紫紺のライラックを君に
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「フーゴ、リストランテでみんなが待っている。行くぞ。」
「すみません、ブチャラティ。先に行ってて貰えませんか?」
「そうか、わかった。」ブチャラティはそう言うとフーゴに背を向けた。
フーゴは現在イタリア主要のギャング組織、パッショーネに所属している。先程一緒にいたブローノ・ブチャラティはその幹部に当たる人物だ。
彼は数年前に亡くなってしまった彼女の為、花屋へ向かった。最も、彼女の墓が何処にあるのかは知らないので、自分の部屋の窓側に置いてあるのだが。今は紫色のアネモネが生けてあるのだが、少し枯れてきてしまったので新しい花を生けることにしたのだ。
窓側に置いておけば、彼女が見つけてくれるかな__なんて。
花屋の入口付近には、女郎花色のゼラニウムが並んでいる。
店内に入ると、白い花ばかりだった。店長曰く、もうすぐ祭典があるので白い花の方が売れやすいんだとか。
真っ白な花、少しくすんだ花、淡色の花。
甘い匂い、爽やかな匂い。
そんなもの達が入り交じる中、店一面の白を見て進んでいると、一箇所だけ鮮やかな深緋色を見つけた。
白い中に見つけた色が印象的だったからか、一直線に歩いていき手に取ると、迷うことなく会計へと持っていった。今生けてあるものとは色違いのものだ。あまり人気じゃなく売れ残ることが多いのだが、ミニブーケにすると綺麗なのだと店長が言った。
「そういえば、随分長いこと来ないねぇ。あの子。」
「あの子?」
「そうそう。金色の髪が綺麗でねぇ__貴方の肩よりちょっと大きいくらいの子よ。」
___まさか。
「ここでよくお花を買ってくれたのよ。自分用にとか__あぁ、一回だけ好きな人にあげるって言ってたわね。もう、頑張れ!って応援しちゃったわ。」
「若いっていいわね〜。」と陽気に笑う声が遠く感じた。何故か胸がモヤモヤして、早口で会計を済ませた。口調や行動が若干荒くなってしまって店長は驚いていたが、僕の顔を見て、優しそうに微笑んだ。
「あんな素敵な子、そうそういないわよ。」
__もう、いないんだよ。
そんな言葉が心に響いた。
「また来ます。」
笑顔で手を振る店長を背に歩き出すと、ポケットに入っていた携帯が震えた。【早く来い】らしい。そんな一言にはいはい、と呆れながらも花束を抱え直し携帯をポケットにしまった。急ごうと早足で歩き出した時、後ろから腕を掴まれ引っ張られた。
「うわっ__」
いきなりのことにバランスが崩れ、何とか片足で踏ん張った。一体誰だ。文句を言ってやろうと思い顔を上げた時、思わず息を飲んだ。
「その花束、誰にあげるつもりですか?」
よく聞きなれた声だった。
短い髪は伸びていて、紫色の瞳は薔薇色に変わっていたが、名前だった。
「__お前以外にいると思うか?」
「いないと思いまーす!」
「なんだとコラ。」
あの時と変わらない、おどけた態度に心が軽くなった気がした。
「__遅いんだよ。」
「えぇ?生まれ変わるには早い方だと思いますよ?わがままですねぇ。」
そう溜め息をついたこいつに、僕は押し付けるように花束を渡した。
「あらやだプロポーズ!?」
「黙れ。」
__やれやれ、また騒がしくなりそうだ。
(え?先輩素肌にネクタイって__)
(なんだよ、お前が言ったんだろ。)
(まさか本気にして__んまぁ〜、可愛いでちゅね〜!)
(フーゴ遅くね?)
「すみません、ブチャラティ。先に行ってて貰えませんか?」
「そうか、わかった。」ブチャラティはそう言うとフーゴに背を向けた。
フーゴは現在イタリア主要のギャング組織、パッショーネに所属している。先程一緒にいたブローノ・ブチャラティはその幹部に当たる人物だ。
彼は数年前に亡くなってしまった彼女の為、花屋へ向かった。最も、彼女の墓が何処にあるのかは知らないので、自分の部屋の窓側に置いてあるのだが。今は紫色のアネモネが生けてあるのだが、少し枯れてきてしまったので新しい花を生けることにしたのだ。
窓側に置いておけば、彼女が見つけてくれるかな__なんて。
花屋の入口付近には、女郎花色のゼラニウムが並んでいる。
店内に入ると、白い花ばかりだった。店長曰く、もうすぐ祭典があるので白い花の方が売れやすいんだとか。
真っ白な花、少しくすんだ花、淡色の花。
甘い匂い、爽やかな匂い。
そんなもの達が入り交じる中、店一面の白を見て進んでいると、一箇所だけ鮮やかな深緋色を見つけた。
白い中に見つけた色が印象的だったからか、一直線に歩いていき手に取ると、迷うことなく会計へと持っていった。今生けてあるものとは色違いのものだ。あまり人気じゃなく売れ残ることが多いのだが、ミニブーケにすると綺麗なのだと店長が言った。
「そういえば、随分長いこと来ないねぇ。あの子。」
「あの子?」
「そうそう。金色の髪が綺麗でねぇ__貴方の肩よりちょっと大きいくらいの子よ。」
___まさか。
「ここでよくお花を買ってくれたのよ。自分用にとか__あぁ、一回だけ好きな人にあげるって言ってたわね。もう、頑張れ!って応援しちゃったわ。」
「若いっていいわね〜。」と陽気に笑う声が遠く感じた。何故か胸がモヤモヤして、早口で会計を済ませた。口調や行動が若干荒くなってしまって店長は驚いていたが、僕の顔を見て、優しそうに微笑んだ。
「あんな素敵な子、そうそういないわよ。」
__もう、いないんだよ。
そんな言葉が心に響いた。
「また来ます。」
笑顔で手を振る店長を背に歩き出すと、ポケットに入っていた携帯が震えた。【早く来い】らしい。そんな一言にはいはい、と呆れながらも花束を抱え直し携帯をポケットにしまった。急ごうと早足で歩き出した時、後ろから腕を掴まれ引っ張られた。
「うわっ__」
いきなりのことにバランスが崩れ、何とか片足で踏ん張った。一体誰だ。文句を言ってやろうと思い顔を上げた時、思わず息を飲んだ。
「その花束、誰にあげるつもりですか?」
よく聞きなれた声だった。
短い髪は伸びていて、紫色の瞳は薔薇色に変わっていたが、名前だった。
「__お前以外にいると思うか?」
「いないと思いまーす!」
「なんだとコラ。」
あの時と変わらない、おどけた態度に心が軽くなった気がした。
「__遅いんだよ。」
「えぇ?生まれ変わるには早い方だと思いますよ?わがままですねぇ。」
そう溜め息をついたこいつに、僕は押し付けるように花束を渡した。
「あらやだプロポーズ!?」
「黙れ。」
__やれやれ、また騒がしくなりそうだ。
(え?先輩素肌にネクタイって__)
(なんだよ、お前が言ったんだろ。)
(まさか本気にして__んまぁ〜、可愛いでちゅね〜!)
(フーゴ遅くね?)
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