(※全小説共通です)
第2章 花束を君に
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康一のスタンド【エコーズact1】で、杉本鈴美の眠っている墓は空から簡単に見つけることが出来た。
盆の初日に露伴が買っていったピンクの花束は、連日の暑さのなかでもしおれることなく、しゃんと背筋を伸ばしたまま、元気に太陽に向かって咲いていたからだ。
俺たちはそのへんから勝手に拝借した木桶に水道から汲んだ水をため、その中にfirst nameさんが作ってくれたミモザとカトレアの花束を活けて、杉本家の墓石の前に寄せて置いた。(こういう花の供え方は本来の墓参りのルールに反しているのかもしれないし、だから、このミモザとカトレアにしたって、今日明日中には片付けられてしまうかもしれないが、かまわない――――――俺たちにはそうしたいだけの理由があったんだ。)そして、first nameさんがおまけにつけてくれた『送り火・迎え火セット』の箱を開け、あーでもない、こーでもないと言いあいながら、中に入っていた松の根を、セットの素焼きの皿にのせて火をつけた。
松の根が端からじりじりと燃えだして白い筋状の煙をあげはじめたころ、俺たちは全員で手をあわせ、しばらく無言の時を過ごした。風はなく、空気はぬるく、静かだった。
少し経ってから立ちあがると、あちこちの墓で同様に送り火が焚かれ、細い煙がいく筋も、空にのぼっていくのが見えた。
杉本鈴美の魂も、重ちーや辻彩の魂も、俺のじいちゃんも、ばあちゃんも・・・みんな今日までこの杜王町に、俺たちの様子を見るために帰ってきてくれていたのだろうか?
そして盆の最終日にあたる今日、送り火の煙に乗って、空のむこう、魂のふるさとに帰って行こうとしているのだろうか。
ちょうど杉本鈴美が犬のアーノルドと一緒に、天上の世界に旅立って行くのを見送ったあの日のように。
そんな光景を想像した。
康一と由花子も、億泰も、俺と同じような気持ちだったはずだ。
(花束を君に贈ろう)
(愛おしい人 愛おしい人)
(どんな言葉並べても 君を讃えるには足りないから)
(今日は贈ろう 涙色の花束を君に)
(君に)
(君に)
(君に・・・)