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龍と狂犬の熱
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……最近、色々とおかしい。
さくらはそう思った。
桐生、真島から前以上に誘いを受けるようになってしまった。
更に、前以上に自分が甘やかされている感がある。
今までで十分甘やかされていたと思っていたのだが、よりいっそう甘やかされている気がする。
今までは、どちらかから誘うことが多かったのだが…今では二人同時が頻繁に起こる。
なので二人と遊びに行く頻度は増えた。
「さくらちゃん、次何処行く?なんぼでも付き合うたるで〜?」
「で、でも真島さん達忙しいんじゃ…?」
「俺たちのことは、何も気にしなくていい。気の済むまで付き合ってやるよ」
こんな調子なのだ。
楽しいし、桐生と真島も二人楽しくしてるのは嬉しいのだが…心配になってしまう。
無理をさせていないか?と…
しかし、そう言えば二人共否定し「こうして遊びたいから」と力説される始末だ。
そんな生活に、不思議な思いを抱きつつさくらも二人との交流を楽しんだ。
……二人の熱は、気づかないままに。
そんなある日、さくらは個室のある居酒屋に呼び出される。
さくらを呼び出した相手は───
「いつもながら高そうな個室ですね、真島さん…」
「ヒヒ、さくらちゃんとゆーっくり飲むなら個室の方が落ち着くんや」
真島だった。
何でも話があるということらしい。
「ところで、お話ってなんですか??」
「まぁ、まずは飲みモン注文したらどないや?いつものやったら注文済みやけど、好きなの頼んでええで?」
「いえ、これで大丈夫です。というか、さすが真島さんですね…?私の好きなお酒完璧に把握してる…」
「こんくらいは朝メシ前やで」
ひとまず軽く世間話をし、真島がさくらに向き合う。
「なぁさくらちゃん…」
「なんでしょう?」
「さくらちゃんは俺の事、どう思っとる?」
真島の問いに、?が飛び交うさくら。
「どう、って……真島さんはとても優しくて楽しくて、頼りになる人…です」
「さよかぁ、んじゃ俺ンこと好きか?」
「そうですね。真島さんのことは大好きですよ!」
真島ははぁ、と溜息をついた。
さくらから欲しい言葉を貰えたのにだ。
理由は一つ。
さくらは確実に分かっていない。
真島が聞いた『好き』のその意味に。これは確実に意味を勘違いしている。
(……まぁ、こないなトコも可愛ええんやけど)
天然炸裂中のさくらに、しっかり理解してもらわなくては。
「そぉか〜、嬉しいのぅ!」
でも、と言いながら真島はさくらとの距離を詰める。
「…………俺が聞いとんのは、コッチの方やで… さくらちゃん…」
「へっ?…………っ?!?!?!」
顔を上げた瞬間、さくらは目を見開いた。
真島の顔が、至近距離にあり…かつ唇に温かいものが触れた。
軽く、触れただけだが…如何に鈍感なさくらでも分かる。
真島が、自分にキスをしてきたのだと。
「……これで、俺の聞いたことの意味通じたか?」
「…………っ?!?!」
途端にさくらは顔を真っ赤にし、真島と距離を置く。
混乱している中、真島が切なく笑った。
「いきなりすまんかった。抑え効かんかったわ…」
「ま、真島…さん…、え…?」
「混乱しとるな、無理もないけど。…… さくらちゃん、俺はさくらちゃんのこと好きや。どの意味で『好き』かはもう分かるな?」
さくらは顔を赤くしたまま頷く。
「……ホンマは、この想い伝える気なかった。さくらちゃんも知っての通り、俺は極道モンや。カタギのさくらちゃんを、巻き込みたないから…この気持ちは墓場まで持ってこうと思うとった。いつか、さくらちゃんが同じ世界の男と結ばれたら…祝福して静かに下がろうてな」
「…………」
「けど、桐生ちゃんと一緒に居るさくらちゃん見とったら…俺以外の男が傍に居るっちゅうのがどうしても気に入らんくなってのぅ…」
桐生だから、ではなく…自分以外の誰かがさくらの傍に居るのを見るのが不快だったと真島は語る。
「これでも、言うてええんかって散々悩んだんや。けど、やっぱ白黒はっきりさせんと俺もスッキリせんからな。せやから今日、思い切って吐き出したろ思うたんや」
「真島、さん……」
「ホンマ色々いきなりですまんかった。俺はさくらちゃんからの答え、急がせる気ない。ほんの少しでええ、考えといてもらえんかな?」
さくらは何も言えずにいたが、真剣なその眼差しに小さく頷く。
「……よっしゃ!とりあえず仕切り直しや!混乱させといて何やけど、気にせんといつも通りにいこうやないか」
「……はい」
真島の告白に、さくらは戸惑う。
今しばらくは、混乱は解けそうにない…
