第七章 二つの世界
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翌朝。
まだ街が静かな時間に、桜は自宅の前に立っていた。
昨日かごめと練った“作戦”。
--------久々の我が家なのに、緊張するなぁ…
桜は二階建ての我が家を見上げ、ゆっくりとインターホンを押した。
ピンポーン
しばらく間を空けて、「はい」と女の人の声が聞こえた。
-----------お母さん…
「わ、私…」
「桜!?」
ドタドタと慌ただしい足音が聞こえ、荒々しい音と共に玄関が開いた。
「お母さん…」
「桜!!」
母はすぐさま桜に駆け寄ると、娘の体をしっかりと抱きしめた。
「どこへ行ってたの!心配したんだから!!」
「──っ、ごめんなさい!」
桜も母の背中に手を回す。
心なしか以前より一回り小さくなった気がする。
それに、その顔もだいぶやつれていて顔色も悪い。
--------こんなになるまで心配してくれたんだ…
「お母さん…っ」
-----------また心配かける私を許して……
「あのね、信じられないかもしれないけど、私戦国時代でやらなきゃいけないことがあるんだ」
「桜…?」
母は桜の体を離し、訝しげに顔を覗き込む。
「私は元気でやってるから、警察の人とかの捜索も終わりにしてあげて?」
「待って、何を言ってるのか、全然分からないわ」
「これからもう一回タイムスリップしなきゃいけないの」
「桜!」
「…信じてもらえなくて当然だと思う」
「そんなに勉強が嫌だったなら、もう無理はさせないから…
もう私の前からいなくならないで……どれだけ心配したか……」
ズキン、と胸が痛んだ。
「さあ、お父さんもとてもとても心配してたのよ……入りましょう?」
-----------お父さん…お母さん……
-----------でも、
-----------------殺生丸さまが、りんちゃんと邪見が待ってるの。
「ごめんなさい」
「桜?」
「ごめんなさい、お母さん」
一歩、桜は後ろに下がる。
「絶対また帰って来るから……ごめんなさいっ」
そして、桜は駆け出した。
「桜!!!」
悲鳴に近い声が背中に聞こえる。
歯を噛み締め、角を曲がると、そこには犬夜叉がいた。
全て作戦通りだ。
「終わったのか?」
こくりと頷くと犬夜叉の背中に乗った。
そして犬夜叉は地を蹴り、舞い上がる。
「桜ーーーっ!!」
遠くから聞こえる声から逃れるように、桜は犬夜叉の背中に顔をうずめた。
犬夜叉は何も言わずに屋根を越えていく。
----------お母さん、ごめんなさい、また心配かけちゃうね。
ポストに入れといた手紙、読んでくれるかな。
絶対に、また帰って来るから────
いつの間にか、目から大粒の涙が溢れていた。
朝焼けに微かな泣き声が溶け込んでいった。
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