37℃,catharsis
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『は、初めまして__!』
焦香色の長い髪に、青緑色の大きな瞳。背は小柄で、僕の肩ほどしかない。おそらく150cm前後だろう。
「あらぁ可愛い子ね!」
パアッと効果音の着きそうなほど明るい笑顔で言ったホリィさんは、スリッパのまま玄関に飛び降り彼女の手を両手で握っていた。承太郎の「おい、」と言う静止の声もどうやら聞こえていないらしい。その熱烈な歓迎に当の本人は若干戸惑っている。オドオドする女の子と積極的なホリィさん。そんな様子をジョースターさんは笑顔で見ていた。
いやいや、そんな事より__。
ズキッと痛んだ気のする頭を押さえ、先程のジョースターさんの言葉を思い出す。
この人、今なんと言った?わしの?新しい家族?彼女は見た目から推測すると高校生前後だろう。ジョースターさんは確か御歳68__。という事はまさか、いやいや、そんな訳が__
沢山の憶測が頭の中で目まぐるしく入り乱れる。まさか、しかし__これだと辻褄が合うしな__いやでもそれは人としてどうなのか、パッと頭に浮かんでは道徳的な理由を根拠に否定していく。「今日から私の娘なのね!」というホリィさんに対し「いいや、わしの娘じゃからお前の妹じゃ!」と陽気に告げるジョースターさんに思わず目を見開き、口を開けたまま固まってしまった。
ん?今なんて言ったこの人?わしの娘???
すると、承太郎も僕と同じ考えだったようでこれでもかと言うほどに顔を顰めると直ぐに目を吊り上げ、眉間に皺を作ると低い声で言った。
「テメェじじい__。」
「なっ、何を勘違いしておる!浮気などしておらんわい!」
「ではそちらは?」
「わかった!説明をするから部屋に上げてくれ!」
「お前が上がらなかっただけだろ。」と呟く承太郎とこれでもかと言うほどに彼女の腕を振るホリィさんを横目に、居間へと進んだ。
あぁ、頭が痛い。
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立派な一枚板の机を5人で囲む。僕の隣には承太郎が不機嫌そうに座っていて、正面にはジョースターさんとホリィさんが彼女を挟んで座っている。彼女は正面から向けられる視線が痛いようで、膝に置いている手が不安げにモジモジと動いている。その様子に小動物感があるな、この子。と思った。それが彼女に対する第一印象だ。相変わらず笑顔で彼女に話しかけるホリィさんのおかげで、空気が重くならずに済んでいるのだろう。
まぁ、それでも充分重いのだが。
まるで僕の冷や汗を代用するかのように、机に置かれたコップから水滴が垂れた。その様子にお前も僕と同じ気持ちか、なんて巫山戯た考えをする分には混乱していたのだった。
すると、ゴホン、とわざとらしく咳払いをしたジョースターさんがぽつりぽつりと事の発端を話し始めた。
「あー、なんと言うかの__その、血は繋がってないのじゃよ。そこは信じてくれ!!」
「早く続けろ。」
「わしは断固浮気などしていない!!」と訴えるジョースターさんに対し、冷静に承太郎が返す。
「花京院はわしが浮気をしたなどと思ってはおらんだろうな!?」と必死の形相で机に身を乗り出すジョースターさんに思わずギョッとしてしまい、「そんな訳ないじゃないですか。何か訳ありなんでしょう?」と半ば反射的に答えてしまった。
「流石花京院__」と感動しているジョースターさんに薄らと笑いを浮かべるが、内心浮気じゃなくて安心したと思ったのは秘密だ。
「で、なんだそいつは。」
「やぁね、そいつだなんて。」
「__お前たち。」
ピタッ__と明るい雰囲気が一瞬にして変わった。それほどまでにジョースターさんの声色が真剣そのものだったのだ。なんだろうか、この感じは。ジョースターさんの細められた鋭い眼差しが、重々しい雰囲気を語っていた。これは決して軽い話ではないと、言葉にせずとも理解出来た。
彼女もそれは感じ取っているようでチラリとジョースターさんの目を見ると、大丈夫だと言うように軽く頷いた。
「この子はな、わしが買ったんじゃよ。」
え__とか細い声が居間に響いた。思わず彼女の方を凝視してしまったが、本人はどうも気まずいようで俯いたまま動かなかった。
「どういうことだ。」
「アメリカで怪しい奴がいると噂を聞いてな。スタンド使いかと思って調査していた時じゃ。そいつが壮大なオークションを計画しておったらしくてな__。」
「__闇オークションか。」
「そうじゃ。闇オークション__人身売買じゃよ。」
そこで今、自分が緊迫感に無意識に息を止めていた事に気がついた。ドク、ドク__と激しく動く心臓を鮮明すぎるほどに感じられた。僕がゴクリと固唾を呑むと同時に告げられた言葉に、僕たちは今まで以上に驚いた。
「__この子はスタンド使いじゃ。」
「スタンド__?前に承太郎と居た幽霊みたいな子ね!」とホリィさんは納得したように言った。
スタンドに苦しめられた身なのに__怖くないのだろうか。その恐怖を全く感じさせない優しい雰囲気に、少し気が和らいだ気がした。
スタンド使い__確かにそう言ったのだろうか。いやしかし、
もう一度縮こまる彼女を見たが、スタンド使いには到底見えなかった。こんなか弱そうな人が、スタンド使い__。確かに老婆や動物、赤ん坊でさえもスタンドが使えてしまうという事実は今まで目にしたことがある為、こんなにも儚く、今にも消えてしまいそうな女の子にも充分そんな可能性があるとは分かっている。
分かっているのだが__
何故かはっきりしないような、疑心暗鬼のような、本当に?彼女が?と完全に信じることが出来なかった。それは彼女の纏っている淡雪のような、触れてしまえば溶けて消えてしまうのではないかと錯覚させる程の繊細さのせいだろう。隣に座っているホリィさんとはまた違った柔らかさを感じる。
「詳しいことはわしもよく知らんが__そのせいで幼少期に売られ、様々なオークションに高値で出品されていたんじゃ。」
「__それをテメェが買ったということか。」
「そういうことじゃ。」
ジョースターさんは微かに震える手を握り締めていた彼女を落ち着かせるよう頭に手を乗せると、当人は肩の力が抜けたようで、視線を合わせるようにゆっくりと顔を上げた。
その時、緩く結ばれた髪の間から見えた首にバーコードが見えて、あまりの無惨さに胸が酷く痛んだ。そんな気持ちを紛らわすように拳を固く握ると、それに気づいたのかジョースターさんは空気を一変させるように陽気な笑顔で言った。
「取り敢えず、この子はわしの娘じゃ!!今日からここに住むから頼んだぞ!!」
「あら、ここに住むのね!嬉しいわ!」
そう言って彼女の手を包むホリィさんを彼女の手が折れてしまうのではないかとハラハラしながら見ていると、ホリィさんが驚いたように声を上げた。
「あら、貴方__」
「どうした?」
「__ううん、なんでもないわ。」
そう言って直ぐに笑顔になると、「そうだ、貴方のお名前は?」と優しく細められた目を彼女に合わせ、聞いた。
「あ、あの__」
「なぁに?どうしたの?」
「な、名前__ない、です__。」
非常に申し訳なさそうな声色で告げる彼女の言葉に、全員の視線が再びジョースターさんの元へ集中した。すると、ギョッと慌てた様子で弁解するように大声で言った。
「な、なんじゃお前ら!?わしが何か悪い事でもしたか!?」
「お前、数ヶ月前からこいつと居たんだろ。」
「そ、そうじゃ!それがなんだ!!」
わしは悪くないとでも言うように机を叩くジョースターさんに、呆れて溜め息が出た。数ヶ月前から一緒に居たにも関わらず__はぁ、全く。この人は。
「ジョースターさん__数ヶ月間一緒に居たにも関わらず、名前も知らなかったのですか?」
「ぐっ、それは__」
「パパ!そんなの可哀想じゃない!!」
「ほ、ホリィまで__」
「やれやれ、困ったジジイだぜ__。」
「す、すまんかった!!だからそんなに責めないでくれ〜!!!!」
静かだった雰囲気は何処ぞに__空条家にはジョセフ・ジョースターの大声が響き渡った。
焦香色の長い髪に、青緑色の大きな瞳。背は小柄で、僕の肩ほどしかない。おそらく150cm前後だろう。
「あらぁ可愛い子ね!」
パアッと効果音の着きそうなほど明るい笑顔で言ったホリィさんは、スリッパのまま玄関に飛び降り彼女の手を両手で握っていた。承太郎の「おい、」と言う静止の声もどうやら聞こえていないらしい。その熱烈な歓迎に当の本人は若干戸惑っている。オドオドする女の子と積極的なホリィさん。そんな様子をジョースターさんは笑顔で見ていた。
いやいや、そんな事より__。
ズキッと痛んだ気のする頭を押さえ、先程のジョースターさんの言葉を思い出す。
この人、今なんと言った?わしの?新しい家族?彼女は見た目から推測すると高校生前後だろう。ジョースターさんは確か御歳68__。という事はまさか、いやいや、そんな訳が__
沢山の憶測が頭の中で目まぐるしく入り乱れる。まさか、しかし__これだと辻褄が合うしな__いやでもそれは人としてどうなのか、パッと頭に浮かんでは道徳的な理由を根拠に否定していく。「今日から私の娘なのね!」というホリィさんに対し「いいや、わしの娘じゃからお前の妹じゃ!」と陽気に告げるジョースターさんに思わず目を見開き、口を開けたまま固まってしまった。
ん?今なんて言ったこの人?わしの娘???
すると、承太郎も僕と同じ考えだったようでこれでもかと言うほどに顔を顰めると直ぐに目を吊り上げ、眉間に皺を作ると低い声で言った。
「テメェじじい__。」
「なっ、何を勘違いしておる!浮気などしておらんわい!」
「ではそちらは?」
「わかった!説明をするから部屋に上げてくれ!」
「お前が上がらなかっただけだろ。」と呟く承太郎とこれでもかと言うほどに彼女の腕を振るホリィさんを横目に、居間へと進んだ。
あぁ、頭が痛い。
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立派な一枚板の机を5人で囲む。僕の隣には承太郎が不機嫌そうに座っていて、正面にはジョースターさんとホリィさんが彼女を挟んで座っている。彼女は正面から向けられる視線が痛いようで、膝に置いている手が不安げにモジモジと動いている。その様子に小動物感があるな、この子。と思った。それが彼女に対する第一印象だ。相変わらず笑顔で彼女に話しかけるホリィさんのおかげで、空気が重くならずに済んでいるのだろう。
まぁ、それでも充分重いのだが。
まるで僕の冷や汗を代用するかのように、机に置かれたコップから水滴が垂れた。その様子にお前も僕と同じ気持ちか、なんて巫山戯た考えをする分には混乱していたのだった。
すると、ゴホン、とわざとらしく咳払いをしたジョースターさんがぽつりぽつりと事の発端を話し始めた。
「あー、なんと言うかの__その、血は繋がってないのじゃよ。そこは信じてくれ!!」
「早く続けろ。」
「わしは断固浮気などしていない!!」と訴えるジョースターさんに対し、冷静に承太郎が返す。
「花京院はわしが浮気をしたなどと思ってはおらんだろうな!?」と必死の形相で机に身を乗り出すジョースターさんに思わずギョッとしてしまい、「そんな訳ないじゃないですか。何か訳ありなんでしょう?」と半ば反射的に答えてしまった。
「流石花京院__」と感動しているジョースターさんに薄らと笑いを浮かべるが、内心浮気じゃなくて安心したと思ったのは秘密だ。
「で、なんだそいつは。」
「やぁね、そいつだなんて。」
「__お前たち。」
ピタッ__と明るい雰囲気が一瞬にして変わった。それほどまでにジョースターさんの声色が真剣そのものだったのだ。なんだろうか、この感じは。ジョースターさんの細められた鋭い眼差しが、重々しい雰囲気を語っていた。これは決して軽い話ではないと、言葉にせずとも理解出来た。
彼女もそれは感じ取っているようでチラリとジョースターさんの目を見ると、大丈夫だと言うように軽く頷いた。
「この子はな、わしが買ったんじゃよ。」
え__とか細い声が居間に響いた。思わず彼女の方を凝視してしまったが、本人はどうも気まずいようで俯いたまま動かなかった。
「どういうことだ。」
「アメリカで怪しい奴がいると噂を聞いてな。スタンド使いかと思って調査していた時じゃ。そいつが壮大なオークションを計画しておったらしくてな__。」
「__闇オークションか。」
「そうじゃ。闇オークション__人身売買じゃよ。」
そこで今、自分が緊迫感に無意識に息を止めていた事に気がついた。ドク、ドク__と激しく動く心臓を鮮明すぎるほどに感じられた。僕がゴクリと固唾を呑むと同時に告げられた言葉に、僕たちは今まで以上に驚いた。
「__この子はスタンド使いじゃ。」
「スタンド__?前に承太郎と居た幽霊みたいな子ね!」とホリィさんは納得したように言った。
スタンドに苦しめられた身なのに__怖くないのだろうか。その恐怖を全く感じさせない優しい雰囲気に、少し気が和らいだ気がした。
スタンド使い__確かにそう言ったのだろうか。いやしかし、
もう一度縮こまる彼女を見たが、スタンド使いには到底見えなかった。こんなか弱そうな人が、スタンド使い__。確かに老婆や動物、赤ん坊でさえもスタンドが使えてしまうという事実は今まで目にしたことがある為、こんなにも儚く、今にも消えてしまいそうな女の子にも充分そんな可能性があるとは分かっている。
分かっているのだが__
何故かはっきりしないような、疑心暗鬼のような、本当に?彼女が?と完全に信じることが出来なかった。それは彼女の纏っている淡雪のような、触れてしまえば溶けて消えてしまうのではないかと錯覚させる程の繊細さのせいだろう。隣に座っているホリィさんとはまた違った柔らかさを感じる。
「詳しいことはわしもよく知らんが__そのせいで幼少期に売られ、様々なオークションに高値で出品されていたんじゃ。」
「__それをテメェが買ったということか。」
「そういうことじゃ。」
ジョースターさんは微かに震える手を握り締めていた彼女を落ち着かせるよう頭に手を乗せると、当人は肩の力が抜けたようで、視線を合わせるようにゆっくりと顔を上げた。
その時、緩く結ばれた髪の間から見えた首にバーコードが見えて、あまりの無惨さに胸が酷く痛んだ。そんな気持ちを紛らわすように拳を固く握ると、それに気づいたのかジョースターさんは空気を一変させるように陽気な笑顔で言った。
「取り敢えず、この子はわしの娘じゃ!!今日からここに住むから頼んだぞ!!」
「あら、ここに住むのね!嬉しいわ!」
そう言って彼女の手を包むホリィさんを彼女の手が折れてしまうのではないかとハラハラしながら見ていると、ホリィさんが驚いたように声を上げた。
「あら、貴方__」
「どうした?」
「__ううん、なんでもないわ。」
そう言って直ぐに笑顔になると、「そうだ、貴方のお名前は?」と優しく細められた目を彼女に合わせ、聞いた。
「あ、あの__」
「なぁに?どうしたの?」
「な、名前__ない、です__。」
非常に申し訳なさそうな声色で告げる彼女の言葉に、全員の視線が再びジョースターさんの元へ集中した。すると、ギョッと慌てた様子で弁解するように大声で言った。
「な、なんじゃお前ら!?わしが何か悪い事でもしたか!?」
「お前、数ヶ月前からこいつと居たんだろ。」
「そ、そうじゃ!それがなんだ!!」
わしは悪くないとでも言うように机を叩くジョースターさんに、呆れて溜め息が出た。数ヶ月前から一緒に居たにも関わらず__はぁ、全く。この人は。
「ジョースターさん__数ヶ月間一緒に居たにも関わらず、名前も知らなかったのですか?」
「ぐっ、それは__」
「パパ!そんなの可哀想じゃない!!」
「ほ、ホリィまで__」
「やれやれ、困ったジジイだぜ__。」
「す、すまんかった!!だからそんなに責めないでくれ〜!!!!」
静かだった雰囲気は何処ぞに__空条家にはジョセフ・ジョースターの大声が響き渡った。
