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血糊の感覚が消えなくて、
一晩中、足の皮膚がボロボロになるまで掻きむしっている自分がいた。
気づけば朝日が昇っていて、そこでようやく睡魔がやってきた。
結局、どうしても出社する気になれないクリスタは、ツォンにメールをした。
――すみません。そのまま、交渉現場へ直行・直帰します。
――了解。
鏡を見ると、ますます痩せて綺麗になった自分が映る。
でもそこに生気はなかった。
しかし昨日のことで、戦闘能力も全く衰えていないということが分かった。
「まだ、やれる。
タークスを、諦めない。」
直行・直帰は楽だった。
ツォンが許してくれる限りはこれを続けて、交渉がない日にオフィスで書類を片付けよう。
そんなことを繰り返して数日。
体力が温存されるようになって、少し生気が戻って来た気がする。
ドレスも新調してハリが出たし、そういったニューアイテムからもパワーをもらえている。
かと言って、ホテルの後の魂が吸われたような気持ちは変わらず、家までの足取りは重たい。
翌朝、一週間ぶりに出社した。
「あんれ、久しぶり。はよ。」
また、レノがいる。
久々に会えるその姿に、どこかホッとしている自分がいた。
「おはようございます。」
自然と微笑むことができた自分がいた。
レノもなにやら満足げに微笑んでいた。
今日は交渉業務はないが、溜まっていた書類に追われるため、帰れるかはわからない。
結局残業で体力は消耗してしまうだろう。
だが、交渉に行くよりよほど良い。
平和な一日になってくれよと願って、業務開始するやいなや、
一斉に緊急連絡が入った。
『アバランチに動きがありました。
各地で拠点を構え、魔晄炉はじめ、神羅印のある村や町を襲おうとしています。
タークスは主任に従い、各地へ飛び、すぐに鎮圧願います。
なお、拠点はカームである可能性が高いという情報も入っています。
繰り返します…―』
「なんだってカームなんかに!?
アバランチ、近頃動きがねぇと思ってたら、そんなことしてたのかよ、と!」
カーム。
ふるさとで、なにが起きているというのか。
ツォンが皆に指令を始めた。
「A班はジュノンへ向かい、現場にいるタークスと連携、そのまま攻撃。
B班、C班は、ヘリで大陸を調査。D班、E班、ミッドガルにて…―」
いつにも増して落ち着いていて、顔色一つ変えない。
初めてここまで緊迫した雰囲気を見て、クリスタは慌てていた。
「レノ、ルード。」
「は!」
「二人はカーム。私も同行する!」
「了解!!」
レノもルードも、初めて見るくらいの精悍な顔つきで、見事に現場モードに切り替わった。
「クリスタ。
君にはここで、情報管理をしていてほしい。
劣勢か優勢かの把握、生き残っているタークスの情報、いつものデスクと同じようにやれば大丈夫だ。」
「で、でも…!!」
「闘いたい気持ちはわかる。
だが、これも君に与える大切な任務だということを忘れるな。
電話とシーバーが必ず繋がる状態にしておけ!頼んだぞ!!」
「ツォンさん…!!」
すぐそこに併設されているヘリポートから、三人は出発する。
置いていかれたクリスタは、すでに何行も入ってきている情報に目を通し、心を落ち着かせる。
大丈夫。
カームには、最強の三人が向かったのだ。
私はここで、言われた通りに情報へのアンテナを張ればいい。
もう、何時間もPCとにらめっこしている。
現在神羅が優勢。しかもかなり余裕がある。
世界の動きとしては、やはりミッドガルエリアが優勢と劣勢を行ったり来たりしている。
カームもそんな状態だ。
「やっぱり…カームも大変そうだ…」
無線が鳴った。
『私だ、ツォンだ。
クリスタ、動きはどうだ。』
「はい、現在ウータイとジュノンはかなりの優勢。
ミッドガルとカームが互角です。
各地の班に突入地域の変更を連絡しますか?」
『ああ、頼む。誰が動くかを、それぞれのリーダーに決めさせろ。
連絡は簡潔に頼んだぞ。』
「了解」
それぞれの班に連絡を入れる。
これで、また少しこの大陸に戻ってきてくれる。そうしたら、ここも、カームも大丈夫かもしれない。
しかし、見る見るうちに、カームが劣勢になっていく。何か大きな攻撃があったとしか考えられない動きだ。
こちらから、ツォンに連絡を試みる。
「ツォンさん!」
『――ビビビ…ジ…ツーーー…ブツッ…――――――』
「え…?ツォンさん!ツォンさん!!!」
瞬く間に劣勢になっていくカーム。
誰とも通信が効かない。
するとそこに、一機のヘリが戻ってきた。
ミッドガルを調査していた班のヘリだ。負傷者が出て、医務室へ戻ってきたらしい。
バタバタと下の階へ向かうタークスメンバーたち。
クリスタはもう、胸いっぱいに不安が広がり、行動を抑えられなかった。
「ヘリ、借ります!!!」
そう言って、ヘリポートへ飛び出し、あっという間に上空へ舞い上がった。
研修以来のヘリで、カームまで飛ばす。
「お願い、みんな。ママ…!無事でいて…!」
カームは、ヘリならすぐそこだ。