第三章 闇
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--------------私はどうなったの?
暗い意識の中で、桜は自問する。
立っているのか、寝ているのかすら、よく分からないのだ。
しかも、先程感じた複雑で不快極まりない感情は、今は収まっているものの、まだ心の奥底でとぐろを巻いているような気がした。
---------すごく…胸が苦しい………
『そうだろう。私を使ったのだから』
-----------------!!この声…!
『そうだ。お前をこの時代へ導いた私だ』
--------誰なの?何でこんな事するの?!
桜は声を張り上げる。
それに対して、静かな“声”が響いた。
『私は闇桜。暗黒の闇を纏う、漆黒の剣。
何故かと尋ねたな。
それは桜、貴様が私の宿り主であり、貴様が闇を抱いたからだ。
貴様が溜め込んだ闇が私に力を与えたのだ』
え?、と戸惑う桜に構わず、闇桜と名乗った声は続けていく。
『貴様は今さっき、罪なき鬼を殺した。
そして、命の恩人、殺生丸にまで刀を向けた』
-------------------え?
一瞬、
桜の体中を戦慄が駆け巡った。
------っ私、そんな事してない!
『貴様の心の闇が私にそうさせたのだ。
貴様は意識を失ったようだがな』
桜はすぐにその言葉の意味を理解できなかった。
-------------どういうこと……
『貴様はあそこに住む、罪なき鬼を刀の練習台にしようとした。
しかし、手も足も出なかった貴様のために貸してやったのだ』
---------じゃあ、何で…殺生丸さままで………
そう問う声は弱々しく、震えている。
『闘いの最中、憎いと思っただろう。
自分を見放して、高見の見物をする奴を』
-------------……思ってないっ……
桜の頬に雫が伝う。
やがて、ぽろぽろと涙を落としながら、何も無い前を睨むことしか出来なくなった。
それは人の闇に入り込んでくるような、弱いところを刀で突き刺して抉るような、そんな物言いの所為。
認めたくない事実を、隠しておきたい想いを。
闇が隠してくれないから。
-------------------------だって。
これまでに垣間見た優しい殺生丸さまに助けてもらえると期待している自分がいたから。
近付いたのに、急に遠くに突き放された様でショックだったから。
あの時、逃げ惑う中、涙で視界がぼやける中………
『全て、貴様自身の想いなのだ』
------………っ、でもっ!
私がこの世界で生きるために必要な方なんだよ!?
殺生丸さまに刃を向けるなんて、本当の望みじゃない!!!
『私は貴様の心に従順に働く。
心の闇を滋養にして貴様に手を貸す。
私は誤魔化せない。
私は常に貴様の闇に従順なのだから』
-----------違うっっ!!!!
桜は、叫んだ。
涙は止まることを知らなかった。
『本当は分かっているのだろう?』
悲痛な泣き声が闇桜の囁きを掻き消すように響く。
-------違う………
最後の抵抗も空虚に消え、桜の意識は朦朧と途絶えていくのだった。
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