Works
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今日も今日とて、オフィスワークをするレノ、ルード、そしてクリスタ。
クリスタが入社してからここ数日、レノは自分が溜めに溜めた書類を整理する作業が続いていた。
なかなか終わりが見えない報告書に、今日も太陽は沈み始め、そろそろ定時になる。
「ッあーーー、また終わんねぇぞ、と」
それでも、当初から比べて1/10くらいになった書類は、もう山ではなく、湖くらいになった。
湖に肘を落とし、首を垂れてうなだれるのはレノだ。
「レノ。終わらなければ現場はない。」
ルードが、励まそうとぶっきらぼうに言う。
「ん〜〜〜。俺、もういい。
現場が困ればいいんだ、と。」
拗ねるように言うレノは、突っ伏してうなだれた。
「レノ。」
頑張れ、そう促すようにルードが名を呼ぶが、一度集中を切らした人間を立て直すことは難しい。
「もう、飯行こ。そんで、気が向いたら戻ってきて進めりゃいい。」
名案、名案!と歌うようにしてジャケットを羽織る。
羽織ったジャケットの起こした風が、隣のクリスタの髪をそよがせて、香りを運ぶ。
あ、この香り。
クリスタはそれだけで嬉しくなって、作業を進めた。
「なぁ、クリスタ。お前も行かないか?」
まさか、と心が跳ね上がるような気持ちになった。
「あ…え〜っと…」
しかし今夜は、交渉の日であった。
さっさとデスクワークを終わらせて、現場へ向かわなくてはならない。
ツォンはクリスタに気を遣い、メンバー皆には交渉人員であることを言わないでくれていた。
「今日、これ終わらせたら、現場なんです…。」
「はぁ?ここから現場かよ。そりゃお前、社畜死するぞ、と!」
言いながら、笑い飛ばすレノ。
「まぁ、新人だもんな。まずは頑張っとけよ、と。
俺もルードも、同じ現場になれんの楽しみにしてるぞ、と。」
と、ルードも、サングラスの奥で微笑んでくれているのが分かった。
じゃな〜!いってら。
そう言いながら、あっさりと夕ご飯をしに出て行ってしまった。
さて、ひと段落したら、自分も行かなくては。
「今日の交渉相手は、CM会社の業界おじさん、ってとこね…、やな感じ。」
オフィスを切り上げ、勝負ドレスに着替えて、壱番街を颯爽と歩く。
現場のレストランに到着した。
「よし。」
飲んで、それだけで終わらせてやる。
交渉成立・任務完了は、目の前だ。
–––3時間後。
意気込みとは裏腹。
結局クリスタが出てきたのは、ホテルだった。
颯爽としていた足取りは重く、帰るのすら億劫だ。
交渉成績で言えば上々。神羅の新CMが、世界に発信されることになりそうだ。
しかしその代償に見るものといえば、汚い指先、だらしない身体、痛みだけが走る行為。
「今までで一番最悪。ヘタクソ。自分よがり。あのくそじじぃ。地獄に落ちろ!」
つぶやき、発散し、やっとの思いで自室へとたどり着いた。
ベッドに寝転んで、ジワリと痛む嫌な感覚に吐き気がした。
こんなクオリティの情事が続くことを考えると、自分がいつまで心が清潔なままいられるだろう、と漠然とした不安が襲った。
愛する人に、愛を持って抱いてもらえる人生は、
私にはもうないのだろうか。
こんな夜は、睡魔を妨げるように思考が脳内を走って、結局一睡もできずに朝を迎える。
そんな生活が、もう一ヶ月も続いたある出勤の日、ツォンに呼ばれた。
「クリスタ。話がある。」
「はい!」
あくまで、オフィスでは明るく過ごした。
「大丈夫か?」
ツォンは冷静に、ただそう聞いた。
「えっ…」
「あちらの業務の方は、大丈夫か。」
「あ、はい!しっかりやれていると思っています。
大丈夫です!」
業績だけでいえば、かなり良いだろう。
心は多少荒んできたような気がするが、まだ気のせいということにして、自分を騙せた。
「本当か…?」
ツォンは、業績のことではなく、まさしく心の方を心配していた。
「はい!引き続き、良いお話、持って参ります。」
見習いを卒業して、レノやルードをフォローできるようになるために。
「タークスになるんだ」
相変わらず、その気持ちだけでクリスタは全てを保っていた。
デスクにつくと、先日までの書類の山はこなしたはずなのに、最近よくレノがいる。
「レノさん、捗ってますか?」
「はかどらねーぞ、と。」
「あと何枚あるんですか。」
「5枚ちょい。」
「え、すごくないですか。余裕じゃないですか!」
「はん、俺はなんでもやればできる子なんだよ、と。
それに、ここ最近はちょっと改心したんだ。
小出しにちゃんと報告書の提出するようにしてるんだぞ、と。」
パチパチパチ〜と、拍手をして讃えるクリスタ。
あえての猿芝居に、まぁまぁまぁとこれも猿芝居で返すレノ。
「なぁ、今日は夜、空いてるか?」
生憎、今日も交渉の現場だった。
「ひゃ〜、また現場っす〜…」
「おい、社畜がすぎるぞ、と。
つ〜か、いつもいつもそんな夜の現場、何してんだよ、と。お前ウータイの出身?忍びか?」
ウータイエリアは忍者のエリア。
忍びということにしておくと、都合が良さそうだ。
「あ〜〜、鋭い!!
…な〜んて、詳細も答えも言えませんよ。タークスだからこそ、気を張れ!でしょ?」
「がるるる…」
唸っているレノをよそに、デスクワークを終わらせ、夕刻からの交渉に行く。
オフィスにはレノはじめ、社員が数名いることから、ドレスに着替えるのは現場付近。
「では、レノさん!忍んで参ります!」
レノの返答も待たずに駆け出す。
その勢いのまま現場付近へ向かって、美しぶる自分になってしまおう。
一歩でも止まったら、もうそこから二度と動けなくなる気がするから。