第五章 拉致
夢小説設定
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それから一刻ほど後、白い煙の中できゃっきゃという声が響いていた。
「あーーっいい湯加減っ」
「気持ちいいね~」
「邪見覗かないでよー!」
「やかましい!全くなんでわしが見張りなんか……」
ぶつぶつ言う邪見を尻目に桜とりんは温泉を堪能していた。
「りんちゃん、いつもお風呂とか入らないの?」
「ん?お風呂??りんはたまに川とかで体洗うくらい!
でも温泉は本当に久しぶりだよ!」
「へぇ~」
「このお湯、白くておもしろいねぇ」
「ふふっかわいいなぁ」
桜は微笑み、手でお湯をすくって遊ぶりんを眺める。
まだ七歳か八歳程だというのにしっかりしていて、桜の方が感心してしまうこともあるのだが、こういうところを見ればまだ幼さが残る。
ただ、桜には一つ気がかりな事があった。
それは今朝の事。
目を覚ました桜が隣を見ると、いつもは先に起きているりんが、桜に背中を向けて身を縮めている。
「りんちゃん?」
桜が声をかけ、覗き込むと、りんの目には涙は浮かび、必死に手で拭っていたのである。
「どうしたの!大丈夫?!」
「あ、あはは、桜ちゃん、おはよう!」
りんはぐいと腕で涙を拭くと無理矢理笑ってみせたのだった。
---------あの時のりんちゃん、本当に辛そうだった。
いつもは笑ってるけど、昔辛い事とかあったのかな……
りんを見て、そのあどけなさがいじらしく思う。
桜は「りんちゃんっ」とりんに抱きついた。
「桜ちゃん!?」
「りんちゃんーーっ何かあったら言うんだぞーーー」
ぎゅーっと抱きしめながら、桜は言った。
りんは少し驚いた顔をし、えへへ、と笑いながら、頷く。
「ありがと、桜ちゃん」
桜は優しくりんの頭を撫でた。
「りんね、おとうやおっかあやお兄ちゃんたち、みんな、野党に襲われた時にね…殺されちゃったの。
今朝その時のこと夢に見ちゃってさぁ………まいっちゃうよねぇ………」
「……そうだったんだ………」
桜は俯きがちに話すりんをもう一度抱きしめる。
---------そんな辛い過去があったんだね…
だが、りんはもう一度ぱっと顔を上げ、にっこりと笑った。
「でもね!殺生丸さまに助けてもらって、桜ちゃんに会えて、りん幸せだよ!
りん、お姉ちゃんはいなかったから、桜ちゃんが来て、本当のお姉ちゃんみたいってよく思うんだ!」
「りんちゃん……私もっ!りんちゃんが本当の妹みたいに思うよ」
「えへへ嬉しいなあ」
-------この笑顔を守ってあげたいな
共に笑い合いながら桜は胸の内でそう思うのだった。
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