第七章 二つの世界
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ざわざわと大木が葉を揺らしている。
だけど、石畳の床や空を走る電線、少し遠くから聞こえるエンジン音。
全て、懐かしく思える。
だが、一ヶ月前には当たり前のように過ごしていた世界だ。
----------十五分前は戦国時代にいたのに。
最初はかごめの誘いも躊躇った桜だったが、周りの後押しや、やはり親も心配してるだろうと着いて行くことにしたのだった。
そして村はずれにある古井戸に飛び込んでみると、眩しい光に包まれて、気付くとそこはかごめの家の神社にある祠の井戸の底で。
驚きと、平成の世に帰れた感動で桜は何も言葉にできなかった。
「ただいまーっ」
まるで学校から帰って来たかのように、かごめはガラガラと引き戸を開け、家の中へ入る。
お邪魔します、と桜はそれにならった。
「お帰りなさい、かごめ。…あら、お客さん?」
奥から髪の短い女の人が出て来る。
かごめの母親だろう。
「去年の卒業生の桜先輩。
理由は後で説明するから、とりあえず今日泊まらせてあげてほしいの」
「構わないわよ。ゆっくりしていってね、桜ちゃん」
「お、お世話になりますっ」
まさかの二つ返事に面食らい、桜は慌てて頭を下げた。
--------なんか…おおらかで優しそうなお母さんだな…
ふと自分の母親のきりっとして、整った顔が思い出された。
------------お母さんは、ここから歩いていける所にいるんだ……
そんな事を考えているうちに、かごめの部屋に通される。
今時の普通の女の子のように、きちんと整理されて、可愛げのある部屋だ。
とても戦国時代でいくつもの修羅場をくぐっている子のものとは思えない。
「すいません、散らかってますが…」
「全然!私の部屋はもっとひどいよ!?」
「本当ですか?意外です!」
「私、性根がぐーたらだから」
あははっと笑い合う。
----------久々だなぁ、こんなやり取り…
「かごめー?お風呂のお湯沸いたわよー!」
「はーい!桜先輩、お先にどうぞ」
「私が後でいいよ?」
「遠慮しないでください~。あ、服お貸しします!
下着は新品のが………先輩私より大きそうですね……」
「ちょっっっどこ見てるの!?」
「D…
「ストップストップ!!!!かごめちゃんと一緒でおっけーだから!!!!」
赤面した桜は奪うようにかごめから服を借りると、風呂へ逃げ込んだのだった。
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「はぁぁ~生き返るっ!」
白い湯気に包まれ、桜は自然とそう呟く。
湯船に浸かりながら、ぱしゃっとお湯を顔にかけ、天井を見上げた。
-------本当に、平成の世界なんだなぁ…
「りんちゃん達、どうしてるだろ」
----------私が気を失っている間に傷つけたりしてないといいんだけど…
そういえば、と桜は自分の額に手を当てる。
奈落によってここに埋め込まれた「四魂のかけら」とやらは、結局取れなかった。
楓の推測では、闇桜の負の力と四魂のかけらの邪気が強く結びついたのではないかという事だ。
又、私が戦国時代に来たのも、もしかしたら四魂の玉を闇桜が求めたのかもしれぬ、とも。
----------これのせいで、私の負の力も増してしまう、とも言ってたなぁ…
「とにかく、今家に戻る事はできないよね…ちゃんと、全部解決しなきゃ」
両親の顔が脳裏をかすめる。
「…今は…戦国にいるべきなんだ…」
ぶくぶくと桜は湯の中に顔を沈めた。
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