第八章 桜花の郷
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「わぁ…っ綺麗…!」
辺りは薄桃色に染まり、穏やかな風に花弁が舞っている。
春はすっかり過ぎているというのに、満開の桜がそこでは咲き誇っていた。
「すごーい!桜色の絨毯みたい!」
「こりゃ、りん!騒ぐでない!殺生丸さまの恥じゃ!」
邪見とりんが跳ね回っている。
-------邪見も十分騒いでるじゃん
桜はくすりと笑った。
当の殺生丸はというと、いつもの無表情を桜並木に向けながら、桜らの後ろで歩を進めていた。
どうしてこうも似合ってしまうのだろう、というくらい桜景色に殺生丸の姿はよく溶け込んでいる。
-------あ、殺生丸さま、まつげ長い
思わず見とれてしまう。
--------なんて、そんな場合じゃないよね
苦笑しつつ顔を背けた。
「なんだ」
もう聞き慣れた低い声にもう一度振り向く。
真っすぐな視線に「なんでもありませんよ~」と笑い返し、殺生丸の隣に並んだ。
殺生丸は訝しげに眉を潜めたが、ついと顔を逸らす。
桜も桜の木々を見上げながら、口を開いた。
「本当に噂通り綺麗な場所ですね、桜花の郷って」
この日、一行は一年中枯れない桜の咲く場所、桜花の郷へ辿り着いていた。
-----------やっと今日、闇桜の事が少しでも分かるかもしれない
そう思うと自然に拳を握る力が強くなる。
--------これ以上殺生丸さまの足を引っ張らないようにしなきゃ…
そっと横を見上げるが、彼の端正な横顔は相変わらずの無表情だった。
ふいに隣の殺生丸の足が止まる。
正面を見つめる殺生丸の視線の先に、桜吹雪にまぎれながら一つの人影があった。
「ようこそ、おいでくださいました」
その頭のかんざしに付いている桜と同じ色の、薄桃色の長い髪が静かにそよいでいる。
小さな花を幾千にもあしらった、朱色基調の重ね着された着物。
切れ長の目尻は垂れ、口元は穏やかな笑みをたたえている。
桜色の髪だけが、彼女を人離れさせたものにしていた。
「桜憐(おうれん)と申します。刀々斎様からお話は伺っておりました」
そして彼女はその身を翻す。
先ほどまで騒いでいたりんと邪見も息を飲んで、彼女に魅入っていた。
----------妖怪って思えないくらい綺麗な人だな…
「どうぞ、こちらへ」
ざわ、と風が吹く。
桜は思わず感嘆の声を上げる。
桜吹雪をまとって現れたのは田畑や花畑に囲まれた集落。
桜憐はその中へ進んでいった。
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