(※全小説共通です)
第2章 花束を君に
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時刻が16時半をまわるころ、墓参客の数はぐっと少なくなり、バケツの中はぬるくなった水とほんの少しの花束を残すばかりとなる。
first nameさんが手ぶらでポーチの階段をおりてくるのが見えたら花の補充はこれで終わり。ぼくらは片付けをはじめる。
17時、霊園が閉門した後にみんなでお店の中に戻ると、first nameさんは1万円札をぜんぶで4枚、レジから丁寧にかぞえて出し、1枚ずつきちんと紙の封筒に入れて、ぼくたちそれぞれに手渡してくれた。
「ありがとうございます!」first nameさんは言った。「みんなのおかげで、第一日目が無事に終わりました!」
「ありがとうございます!お疲れ様です!」と、ぼくも言った。「初日から結構にぎわいましたよね!」
「そうですね!花束もたくさん売れたし、他のものもついでにちょこちょこ売れました!」と、first nameさんは満足気だ。「つい最近仕入れてポーチに置いてたユーカリの木も売れちゃいました。あとで宅急便の集荷を頼まなくっちゃ♪」
「あの・・・first nameさん、他のものって・・・」と、由花子さんがおずおずと声をかけた。「たとえばそのブリキのジョウロも、もしかして、売り物ですか?」
「あ、はい、そうですよ!」と、first nameさん。「そこの棚では、古道具も少し並べて売っているんです。花瓶として使えそうな容器とか、あとは、ガーデニング用品とかも」
「そうなんですね・・・すごく可愛いな~と思って、朝からずっと気になってました!実は、あたし、いつか自分のかっ・・・かっ・・・家庭を持ったら、玄関の横に小さい花壇を作って、そこにこういう、ちょっとサビてる可愛いジョウロを置くのが夢なんです・・・キャ――――♡」元の塗料がはげて形も少しべこべこになり、端っこのほうもサビてきているジョウロとぼくを、チラッチラッと交互に見ながら、由花子さんは顔を赤らめている。
(可愛い?ちょっとサビてるジョウロが可愛い・・・???)
不思議に思いながら見上げると、仗助君は(俺にもわからん)という顔をしている。
億泰くんは「ケッ!」と言いながらあさっての方を向いていたが、ふと、レジカウンターの奥の壁に飾られた1枚の写真に目を留めた。
「first nameさん、これってどなたスか?随分、古い写真っスね」
「あっ、これは私の祖父母です!」first nameさんはニコニコしながら言った。「2人が結婚してここで開店した時のだから、1939年の写真ですね」
「ええっっ!!」
「なんですって!!」
「1939年ンンンン!!!」
ぼくたちは口々に叫びながら、その写真のまわりに集まった。
ちいさな木製のフレームのなか、モノクロの色もあせてセピアになった今から60年前の世界に、2人の人物が立っていた。
1人はやや大柄で背が高く、髪の毛がくるくるとカールしている笑顔の外国人女性。もう1人は隣の女性よりもすこし小柄で、細身の優しそうな日本人男性だった。この2人がfirst nameさんのおばあさんと、おじいさんにあたる人たちなのだろう。
大柄な白人女性と小柄な日本人男性、一見ミスマッチっぽい組み合わせの2人だけれど、じっと見ていると、この女性の明るいあたたかい笑顔と、隣の男性の柔らかくって思慮深そうな雰囲気が、ひとつになって混じり合い、first nameさんに引き継がれているように感じられてくる。2人の後ろには十字のかたちの木枠のついたガラスドア。ドアの上には【RONRON】という文字の並んだ看板が掲げられている。そばには鉢植えの植物がたくさん。なんだか見覚えのある光景だ。
「あっ、このドア、今お店にあるのと全く同じものじゃないですか!」まるで世紀の大発見をしたかのような感動とともにぼくは言った。「このポーチもまさに一緒ですよね!『ロンロン』って名前だったんですねえ、first nameさんのおじいさんとおばあさんのお店!」
「そうなんですよ!」と、first nameさんも嬉しそうに言った。「祖父の名前がfamily name
「へえ~~~っ!」
「ロンロンかぁ、それってまるで、ジョースターさんの名前みて~だなあ~~っ」
「ジョースターさん?虹村君のお知り合いですか?」
「いや実はですね、こいつの親父さんが、ジョセフ・ジョースターって名前なんスけど、なんでもそのまたお父さんがジョージ・ジョースターって名前らしくて、更にそのまたお父さんもジョナサン・ジョースターって名前らしくて・・・」
「へえ~~~っ!代々『ジョ』と『ジョ』が重なってますね、あだ名もみんなジョジョって呼ばれてそう!」
「そうなんですよ、しかもfirst nameさん聞いてくださいよ、仗助君も『
「おい、今はそこは別にいいじゃねーかよ・・・」