第四章 決意
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桜はスタスタと前を歩く殺生丸に小走りで着いて行く。
少し後ろめたく思いながら。
--------桜花の郷へ向かうとしたら、殺生丸さまの旅路を邪魔することになるんだよね……
でも、向かわなかったら、私は闇桜で闘えない。
本当に申し訳ないなぁ。
しゅんとしながら山道を降る。
「桜」
突然、桜の名を呼ぶ殺生丸の声が響いた。
「は、はい」
「何も考えるな。貴様は私の刀だと言ったはずだ」
「……はい」
「貴様のその刀は利用する価値がある」
「はい」
「全てはこの殺生丸の強さのためだ。だが、貴様には別の道もある」
「……!」
--------別の、道。
そうだ、自分の本来生きるべき所はこの世界ではないのだ。
生きる事に精一杯で忘れかけていたが、本来は元の世界に戻る事を真剣に探すべきなのだろう。
以前邪見とりんから聞いた、私と同じ平成の世から来た巫女とやらに会えば、なんらかの方法があるかもしれない。
「貴様が里に帰る方法なら検討はついている」
「!!」
-----------確かに、殺生丸さまはもう一人のこの世界にやってきた女の子を知っているなら、その方法を知っててもおかしくないよね…
でも…
私はこのまま帰っていいの?
ぐるぐると何かが頭の中を巡る。
知ってしまった。
今まで知らなかった自分の事。
それは辛い事もあるけれど…
「知りたいんです」
口をついて出た言葉。
殺生丸は静かに桜を見つめる。
「私、ここに来るまで、周りの言う通りにしてきました。
自分の意志とか、あんまりなくて…
正直、今も何で私がって想いもあります。
闇桜って何というか、すごく、嫌な刀ですし、他の命を殺すって罪悪感しか感じないし…
私の意思で動かせる事は、この世界にも少ないのかもしれない。
でも………」
そこで桜は口をつぐみ、俯いた。
そしてすぐに顔を上げる。
「元の世界に戻る事を諦める訳じゃありません。
ただ、知りたいんです、自分の事。
何もわからないまま、帰ることは出来ません。
そして、それが誰かの救いになるとしたら、そうなりたい…
それが今の私の意思です。
だから、今は、その…ご迷惑ばかりかけてしまってますが…
今しばらくはお供させてもらえませんか」
-----------これが、私の今の本当の気持ち。私の意志。
それが殺生丸さまのために働くということでも、きっとそれは私が望んでいること。
沈黙の中、桜の真っすぐな瞳を写し出す金色の瞳はゆっくりと閉じられ、そして殺生丸の低く凛とした声が紡ぎ出された。
「貴様は私の刀だ」
そして踵を返す殺生丸の背中を見て、その言わんとしている事を桜は汲み取った。
------------着いて行って良いんだ。
私を生かしてくれている恩人でもある殺生丸さまのために闘うことが、私のここでの存在意義。
……馬鹿だな。もう忘れてた。
あの星の綺麗な夜に、教えてもらっていたのに。
「私、もう迷いません!…頑張りますっ」
言葉にしたのは、その決意はより固くなる気がしたから。
---------そして、殺生丸さまと、もっと近付きたいな…なんてね。
小さな望みを胸に、桜は再び歩み始めた。
「殺生丸さまっ!早く行かなきゃ、りんちゃん達が待ってますよ!」
そう微笑んで、桜は弾むように殺生丸の前を歩く。
殺生丸は僅かに目を細め、静かに足を進めるのだった。
---------私は、もう迷わない。
爽やかな風が二人の間を吹き抜けた。
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