第閑話 笑顔
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「邪見ーーーっ変なキノコー!」
「ばかもーーん!!それは毒キノコじゃろうが!!!」
「桜ちゃん、毎日変なキノコ見つけるね~」
賑やかな声が夕焼け空に響く。
もう日常的になった騒ぎ声を殺生丸は少し離れた所で聞いていた。
桜が来て、ひと月が経つ。
一行は以前より和気藹々とし、活気付いた。
恐らく、りんも人間が増えて嬉しいのだろう。
-----------あやつは、桜は、よく笑う。
邪見にちょっかいを出しては声を立てて笑い、何が無くても静かに微笑んでいる。
自分に話しかけてくる時も、いつも笑みを讃えていて。
-----------人間の思うことは理解できぬ。
しようとも思わぬが、と付け加えて静かに目を閉じた。
「殺生丸さまーー!」
殺生丸の耳がぴくりと反応する。
同時に、ぱたぱたという足音が近付いて来た。
「何だ」
そちらへゆっくり視線をやると、こげ茶色の髪を乱しながら桜が駆けてくる。
そして、殺生丸を見ると、普段と変わらない笑顔を見せた。
「あの、このキノコ、邪見も何だか分からなくて…食べられるか分かりますか?」
そう言って差し出されたのは、白色に薄桃の斑点がついたキノコ。
殺生丸は一瞬眉根を寄せ、ちらりとキノコを見る。
「やめておけ」
「やっぱり駄目ですよね。見た目は可愛いのに残念」
そう言って口を尖らせた桜は、ぱっと表情を変えた。
「殺生丸さまは何も食べなくて大丈夫ですか?色々食料はありますけど」
「人間の食べ物は口に合わん」
「そうですか…じゃあ、いつも何を食べてるんですか?」
「………」
「もし食べたい物があったら、私採りに行きますよ!最近慣れてきたんです」
えへへ、とはにかみながら殺生丸の顔を覗き込む桜。
---------何がおかしい。
そんな風に笑いかけられると、どうしたら良いのか分からなくなる。
----------それが、私の本音か…
西国の王の長男として生まれ、かしずく家来からは畏敬の眼差しを、外部の者からは恐怖や敵対の眼差しを受けることが多かった。
無償の微笑みなど、遠い日の父母の顔に見たか否か。
「殺生丸さま?」
桜の声に、はっとする。
桜は心配そうな顔で首を傾げていた。
「構わぬ。行け」
「は、はい。……具合悪かったりしたら、言ってくださいね?」
そして、小さく会釈すると、桜はりんや邪見の元へ戻っていった。
----------この殺生丸が、人間の小娘ごときに惑わされるなど…
小さく舌打ちする。
空には一番星が輝いていた。
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