第二章 存在意義
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はしゃいでいた桜も落ち着いた頃。
「あ」
桜は何か思い出したように声を漏らした。
「あの、さっき言ってた、闇桜って何なの?」
後ろに乗っている邪見に問う。
次々と現れる異世界の住人や、初めての空の旅に圧倒されていた桜は、ついその事を忘れていたのだ。
そもそも闇桜という刀がなければ、りんや邪見は勿論、殺生丸とすら出会えていなかったはずだ。
今頃山道を彷徨っていたかもしれない。
---------とりあえず、この世界の事を知ることから始めないと…
殺生丸に尋ねる方が最善だとは思ったが、彼は阿吽の少し前を飛んでいる上に、何となく取っ付きづらい。
だから、先程知っているような雰囲気だった邪見に聞くことにしたのだった。
「おぬし、知らずに持ってたのか?!」
「えっと、邪け…
----------殺生丸さまは「さま」って付けた方が良さげだけど、こいつは良いかな?小さいし……
邪見は知ってるんだよね?」
「こりゃ!何か失礼な事を考えたな!!」
「…いえ、別に」
「………まぁ良い!
闇桜というのは、殺生丸さまの父君殿が作ろうとなさった妖刀じゃ」
「作ろうと、した?」
りんも熱心に話を聞いている。
殺生丸は相変わらず、少し前を飛んでいた。
「その刀鍛治が途中で血迷うてな。
とんでもない邪悪な妖刀に仕上がってしまったのじゃ。
だから、親方様はその刀をこの世から抹殺したはず…」
「へぇ…」
------------で、私と一緒にこの世界に戻ってきたってことか。
戦国時代にタイムスリップなんて、ファンタジーだなぁ…
「でも、桜ちゃんは元の世界に戻りたいんだよね?」
黙ってたりんが口を開いた。
「え?」
「戻りたくないのか?」
「あ、うん……戻りたいよ?」
「桜ちゃんはお母さん達がいないの?」
「えっ?!いる、いるよ?!」
「じゃあ、何であまり帰りたそうじゃないの?」
「うそ!そういう風に見える!?」
「んんーちょっとだけ…」
----------んー…確かに心配してるだろうけど、帰ったら怒られそうだしなぁ。制服かなり汚れてるし。
それに、帰っても、また単調な日々に戻るだけ。
-------私、ちょっとだけこの世界に逃げられて、安心してる…?
桜が黙り込んでしまい、りんと邪見は顔を見合わせるのだった。
そうこうするうちに、阿吽が高度を落としていく。
そして降り立った所は、小高い丘だった。
てっぺんには木が立っていて、草原が周りを囲んでいる。
この世界に来た時には頭上にあった太陽が、西の地平線に沈もうとしているのが見えた。
先に降り立った殺生丸はちらりとこちらに顔を向けると、背を向けて木の元へ歩んで行く。
「…えっと?」
状況を読み込めない桜をりんがすかさずフォローしてくれた。
「桜ちゃん、今日はここで休むんだって!」
「あ、なるほど」
--------確かに、妖怪2人も連れて、人間の宿にっていうのは無理か。
そう納得してると、りんが邪見の方を向いて口を開いた。
「邪見さま、今日は採りに行かなくて良いよねぇ?もう暗くなりそうだし…」
「む、そうじゃな」
「採りに行く?」
「桜ちゃんは元の世界で、食べ物を採りに行ったり、薪で火を起こしたりしないの?」
全力で首を横に降る桜。
キャンプでやったことはあっても、それが日常ではない。
「使えん奴じゃのー」と呆れる邪見。
りんはそんな事言っちゃ駄目だよ、邪見さま!と頬を膨らまし、
「じゃ、これから覚えて行こうっ」
と、桜に微笑んだ。
----------そっか、此処では自給自足なんだ。
生活の違いとか、何か色々大変な日々になりそうだな……
阿吽に乗せている荷物を取りに背を向けたりんの後ろで、桜は小さくため息をついた。
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