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第3章 町の花はフクジュソウ
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足音を殺してたどり着いたfirst nameさんの部屋は、あの日と同じように明るくて、居心地が良さそうで、静かだった。
俺は戸口に敷いてあるマットの手前で音を立てないように靴を脱ぎ、【クレイジー・ダイヤモンド】の後ろについて、忍び足でfirst nameさんをベッドまで運んでいった。
まっ白なシーツと枕の上にfirst nameさんのからだをそっと横たえると、俺は薄い上掛けをその上にかけ、だらりとたれさがっていたfirst nameさんの両腕をその上に気を付けてのせた。
見ると、first nameさんの手と指は無数の細かいかき傷だらけで、ところどころ血がにじむほどガサガサでひどく荒れていた。きっとこの4日間に花のトゲや葉で何度もひっかいたのだろう。
すかさず【クレイジー・ダイヤモンド】でなおしたfirst nameさんの両の手と指が、また、もとのようにつるりと白く、綺麗になったのを見届けてから、俺は満足して体を起こし、すやすやと眠り続けているfirst nameさんの寝顔を見下ろした。白いシーツと枕の上で、つやつやした髪の毛にかこまれて、その面差しはどこか近寄りがたく、不思議なくらい子供っぽく見えた。
「first nameさん、じゃあ、俺たち帰りますから、ゆっくり休んで下さいね。・・・お疲れ様でした」
そう小声でささやきかけて、さあ、いよいよ帰ろう。と踵をかえしかけたちょうどその時。
俺は、first nameさんの長いまつ毛に縁どられた瞳が俺に向かってゆっくりひらくのを見た。
「・・・・・・ちゃん」
まだ、半分夢見心地でぼんやりしたような、トロンとした目つきでfirst nameさんは俺に笑いかけ、ピンク色のくちびるをかすかに動かして小さな声でなにかをつぶやいた。
そして、また、ゆっくりと目を閉じて、安心しきった子猫のように幼い、あどけない表情を浮かべて、再び眠りの世界に戻って行った。
・・・first nameさんの体からすっかり力が抜けて、完全に寝入ってしまったころ、俺はそろそろとfirst nameさんの部屋を出て、後ろ手にドアをそっと閉めた。
そして、また、音を立てないように靴をはき、熱くなっている頬を片腕で覆いながらバックヤードにつながる階段をおりていった。
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