泡沫星夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
7月。
部活の雰囲気にも、クラスの雰囲気にも馴染んで、今の生活にも慣れてきた。
「んー、部活が休みだと…やることないなぁ…」
学校は休み、宿題は終わった。
部活も休みでやることがない。
「いつも私何してたっけ?」
一人言を呟きながらうーんと頭を捻る。
『なぁ、名前!またケーキ作ってよ!』
『またぁ?』
『だって美味いし!』
『いつもは不味いって言うくせに?』
『あれは俺の愛情だ』
『裏返しにしないで欲しいなー』
『ま、よろしくっ』
思い出したのは…
『あ、名前ちゃん。私またクッキー食べたいなー』
『買ってくれば?』
『違うのー!名前ちゃんの作ってくれたクッキーが食べたいの!』
『ふふっ、わかってるよ。じゃあ作るから待っててね』
『わーい!ありがとう!』
私にお菓子のリクエストをする母と兄の姿。
……これは、やばいな…
視界がぼやける。
顔が熱い。
私、泣いてるんだ…
“会いたい…”
そう願うのにどうしたらいいのか…わからない。
「あぁあぁあ!もう!!
駄目だめ!凹むのはダメ!よし、食堂のキッチンって使えるのか聞いてみよー」
暗い感情に飲み込まれそうな自分を奮い立たせて
私は食堂に向かった。
「あのー…」
「あら、どうしたの?」
「ちょっと…キッチンお借りしたいのですが…」
「いいわよ。何を作るの?」
「あ、クッキーを…」
「あら、いいわねー!誰かにあげるの?」
「そういうわけではなくて…ただ作りたくなったものですから…」
「ふふっ、いいわよ。いっぱい使ってちょうだい!」
食堂にいたおばちゃんに話してみるととても気さくな方で簡単にOKをくれた。
ありがとうございます、とお礼を告げて私はクッキーを作りはじめた。
小麦粉と砂糖とバターを混ぜて
生地を4つにわけて
ココアと抹茶と…チョコチップを混ぜて
いろんな型で形を作った。
「あら、手際いいわねー」
「ありがとうございます!
家でよく作ってましたので」
途中途中、おばちゃんが声を掛けてくれるのが嬉しかった。
オーブンで焼いていると甘い香りが漂う。
家でお菓子を作っているといつもその匂いにつられて母と兄が現れる。
でも……ここではそれがない。
悲しいけど…いつかきっと帰れるから大丈夫。
そう思っていると周りが少し騒がしくなっていることに気付いた。
「ん?何かあるのかな…?」
ふとカウンターの向こうを見ると私が焼いたクッキーを見つめる男の子たち。
「な、なぁ!それお前が作ったのか?」
「苗字クッキー作れんのか!?」
「誰かに渡すために作ったのか?」
「美味そー!ちょー食いてぇ!」
そして口々に叫ぶ。
「へっ?えっ?」
困惑して慌てる私を助けてくれたのは…
「お前らやかましいぞ!!一斉に話しかけて苗字が答えられるはずがないだろう」
「そうですよ、先輩方。名前先輩一人に対して男がこんな大勢じゃ、反応出来ませんよ」
宮地君と梓君だった。
「ありがとう。宮地君、梓君。
え、と…みんな…どうして此処に…?」
二人のおかげで少し落ち着いた私はみんなに問いかけた。
だって今日は休みなのに。
「小腹が空いたから購買行こうと思ったんだけど…そしたら甘い香りが漂ってきてさー!」
「あ、俺も!」
「俺もー!」
「俺はなんとなく食堂に来た」
「俺、女の子が菓子作ってるの初めて見たけど…可愛いよな…」
「え…可愛い?ありがとう!」
みんなが口々に“甘い香りに誘われて”と言う中、一人の男子が言った言葉に周りが即座に反応した。
…何か変なこと言ったのかな?
『おまっ、誰もそれ言わなかったんだぞ!?』
『でもいい仕事したぞ!あの笑顔超可愛い!』
『夜久と違って幼馴染みの結界がないからすぐ仲良くなれるかも!』
なんか、こそこそ言い合ってるけど…大丈夫、なのかな?
「ところで名前先輩。そのクッキー、誰にあげるんですか?」
不思議に思っている私に梓君が問う。
「え?別に誰かにあげるとか…考えてないけど…」
「だったら僕にくれませんか?」
私が答えると、梓君はにっこり笑って言った。
「いいよ。何個食べる?」
だから私も笑顔で返す。
「え、ぜん…」
「おお俺も欲しい!!」
「僕も食べたいです」
「俺も俺もっ!!」
梓君の言葉を周りの人が掻き消す。
「わっ!?ちょ、ちょっと待って?そんな一気に言われてもわからないよ!?」
梓君が何て言ったのかも聞こえないし、男の子こわっ!!
ここが食堂でカウンターがあってよかった!!
「おやおや、これじゃあ埒があかないねぇ」
「おばちゃん……お昼時とかいつもこんなんなんですか?」
「そうでもないんだけどね。
今日は貴女が作ったからじゃないかしら」
「そういうものでしょうか?
私が作ったものより買ったほうが美味しいのに」
おばちゃんと話しているとさっき聞いた怒声がまた響いた。
「お前ら黙れ!!
数分前に言ったことがもう守れないのか!」
宮地君…真面目だなぁ…
梓君と何か言い合っていたようにも見えたけど何だったのかな?
たくさん焼いたクッキー。
梓君と宮地君が助けてくれて
集まってくれたみんなにあげた。
結構好評。
ちょっと嬉しいな。
『………名前…』
「――――っ!!」
少し嬉しい気持ちになった時、
耳に響いたのは大好きな声。
はっきりと聞こえたそれは
母と兄の声だった…。
部活の雰囲気にも、クラスの雰囲気にも馴染んで、今の生活にも慣れてきた。
「んー、部活が休みだと…やることないなぁ…」
学校は休み、宿題は終わった。
部活も休みでやることがない。
「いつも私何してたっけ?」
一人言を呟きながらうーんと頭を捻る。
『なぁ、名前!またケーキ作ってよ!』
『またぁ?』
『だって美味いし!』
『いつもは不味いって言うくせに?』
『あれは俺の愛情だ』
『裏返しにしないで欲しいなー』
『ま、よろしくっ』
思い出したのは…
『あ、名前ちゃん。私またクッキー食べたいなー』
『買ってくれば?』
『違うのー!名前ちゃんの作ってくれたクッキーが食べたいの!』
『ふふっ、わかってるよ。じゃあ作るから待っててね』
『わーい!ありがとう!』
私にお菓子のリクエストをする母と兄の姿。
……これは、やばいな…
視界がぼやける。
顔が熱い。
私、泣いてるんだ…
“会いたい…”
そう願うのにどうしたらいいのか…わからない。
「あぁあぁあ!もう!!
駄目だめ!凹むのはダメ!よし、食堂のキッチンって使えるのか聞いてみよー」
暗い感情に飲み込まれそうな自分を奮い立たせて
私は食堂に向かった。
「あのー…」
「あら、どうしたの?」
「ちょっと…キッチンお借りしたいのですが…」
「いいわよ。何を作るの?」
「あ、クッキーを…」
「あら、いいわねー!誰かにあげるの?」
「そういうわけではなくて…ただ作りたくなったものですから…」
「ふふっ、いいわよ。いっぱい使ってちょうだい!」
食堂にいたおばちゃんに話してみるととても気さくな方で簡単にOKをくれた。
ありがとうございます、とお礼を告げて私はクッキーを作りはじめた。
小麦粉と砂糖とバターを混ぜて
生地を4つにわけて
ココアと抹茶と…チョコチップを混ぜて
いろんな型で形を作った。
「あら、手際いいわねー」
「ありがとうございます!
家でよく作ってましたので」
途中途中、おばちゃんが声を掛けてくれるのが嬉しかった。
オーブンで焼いていると甘い香りが漂う。
家でお菓子を作っているといつもその匂いにつられて母と兄が現れる。
でも……ここではそれがない。
悲しいけど…いつかきっと帰れるから大丈夫。
そう思っていると周りが少し騒がしくなっていることに気付いた。
「ん?何かあるのかな…?」
ふとカウンターの向こうを見ると私が焼いたクッキーを見つめる男の子たち。
「な、なぁ!それお前が作ったのか?」
「苗字クッキー作れんのか!?」
「誰かに渡すために作ったのか?」
「美味そー!ちょー食いてぇ!」
そして口々に叫ぶ。
「へっ?えっ?」
困惑して慌てる私を助けてくれたのは…
「お前らやかましいぞ!!一斉に話しかけて苗字が答えられるはずがないだろう」
「そうですよ、先輩方。名前先輩一人に対して男がこんな大勢じゃ、反応出来ませんよ」
宮地君と梓君だった。
「ありがとう。宮地君、梓君。
え、と…みんな…どうして此処に…?」
二人のおかげで少し落ち着いた私はみんなに問いかけた。
だって今日は休みなのに。
「小腹が空いたから購買行こうと思ったんだけど…そしたら甘い香りが漂ってきてさー!」
「あ、俺も!」
「俺もー!」
「俺はなんとなく食堂に来た」
「俺、女の子が菓子作ってるの初めて見たけど…可愛いよな…」
「え…可愛い?ありがとう!」
みんなが口々に“甘い香りに誘われて”と言う中、一人の男子が言った言葉に周りが即座に反応した。
…何か変なこと言ったのかな?
『おまっ、誰もそれ言わなかったんだぞ!?』
『でもいい仕事したぞ!あの笑顔超可愛い!』
『夜久と違って幼馴染みの結界がないからすぐ仲良くなれるかも!』
なんか、こそこそ言い合ってるけど…大丈夫、なのかな?
「ところで名前先輩。そのクッキー、誰にあげるんですか?」
不思議に思っている私に梓君が問う。
「え?別に誰かにあげるとか…考えてないけど…」
「だったら僕にくれませんか?」
私が答えると、梓君はにっこり笑って言った。
「いいよ。何個食べる?」
だから私も笑顔で返す。
「え、ぜん…」
「おお俺も欲しい!!」
「僕も食べたいです」
「俺も俺もっ!!」
梓君の言葉を周りの人が掻き消す。
「わっ!?ちょ、ちょっと待って?そんな一気に言われてもわからないよ!?」
梓君が何て言ったのかも聞こえないし、男の子こわっ!!
ここが食堂でカウンターがあってよかった!!
「おやおや、これじゃあ埒があかないねぇ」
「おばちゃん……お昼時とかいつもこんなんなんですか?」
「そうでもないんだけどね。
今日は貴女が作ったからじゃないかしら」
「そういうものでしょうか?
私が作ったものより買ったほうが美味しいのに」
おばちゃんと話しているとさっき聞いた怒声がまた響いた。
「お前ら黙れ!!
数分前に言ったことがもう守れないのか!」
宮地君…真面目だなぁ…
梓君と何か言い合っていたようにも見えたけど何だったのかな?
たくさん焼いたクッキー。
梓君と宮地君が助けてくれて
集まってくれたみんなにあげた。
結構好評。
ちょっと嬉しいな。
『………名前…』
「――――っ!!」
少し嬉しい気持ちになった時、
耳に響いたのは大好きな声。
はっきりと聞こえたそれは
母と兄の声だった…。