第八章 桜花の郷
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集落を進んでいった先の神社へと桜憐は向かった。
集落の中にも桜並木が途切れる事はなかったが、その神社は遠くから見ると桜の森に見える程、桜の木々に囲まれている。
一行は本殿の座敷へと通された。
桜の舞いは絶える事がなくて、幻想的な世界である。
りんと桜はひたすら辺りを見渡し、きょろきょろするなと邪見に喝を入れられた。
--------珊瑚ちゃんの言ってた通り、すごく清らかな場所…
それに、と正面に座る桜憐を見る。
---------桜憐さんも殺生丸さまに勝るくらい美しいし……
無駄がない流れる様な仕草と端正な顔立ちに彼女の品格が表れている。
しばし風のそよぐ音だけが場を満たしていたが、桜憐が透き通るような声で話を始めた。
「この地には古くから妖木の桜が存在します。
此処に生きる全ての、私達も含む生命は皆、その木から生まれ、桜を守って生きてきました」
「木から、ですか?」
「はい。私達は一種の精霊のようなもの。
しかし、妖木の力を授かった妖怪なのです」
「つまり、ここの桜も妖木であるから枯れないのじゃな?」
邪見がここぞとばかりに誇らしげだ。
他方、りんはきょとんとしていて大人しい。
「その通りです。そして、闇桜は全ての源の妖木、大桜(おおざくら)の妖力を打ち込んだ刀でございます」
----------闇桜…!
話が核心に触れ、思わず緊張が走る。
「大桜をご覧になりますか?」
「え、いいんですか…?」
「勿論」
桜憐は立ち上がり、背にしていた壁に正対し、壁にトン、と触れた。
ギギギ───…
木が軋む音が響き、壁がシャッターのように上へ上がって行く。
ザワッ────
「わ」「きゃっ」「ぬおっ」
吃驚三拍子。
正面からの突風に殺生丸も眉間に皺を寄せた。
固く瞑った目をゆっくり開けると、薄桃色が平がる。
「これ…一本の桜の木…?」
桜は目を丸くした。
なぜなら、目の前にあるのが、幹は通常の物の十倍、枝と花の数は百倍にも及ぶ程の巨大な桜。
その木を取り囲むように普通の桜も咲いているのだが、規模の違いが一目瞭然である。
「左様、この木こそ大桜でございます」
「すごい…」
りんも思わず声をあげた。
桜憐はにこりと笑う。
「昔話を致しましょう」
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