゃないの?」
「勿論です。それに、今はその勾玉の首飾りがあるので闇桜の負の力は封じられているので大丈夫だと思います。
ただ、一応心には留めておいて下さい。
そして、万が一、勾玉が身体から離れてしまう事があれば、すぐに私を呼ぶか、桜花の郷へ来てくださいね」
「うん、分かった。ありがとう」
--------あまり一人で無茶はしない方が良さそうだね…。
「何か他に疑問はありませんか?」
「うーん、今のところは大丈夫!」
「ふふ、長い事お話させて頂きましたもんね。では…」
小鈴はちらっと桜の後ろを見やり、小声で言った。
「殺生丸さまと、頑張ってくださいねっ」
「え?!」
「またお呼び下さい!失礼致しまーす!」
小鈴は雀の姿へと変化し、空の彼方へと飛んで行った。
----------頑張ってって、旅をって事だよね…?
意味ありげな物言いを不思議に思いながら、桜は後ろを振り返った。
「あ」
目に飛び込んだ銀色。
朝の光で一層まぶしく見える。
「殺生丸さまっ!」
桜は急いで駆け寄った。
「あの、いつからそこに?」
「あの小妖怪の匂いがしたから来たまでだ」
「あ、なるほど」
「行くぞ」
「はい!」
自然と笑顔になってしまう。
-----------------昨晩の事のせいかな。
昨晩、殺生丸の体を心配して訪ねて行った際の事を思い出してしまう。
それだけで、体が上気してしまいそうだ。
-------------あれも殺生丸さまの気まぐれ…だよね…。
-------でも、殺生丸さまのあの笑顔、忘れらんないよ……。
「っと、それどころじゃないんだった」
桜は慌てて殺生丸の背中を追いかけながら空を見上げる。
青空は相変わらず澄んでいて、穏やかな風が吹いていた。
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