第三章 闇
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ほんの十分程歩くと、先ほどの林を抜け、切り立った岩場に辿り着いた。
「闇桜を抜け」
そう言う殺生丸の表情は厳しく。
桜は自分の予想が当たっていたことを察した。
-------何かあった時の練習って事かな。
震える足を叱咤して、桜は歯を食いしばった。
桜が闇桜を抜くのを見ると、殺生丸も闘鬼刃を抜く。
桜はその刀をちらりと見て、殺生丸の二本の刀のことを思い出した。
一本は父親の形見、癒やしの天生牙。
しかし、この刀はこの世の物を切ることが出来ない。
だから、鉄砕牙を噛み砕いた鬼の牙で打った闘鬼刃で闘うのだと。
------------って、集中しなきゃ!
何をするかはわからないけど…
ここは戦国時代。平和な剣道の試合とは訳が違うはず!
今にも逃げ出したい恐怖をこらえるように、強い視線で前方を見据える。
「来る」
殺生丸が言葉を放った刹那。
ゴゴゴゴゴゴゴ…………
地の底から何かが崩れるような音が響き渡る。
「きゃっ!!!」
桜が悲鳴を上げたのも無理はない。
彼女らの目の前には、桜の身体の何倍も高く、何十倍もごつい鬼がいたのだから。
その数は三匹。
三匹とも顔や体格は同じようなものだが、体の色が違う。
黒みのかかった赤、青、緑といった感じだ。
「せ…殺生丸さま………」
---------いくらなんでも、こいつらと戦うなんてことは…
恐怖に引きつった顔で殺生丸を見るも、殺生丸は鬼から顔を背けない。
『なんだ、貴様ら』
赤い鬼が言った。
『此処は我らの地……勝手に立ち入ることなど、許さぬ』
続いて青鬼。
『そのような刀で我らに刃向かおうとも、無駄なことだ……そこの旨そうな人間だけ置いて、帰ることだな』
「ひっ………」
ぎろりと大きな目玉を桜に向ける。
桜は闇桜を構えることも出来ず、右往左往するしかない。
----------何で黙ってるの、殺生丸さま!
「………」
チャキ…
その時、黙っていた殺生丸は闘鬼刃を鞘に収めた。
「殺生丸さま?!」
「桜、お前がやれ」
「えぇっ?!」
『な、舐めた真似を!』
『我ら鬼が人間の小娘に劣るというのか!!』
『一瞬で切り裂いてやるわ!』
「ち、違いますっ!殺生ま………きゃああっ」
ドォォォン
桜のすぐ横に、赤い鬼の大きな手が降ってくる。
すぐさま、青、緑、再び赤と振り下ろされる。
砂埃が舞う中、桜は叫び、半泣きになりながら逃げ惑う。
------------どういうこと?!
初めてなのに、こんなの敵うはずない!!
殺生丸はというと、少し離れた所で宙に浮いている。
逃げるしか術を持たない桜は岩場を駆け回る。
何度か体ぎりぎりの所へ拳が振り下ろされては、身が震え上がる。
---------さすがに無理だって!
また、すぐ背後の岩が砕かれた。
恐怖のあまり、涙がはらはらと落ちる。
そして、胸の中にあった恐怖が段々と怒りや悲しみも入り混じり、複雑な感情へと変わっていく。
--------------やっぱり誰も助けてくれないんだ。私一人なんだ。
こんな人外なものと闘える訳ないじゃない。
もう嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……
----------------こんなの、私が望んだ事じゃないのに!!!
遠くで見ていた殺生丸はピクリと鼻を動かした。
-------風の匂いが変わった…
腰の闘鬼刃に手を掛けたとき。
ドシュッ
鈍い音が響く。
すぐにビチャッという音と共に、鬼が一匹倒れる音が轟いた。
見ると、青い鬼が青い血を吹きながら倒れている。
そして、桜を見つけ、殺生丸は目を見開く。
そこには闇桜を構える姿。
その表情は暗く、目に光は宿っていない。
だが、その頬は涙で濡れていた。
--------------何が起こっている?
『き、貴様ぁぁぁぁぁ』
桜は怒り狂う鬼を続けて切り捨てる。
そして。
殺生丸の方を向き、刀を構えた。
殺意が殺生丸を刺すように空気を伝わる。
-------------己を失っているのか。
殺生丸が刀を抜く。
しかし、同時に桜の体は崩れ落ちるのだった。
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